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誓約の地/漂流編・65<楽園(8)>


大きく揺れ出す様々な想いの始まりは、小さなイベントだった。


遭難中に抱える、不安とストレスの解消が目的の水着選び。

それが思わぬ歪みを生みだしていく――





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 あの笑顔がはなれない。

 上気した頬、形のいいふっくら柔らかそうな唇。

 そして、あの綺麗な瞳を潤ませて俺を見つめてくれたら――



 コウジは最近ますます綺麗になった優奈を、切ない気持で見つめながら小さなため息をついていた。
 
 この島での娯楽は限られている。

 旅行で来たくなるような青い海と白い砂浜も、毎日いれば当り前になって次第に飽きが出てきた。

 そのせいか優奈が始めた語学教室は大盛況だった。


 しかし相手のいない若くて健康な男性陣は、島での生活が落ち着くにつれて健全なそれだけでは満足できなかった。

 時々襲う欲求を密かに語り合うと自慰行為でそれを慰めていく。

 そのうちかき集めていた刺激的な雑誌などは飽きてしまい、専ら妄想に捌け口を求めてそれぞれ1人になっては行為に耽っていた。

 ケイタ、ツヨシ、カズヤの3人は、杏子や優奈を妄想の対象にした後で昨日は誰とどうしたと卑猥な話を交わしあっていたが、なぜかコウジはその手の話に参加しない。

 その度にケイタやツヨシから真面目だなと笑われた。

 コウジはそれを思い出す度に苦笑する。

 そんなことはないと自分だけはわかっているからだ。


 この島で出会った時から、いや、客船に乗り込んだ時からコウジは優奈を見てときめいていた。

 杏子と2人ではしゃぐ姿をデッキで見つけ、一目見て恋に落ち――

 そう、一目惚れだった。


 この島で再び出会った時から運命かもしれないと胸が騒いだ。

 しかし優奈の周りにはいつも杏子と修平、そしてヒョヌがいた。

 優奈のことを考えるたび、コウジの中で決まってあの日の想いが蘇ってくる。


 あの時――。

 ヒョヌさんと修平さんの対立が発端となって始まったゲーム。

 あのゲームで優勝していたら何か変わっただろうか?

 平静を装いながら、優勝者によって賞品が逃げ出したりしないかと問いかけると、首謀者の杏子さんは誰が買っても必ずだと言って笑った。

 だから自分が勝っても『商品』はもらえるはずだと必死で頑張った。

 あと一歩、あと一歩だったんだ――。


 あの後、楽しそうにに並んで歩く2人の後姿を見送った。

 2人がどこで何をしていたのかはわからない。

 もしかしたら付き合ったりするんだろうかと不安で、次の日から2人の様子をずっと観察していた。

 でも特に変わったこともなく、むしろよそよそしいぐらいに感じる2人に何となく安堵していた。


 それなのに最近の2人の様子は何だかおかしい――

 やっぱりあれは、キッカケになったんだろうか?

