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誓約の地/漂流編・53<悪態(1)>



たまには一緒に過ごしたい!2人っきりの時間が欲しい!

みんなのためにと奔走する優奈を応援しながらも、

恋人同士の時間が欲しいヒョヌは……


ヒョヌ、念願の2人っきりになることが出来るのか?



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 普段の優奈は、この島の誰よりも忙しい。


 全員一致で、この島でのリーダーと言う名のまとめ役を引き受けた優奈は、そのために多くの時間を割いている。

 語学が堪能で面倒見がいいため、それ以外でも常に誰かに声を掛けられ、頼られ――――かまわれる。

 ヒョヌと両想いだとわかったからと言って、それが無くなるわけでもなく――

 必然的に、恋人同士とは思えないほど、2人きりの時間を過ごすことが出来なかった。


 遭難生活が3か月を過ぎた頃から、優奈はヒョヌの提案で、語学を習得したい人のための勉強会を積極的に行っている。

 ヒョヌも付き合う少し前から、遭難者の中でも比重の高い日本語を勉強し始めた。

 語学力に阻まれて、思ったようにコミュニケーションを取れずにいたためだった。

 通訳で必ず優奈かソンホがいたが、自分が一緒だと2カ国語同時通訳となる負担を少しでも軽くしたい――

 そんな思いも確かにあった。


 そう、初めは。



 先生となった優奈が優秀で熱心だったのに加えて、ヒョヌも非常に飲み込みが早く、教わり始めて3か月もすると、日常会話はほぼ困らなくなった。

 会話が成立すれば質問が出来るし、日本人の多いこの島での生活は日本語の先生に困らない。

 その結果、通訳を通さなくても会話が成立してしまうようになってしまった。

 優奈と共にいる理由がますます薄れていく。



「こんなはずじゃないのにな」

 不本意な結果にため息をつく。

 自分が招いた結果だが、優奈の性格を少々読み誤った。

 一度決めたらどんなことでも一生懸命になるということは、この遭難生活でイヤというほど見てきたのだ。

 人として、そこは非常に素敵だと思うのだが、彼氏としてはかなり複雑なのも事実。
 
 語学が学びたいと言う人のために、優奈が教える時間もどんどん増えている。

 英語習得希望が多く、優奈が中心となって指導しているため、最近日本語の先生は優奈以外――となってしまった。

 語学教室を開くことを提案したのは自分だったため、それで不満を言うわけにもいかない。

 ヒョヌからすると、酷いジレンマに陥る話だ。



 もともと、優奈は男性陣から人気がある。

 ヒョヌは付き合ったことを思い切って公言することも考えたが、杏子と相談して少し黙っていることに決めた。

 あまり周りを刺激しないように、様子を見ることにしたのだ。

 様子を見ながら、たまにはこっそり2人で抜け出せばいい。

 以前修平と熱くなって勝負したが、もうその必要はないはずだ。


 そう思って同意したのに、気が付けば『たまに』も『こっそり』もなかなか難しい。

 無理なく、さり気なく誘ってみるのだが、たいてい誰かに見つかってしまう。

 下手をすると先約を取りつけられていて、優奈本人に断られる。


――あり得ない。


 心の中で愚痴りながらもその度に優奈の話や作業に付き合っているが、なんだか付き合う前より2人になれない。

 これはもう、貰ったものを使うどころの話ではないと、少しばかり杏子を恨めしく思う。

 杏子との約束が、この状態を更に拘束しているからだ。

「話す必要があるよなぁ」

 ガシガシと頭を掻いてから立ち上がり、ヒョヌは杏子を探して歩き始めた。

 








