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誓約の地/漂流編・63<楽園(6)>


大きく揺れ出す様々な想いの始まりは、小さなイベントだった。


遭難中に抱える、不安とストレスの解消が目的の水着選び。

それが思わぬ歪みを生みだしていく――




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「杏子ちゃん、いいね――!」

 水を届けに来た杏子に男性陣が歓声を上げる。

 口々に上がる感嘆に杏子は淡々と礼を述べて、ペットボトルを渡していく。

「優奈さんは?」

 カズヤの問いかけに、杏子はくすりと笑って顎先で優奈のいる方角を指し示した。

「ヒョヌさんに見せに行ったわよ」

 肩をすくめて笑う杏子に、全員がなるほどと頷いている。

「いいよな、ヒョヌさん。独り占めかよ!」

 苦笑するツヨシを笑い飛ばして、ケイタが杏子に話しかけた。

「優奈ちゃんは、お披露目してくれないの?」

「なによ、お披露目って」

 苦笑する杏子に、ツヨシがさらに続ける。

「楽しめるものにしてって、お願いしたじゃん」

「そうっすよ。ここからじゃ、ちょっと遠すぎる!」

 最後にカズヤが全員の心情を代弁するように訴える。

 杏子は呆れた顔を隠そうともせず、カズヤを横目で睨みつけた。

「優奈は見世物じゃないわよ」

「そ、そう言う意味じゃないっすよ」

「じゃあ、どういう意味よ?」

「それは――」

「あら、それとも何? 私だけじゃ不満?」

「そんな事ないっす」

 充分ですと慌てたカズヤに、充分って何よと杏子は笑っている。

「そりゃあ、ヒョヌさんに褒められたいだろ?」

 気持はわかると頷いたケイタに、杏子は同意した。

「そうね」

「ヒョヌさん――なの?」

 ぼそりと呟いたコウジを、杏子は横目でチラッと視線を送りながら問いかけた。

「何が?」

「あ、いや。――どっちかなって思ってたから」

「だから、何が?」

「あ。――優奈さんの好きな人」

 何をそんなに慌てているのか自分でもわからずに、コウジは急いでつけ足した。

「修平さんと、どっちだろうって――」

「さすがの修平でも分が悪いな。優奈ちゃんはヒョヌさんっぽいじゃん?」

 もともとファンだろ? と、コウジを笑いながら見ていたケイタが助け船を出した。

 杏子はその話題をサラッと無視しながら、辺りを見渡す。

「――その修平は?」

「ああ、泳いでくるって」

「そう」

 ニコニコして話を聞いていたソンホに、韓国語の勉強を教えて貰う約束を取り付けていた杏子は、最後に黙ってしまったコウジに声を掛けた。

「――気になる?」

 彼がハッと顔をあげると、自分を見下ろす杏子の目。

「あ、いや――」

 不意に投げかけられた声と視線に、コウジは慌てた。


 杏子を前にすると、コウジはいつも萎縮してしまう。

 今も彼女の口元は微笑んでいて、別に何かされたわけでも言われたわけでもないのに、酷く落ち着かない。


――苦手、だな。


 杏子の何でも見透かしたように投げかけてくる視線は、自分の心のうちまで覗かれている気分になって少しイライラする。

 その態度も言動も自信に溢れていた。

 いつも華やかな空気を纏っている彼女には、フランクな修平やあのヒョヌでさえ一歩譲っている。


――生意気な、女。


 しかしそれを素直に伝える術を持たず、コウジは結局いつも口ごもってしまう。

「気になるのはわかるぞ、コウジ!」

「お気に入りだもんな」

 年上のケイタとツヨシに揶揄されて、コウジは更に動揺した。

「あれは気になってもおかしくないっすよ――!」

 コウジの様子を見て庇う男性陣の発言に、杏子は肩をすくめて苦笑した。

「ダメって言ってないじゃない」

「でも、杏子さん――怖いっす」


 確かに――


 無言で同意する彼らの雰囲気を不本意に思いながら、杏子はカズヤを見据えて小さく笑った。

「カズヤは言わない方がいいんじゃないの?」

 エリに言いつけるわよと笑う杏子に、カズヤは慌てて弁解する。

「ほら、やっぱり――怖いから! マジで止めて」

 ふざけたように懇願するカズヤに全員が笑った。

 エリは優奈と杏子に懐いている。

 いい感じになってきたこの微妙な時期に、カズヤは杏子を相手に喧嘩を売る気はサラサラなかった。

「冗談よ」

 噴き出すように笑った杏子に、カズヤはため息交じりに呟いた。

「冗談なら冗談に聞こえるように言ってくださいよ」

「どういう意味よ」

「だから怖いんですよ。杏子さんに反対されたら、エリちゃんと上手くいかない気がする」

「何よ、それ」

「応援してください! お願いしますっ」

 泣きごとを言いだしたカズヤに、杏子は自分で何とかしなさいと呆れながら諭している。

 いつの間にか自分の話題からカズヤの話に花が咲き始めた。

 苦笑しながら、コウジは優奈を目の端で追う。




――高根の花。


 そんなことは、わかっていた。


















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Comment

こんばんは!
なによしです!
あ、あれ・・・R指定が来ると思っていたら・・・今回はおあずけですか(´;ω;`)変態王(私)はてっきりヒョヌさんと優奈さんの濃厚な官能シーンが来ると予想していましたが・・・!くうう、焦らしプレイ・・・!しかし杏子さんはやはり王者の貫禄がありますね!気の強い女性ってかっこいい!尻に敷かれたい!
コウジさんも、やはり優奈さんを想っているのでしょうか・・・。ヒョヌさん、ライバルばかりで大変だ!高嶺の花・・・コウジさんの想いは、修平さんは、そして二人はどうなるのでしょうか!?毎回ハラハラワクワクしながら読んでいます!今回もとても楽しませてくれました(*´∀`*)
次回も期待しています!官能的な意味でも(まだ言うか)!
なによしさん
なによしさん、こんばんは^^
読んでくださってありがとうございます^^
そして、ご心配をお掛けしました^^
あははは。
だから、焦らしプレイって言ったじゃないですか(笑)
官能……
恋愛小説書いている癖に、そこが一番ハードルが高いのですが^^;;
頑張りますよ~~。ま、そのうち来ます♪
コウジはね~~実はね~~(自主規制
また、読んでやってください^^
焦れて起こらないでくださいね^^
  • 2011/10/29 17:17
  • YUKA
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