 よけいな考えに息苦しくなって、その想いを打ち消そうとコウジは数度頭を振った。
 

 
「どうした?」

 ふいに声を掛けられたコウジはハッと顔をあげる。

「なんでもないよ」

「そうか?」

 何故か動揺するコウジを見て、ケイタが呆れたように笑っていた。

 気がつくと杏子とソンホはいなくなり、優奈とヒョヌの姿も見えない。

「あれ?杏子さんと――優奈さんは?」

 問いかけるコウジに、気になる? とツヨシが杏子のマネをして笑う。

「教会に戻ったんじゃね――? 韓国語の練習って言ってたから」

 カズヤがそう答えると、コウジはふーんとだけ返事して海を眺めた。

「もう、おしまいって早くね?」

 早々に姿を消した2人に愚痴るツヨシに向かって、ケイタが苦笑する。

「お前があんまりイヤラシイから、杏子ちゃんの怒りに触れたんじゃないの?」

「あ! 人のせいにしたな? 自分だって散々言ってただろう?」

「俺は杏子ちゃんにね。杏子ちゃんなら許してくれるさ。優奈ちゃんのことを大っぴらに杏子ちゃんに言っちゃダメだろうが。だから連れてっちゃったんじゃねぇの?」

「そうっすよ。ツヨシさん言い過ぎ!」

「俺? 全部俺?」

 盛大に愚痴り始めたツヨシをひとしきり皆で笑って、またいつもの猥談《わいだん》が始まった。

 そろそろ潮時――そう考えて立ちあがったコウジに、カズヤが声をかける。

「相変わらずだな――」

 その言葉にコウジはちょっと躊躇《ちゅうちょ》した。

「別にそういうわけじゃないけど」

「いや、お前は絶対ムッツリだ!」

 笑いながら断言するカズヤに少しムッとして言い返した。

「カズヤのスケベさを、エリちゃんに報告しに行くんだよ」

 ふざけんなと叫ぶカズヤを、今度はコウジが笑い飛ばしてゆっくり森に向かった。











     ***










 一人になりたくなるとコウジは決まって森の奥へと向かう。

 探索したこともあって、すでに数カ月過ごしたこの島の森については、地形を含めて随分詳しくなっていた。


――考えないわけ、ないじゃないか。


 フラフラと歩きながら、コウジはさっきの会話を思い出してもの想いに耽っていた。

 突然繰り広げられることになった水着での海水浴。

 見かけた優奈の女性らしい綺麗な身体のラインが目に焼き付いて離れず、コウジは1人になれる場所へ向かう。

 いつもの茂みの先の大きな岩陰から、今日は密かに囁く声が聞こえた気がした。


――誰かいる。


 先客に気を使って他へ移ろうとしたその時――聞きなれた声が耳に飛び込んできた。



 風に舞い上がる草木のざわめきと共に耳に届いたその声は、艶やかな甘い色香を纏ってコウジの心をすり抜けていく。


『オッパ』


 こう呼ぶ人も、呼ばれる人も知っていた。















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Comment

こんばんは!なによしです!
コウジさん・・・・そこまで優奈さんを思っていたのか!しかし優奈さんはヒョヌさんと・・・愛を育むのですよ!?もしここへきたのが修平さんだったら、すぐにでも制止にかかってヒョヌさんとガチバトルが開催される気がしてたんですけど、コウジさんが来るとは・・・・!予想の斜め上を行ってました!コウジさんはどうするのだろう。止めに行くのか、それとも二人の情事を覗き見るのか・・・・・!
ハラハラワクワクが止まらない「楽園」編の歪みの因子がようやく見えてきました!が、予想できない人だけに・・・どうなるのか!?
次回が(明日が)待ち遠しいです~><!
応援しています!
はっ!やばい!コウジが見ちゃう~っ
しかも彼は欲求不満で悶々としているごようす。

ヒョヌさんの新たなライバル、登場?いやいや。コウジじゃヒョヌさんの相手には不足かな~。ヒョヌさん、かっこいいもんね。ちょい嫉妬深いけど ^^;

前記事のですけど、「いっぱい愛してくれる?」って男性にとっては殺し文句ですよね~。グッドなセリフ!

は~っ、ついにYUKAさんの更新に追いつきました~!明日からはリアルタイムで読める!嬉しい ^^
なによしさん
なによしさん、こんばんは^^
そうなんですよ~~わかりづらい伏線を張ってたんですが(笑)
修平はどうするか、コウジはどう出るのか……
これからの「誓約の地」に係わってくるキーワード(大げさ)
明日はまた、色んな意味でお楽しみに~~♪
  • 2011/10/31 03:46
  • YUKA
  • URL
西幻響子さん2
西幻響子さん、こんばんは^^
おお~~!追いつかれました^^;
この辺は、かなり作った話をシャッフルしたので
これからの更新が、かなり綱渡り~~~(笑)忙しい^^;
ヒョヌのライバルじゃ、役不足ですかね~~
ヒョヌ、カッコいいんですけど――嫉妬深い(笑)
殺し文句~~~褒められました^^嬉しいです*^^*
優奈にしては、随分大胆でしょう?^^ヒョヌの方がドッキドキですね(笑)

  • 2011/10/31 03:47
  • YUKA
  • URL
うわー。コウジも優奈マジックにかかってしまってるんですね…
なにやら嵐の予感が・・・。
以前杏子が言っていた言葉が気になります。
  • 2011/10/31 14:27
  • memeko
  • URL
  • Edit
memekoさん
memekoさん、こんばんは^^
読んで頂けて凄~~く嬉しいです♪
おお!memekoさん、鋭い!(笑)
そうですね~~これからね~~……(自主規制
また、お時間のある時に読んでくださると嬉しいです*^^*
  • 2011/10/31 18:10
  • YUKA
  • URL
今晩は~

コウジに親近感を抱いてしまったボクは

なんでしょうww
  • 2011/10/31 19:34
  • いちごはニガテ
  • URL
いちごはニガテさん
いちごはニガテさん、こんばんは^^
あはは。
いつもコメントが最高です^^b
いちごはニガテさんのコメントで、コウジは救われますww


  • 2011/10/31 19:46
  • YUKA
  • URL
R18に行く前に、精進潔斎して心を平静にしなければ(笑)

遭難中に男女二人がこんなことをやっていたらひんしゅくものだなあ、と思わないでもない(笑)

うーむ。(^^;)
ポール・ブリッツ さん
ポール・ブリッツさん、こんばんは^^
あはは。
まぁ、そうですね~~^^;でもほら、半年経ってますからね。
そろそろね~~っていうか(笑)
ヒョヌの気持ちもわからんでも無い。。。
  • 2011/11/09 16:32
  • YUKA
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