     ***










 「これは幾らなんでも、無いと思わない?」

 しびれを切らせたヒョヌは浜辺で寛ぐ杏子に向かって、開口一番そう愚痴った。

 2人になりたいというだけでなく、仲間に嘘をついているような感覚が堪らない。

 わざわざ黙っている必要がどこにあるのか。

「自分で何とかしなさいよ」

 呆れた顔を隠そうともしない杏子に苦笑する。

 確かに男としては少々情けないが、背に腹は代えられない。

「色々試してみたよ。でも、この生活でみんなにバレないようにって、難しいんだ」

「あら、そこが腕の見せ所でしょう?」

「付き合っているのに、なんで自分の彼女にそんな努力が必要なのかわからない」

「だからってねぇ。デートの誘いに失敗して、その親友に愚痴る男ってどうなのよ」

「下手すると、本人に断られるんだよ」

「それは、断っているんじゃないでしょう?」

「結果は同じ。――やっぱり、言うべきじゃないかな? それで解決する」

「言うなって言ってないわよ。ちょっと待ってって言ってるだけ」

 どこが違うんだと疑問に思いながら、そこには触れずに話を続ける。

「修平とは、ちゃんと話しをするよ?」

「まぁ、そのうち必要よね」

「そのうち?」

「そう」

「今じゃダメな理由は?」

「あんな風に熱くなってる負けず嫌いな人に、ダイレクトに言っても拗れるだけよ」

「…………」

「普通ならこんな事言わない。喧嘩しようが、揉めようが。それでも好きなら何とかするべきだしね」

「なら――」

「優奈が困るでしょ?」

「…………」

「2人がいがみ合ってる状態が続けば、挟まれた優奈が気にする。そうしたら、今以上にあの子が周りに気を使って、2人になるのはますます難しくなるわよ?」

 その言葉に、ヒョヌは一瞬グッと押し黙る。

 確かに優奈は気にしそうだ。顔を合わさなければいいという、単純な手もここでは使えない。

 まして、優奈はその中心にいる。

 自分達はいいが、その両方と繋がっていなければならない優奈は可哀そうだと思う。


――付き合うことになっても、やはり修平がライバルのままなのか?


 いつまで続くのかとため息をつくと、杏子は幸せが逃げるわよと笑っている。

「それにね」

「それに?」

「必要以上に、拗れてほしくないのよ」

「……誰と?」

「修平と」


――拗れさせているのは自分じゃない。


 憮然として黙ったヒョヌに杏子は苦笑した。

「後悔するわよ、きっと」

「誰が?」

「ヒョヌさんが。たぶん、修平も」

 なぜ? と視線で問いかけても、思った通り期待した答えは返ってこない。

 杏子の言葉は相変わらず、なぞなぞのようだ。

「何を後悔するって?」

「必要以上にいがみ合うと、終わっちゃうかもしれないでしょう?」

「修平と僕が?」

「そう」

「だから、黙ってろって?」

 終わるも何も始まってすらいない。

 嫌いではないが近くもない。

 自分でさえそうなのだから、修平はそれ以上に感じているはずだ。

 逆効果なんじゃないかと問いかけると、杏子は否定した。

「あの手のタイプは、自分で気付かないと厄介なの。今は、――見失ってるから」

「何を?」

「自分を、かしらね」

「修平が?」

「そう」

「――上手く立ち回ってるとも、思うけど」

「そうね。もともと優秀だしいい男ね。でも自分に自信があって、その根拠もあるような男のプライドは、無駄に傷つけるものじゃないわ」

「何をするか、わからないってこと?」

「そうじゃないわよ」

「でも、見失ってる?」

「そう」

「それは、どういう意味?」

「ん?」

「どうするつもり?」

「別に。私も待ってるのよ」

「――何を?」

「きっかけ」

 だから何の? ――と、これでは堂々巡りだ。

 そんな説明で、はいそうですかと言うヤツがいたら、是非とも会わせて貰いたい。


 ヒョヌは、もう何度目かわからないため息をついて空を仰いだ。










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Comment

おはようございます(っていうには遅いけど)、なによしです。
昨日は沢山の気遣い、嬉しかったです!
まだしつこく熱がありますが、ほぼ治りました♪

ヒョヌさん、じれったいでしょうねー。
せっかく部屋もあってベッドもあるのに(おい)!
優奈さんとイチャつけないなんて!
もどかしい二人・・・これからどうなるんでしょう?

ワクワクしながら待ってます!
3つとも応援しておきますね(*´∀`*)
しかしYUKAさん、いつもランキング上位で流石です!!
なによしさん、こんばんは^^
コメントの順番を間違えてしまいました^^;

私の方こそ、いつも温かいコメントを頂いていて
すっごく嬉しいんです*^^*

ヒョヌ、じれじれですね~~~(笑)
ヒョヌには、もうちょっと焦れて貰いましょうか(笑)

いつも応援してくださって、ありがとうございます^^
優しい方々が、拙いブログを応援してくださるからです。
これからもよろしくお願いします^^
  • 2011/10/19 19:25
  • YUKA
  • URL
お久しぶりです
一気に読みました~。
なんだかいろいろと変更があったようで、前来た時のことを思い出すと、面白いですね。
ランキングでも上位にいつもいるのをみて、すげぇ、と思っています。
流石であります。

さて、内容ですけど……一応ヒョヌと優奈の恋には、一段落追加たと思ったらまだ一波乱ありそうですね。
でも、その前に、杏子が……?
今回のヒキがそんな感じだったので、どうなるのか楽しみです。

それにしても、いつのまにか遭難してから百八十日――半年も経っているのですね。
目次のところを見て、驚きました。

ではではっ
更新頑張ってください!
楽しみにしています。
grhoさん、こんばんは^^

> 一気に読みました~。
> なんだかいろいろと変更があったようで、前来た時のことを思い出すと、面白いですね。

ありがとうございます^^
私の辺境ブログに、初めてコメントをくださったのがgrhoさんでした^^
あの時の感動は忘れてません……ってまだ1月経ってませんけどね(笑)
毎日更新が、思いのほか忙しくて^^;;;
不義理をしないように、色々必死です^^


> ランキングでも上位にいつもいるのをみて、すげぇ、と思っています。
> 流石であります。

とんでもないです。。。
grhoさんの小説は、独特の雰囲気があって羨ましいです。
そんな空気を感じられる作品を書きたいと思ってます^^


> さて、内容ですけど……一応ヒョヌと優奈の恋には、一段落追加たと思ったらまだ一波乱ありそうですね。
> でも、その前に、杏子が……?

杏子にも何かあってほしいです……私が(笑)


> 今回のヒキがそんな感じだったので、どうなるのか楽しみです。
> それにしても、いつのまにか遭難してから百八十日――半年も経っているのですね。
> 目次のところを見て、驚きました。

そうなんです^^;
もう、告白もして付き合っちゃってますから~
これで1月ぐらいだったら、かえっておかしいかと^^;;



> ではではっ
> 更新頑張ってください!
> 楽しみにしています。

ありがとうございます^^頑張ります♪
  • 2011/10/19 23:15
  • YUKA
  • URL
今晩は~
此処まで拝読しました

登場人物では 杏子さんが

ボクてきには 一番好みですw

容姿と性格がですけどww
  • 2011/10/19 23:51
  • いちごはニガテ
  • URL
いちごはニガテさん、 こんばんは^^

読んでくださってありがとうございます^^

杏子姐さん、人気なんですよね~~(笑)
思いのほか、主人公の人気が上がりません^^;;;

私のせいか……ごめんよ、優奈。
  • 2011/10/20 00:10
  • YUKA
  • URL
おお、これはもしかして、

ヒョヌと修平の間に

『殴って友情が芽生える』黄金のパターンが?

……悪ノリしてすみません。(汗)
ポール・ブリッツ さん
ポール・ブリッツさん、こんばんは^^
お返事が遅くなりました。
えへへ。
黄金のパターンは嫌いではないですけど~~^^
2人とも大人ですからね^^bやってることはガキですが(笑)
  • 2011/10/31 18:03
  • YUKA
  • URL
こんばんは
YUKAさん、こんばんは。

この展開はヒョヌさんにとっては大変ですね。
餌を目の前にして、延々と待てを強いられている
ワンコちゃんがいつまで我慢できるのか、先が
気になりますね。
優奈さんの方は自律心が強いんですね。
女性はそういうものなのでしょうか?
ではでは。
  • 2011/11/15 22:33
  • gimonia
  • URL
gimonia さん
gimonia さん、こんばんは^^
コメントありがとうございます^^
この状況――ヒョヌは辛いですね(笑)
そうそう簡単にはいかないわよ~~~という、作者のSっ気も入っております♪
そうですね!自律心、自制心……優奈は相当疎い子なのかもしれませんが。
今時は、女性の方が……(笑)
ヒョヌの自制心が試される……この後も楽しんで頂ければ嬉しいです^^
  • 2011/11/15 23:13
  • YUKA
  • URL
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