QLOOKアクセス解析

誓約の地/漂流編・30<対決(4)>


焦燥と嫉妬を持て余た2人の男が、ふとしたキッカケで一触即発!

殴り合いの代わりに提案された恨みっこなしのゲーム対決。


その優勝賞品を手に入れたのは?



==============================================




 優奈は恐る恐る海に入った。

 今日は初めからヒョヌが抱えるように沖の方へ連れていく。

 優奈の顔を覗き込むように様子を伺っていたヒョヌは、優しく微笑みながら片手で優奈を抱え、反対の手で周りにさりげなく海藻がないことを確認する。

 2人は笑い合いながらゆっくりと沖に進んで、優奈の胸の下まで海水が来たところで止まった。

「大丈夫?」

「はい、前回より」

「おっ! 成長してる!」

「でしょ? 一人じゃなかなか入らないから」

「練習の成果だな。じゃあ、これから僕が専属コーチ! わかった?」

「はい」

そう言って笑った優奈が悲鳴を上げる。

「………何かいる?!」

「海藻?」

「わ、わかんないです! 何!」

「大丈夫だよ」

「ホントに? サメとかいない?」

「え? そっちの心配なの? そっちか――、それはどうかなぁ」

「え――――!」

 本気で驚いている優奈が可愛くて、ヒョヌは声をあげて笑う。

 泣きそうな顔をしている優奈をゆっくり引き寄せた。

「優奈さん、大丈夫?」

 呼ばれて見上げると、彼は優しい笑顔で笑いかけていた。

 眩しいくらい素敵な笑顔を間近で見て、優奈は息をのむ。

 彼女の潤んだ瞳が揺れて切なく煌めき、ヒョヌの胸が騒いだ。

「怖い?」

「……大丈夫」

 大きな波のうねりに乗るようにしてやり過ごし、そのまま腕にぎゅっとしがみついている優奈を、抱えるように抱きしめた。

 何度か襲ってくる大きな波に身を任せるようにして、その間ヒョヌは優奈を放さなかった。

「………ヒョヌさん?」

 胸に抱えるようにして、沖に行かないように砂浜と水平に移動しはじめる。

 抱きしめられた気がして動揺した優奈は、はずかしさで顔をあげられなかった。

 身体を固くした優奈の気配を感じて、ヒョヌは微笑する。


 彼女を困らせたいわけじゃない――

 そう思い直し、ため息をついた。

「………あの………」

「これって……『お触り厳禁』に違反するかなぁ」

「――――!」

 ヒョヌのとぼけた言い方に、優奈は噴き出すように笑った。

「私が掴まってるんだから、違いますよ!」

 そのまま暫く、穏やかになった海をゆっくり漂うように歩きながら、2人は夕暮れまでを共に過ごした。










     ***










 修平は無意識に右の手のひらへと視線を落とした。

 あの時――

 ほぼ同着で辿り着いた旗に、先に触れたのは確かに自分だった。

 掴んだと思った瞬間、何かが弾いたように手の中から零れ落ちて、あっと思った瞬間にはヒョヌの手の中にあった。

 掴んだと思って弾いてしまったのは俺自身で、それがなんだか感情を逆なでする。

 取り損なったのは俺――――。




「たかがゲームよ」

 ビクッとして顔をあげると、いつの間にか杏子が隣に立っていた。

「たかがゲーム。あのゲームで、優奈の相手を決めたわけじゃない」

 静かな声で告げる彼女を一瞥すると、すぐに視線を外した。

「そんなこと………わかってるさ」

 そんなことはわかっている。それでもこの焦燥感と、荒れ狂うような感情をごまかすことが出来ない。

 優奈が今どこにいるのか、何を話しているのか、ただそればかり気になった。

「らしくないと思わない?」

 何が? と目線だけで問いかけると、彼女は海を見つめながら静かに笑っている。

「いつものあなたは、そんな風じゃないでしょう?」

「………俺の何を知ってるって?」

「知っているわけではないけど、わかるのよ」

「何が?」

「らしくないってことが」

「……………」

 何様だと続けようとしてやめた。

 らしくない――――その通りかもしれない。



 今までも色んな女と出会ってきた。

 付き合ってきた女もイイ女だった。恋をすれば夢中になったし、彼女のために何でもしようと奔走した。

 その時々で真剣だったし、そんなことは当たり前だと思う。


 でもこんな風にのめり込んで、自分が保てないのは初めてだった。

 手に入れたいともがいて、手に入らないことに焦り、自分の中にある醜い感情を持て余している。

「どんなに無理をしても、あなたはあなた以上にはなれないわ」

「俺には無理だってことか?」

「いいえ」

「……優奈にはふさわしくないと?」

「いいえ」

「……………」

「自分を見失って手に入れても、掴まえておくことは出来ないだけ」

「………俺が、自分を見失っていると?」

「さぁ。夢中なだけかもよ?」

「杏子には、それがわかるって?」

「どうかしら」

 髪をかき上げながら海を眺めている杏子から視線を逸らし、修平はもう一度自分の手を見た。

 あの時――

 ゲームのために作られた簡素な旗が、優奈自身と被った。

 何故か馬鹿みたいにそう思った。

 だからどんなことをしても掴みたかった。

 掴まなければと思い込んだ。



 ヒョヌが不正をしたわけではない。それは俺が一番わかっている。

 たかがゲームだ。

 熱くなって持て余した感情を、発散させるためだけのお遊び。

 そう言い聞かせても心が荒んでいく。

「自分を見失っていると思えるほど、夢中にならなければ手に入らない。でも、自分を見失ったら、手に入らない」

 どきりとして顔をあげると、杏子と目が合った。

 心の奥まで見透かされているような、その眼差しと言葉に項垂れそうになる。

「それは、どう……」

「本気と狂気の差、かしらね」

「……………」

「らしくないあなたの想いは本気? それとも狂気?」

 俺は思わず両手を握りしめた。

 悠然と構え、冷静に言葉を紡ぐ彼女にイライラする。

 何かを間違えている――

 そう感じるのに、それがわかったら何かが壊れてしまいそうで、確かめることすら躊躇っている。


 俺は何を、誰を恐れているのか。



「放っとけ」

 そう吐き捨てるように告げて、その場を後にした。

















関連記事

Comment

No title
ということで、また少し。

>優奈の顔を覗き込むように様子を伺っていたヒョヌは、優しく【微笑んみ】ながら片手で優奈を抱え、
◆「微笑みながら」、ですね

>2人は笑い合いながらゆっくりと沖に進んで、胸の下まで海水が来たところで止まった。
◆結構身長差がありませんでした? どちらの胸の下なのかがちょっときになります。もちろん、優奈のほうだとはおもいますが……

>「え? そっちの心配なの【?!】 そっちか――、それはどうかなぁ」
◆?!←これは初めて見ました。意図して使われたのならいいのですが、ちょっと違和感があったことをおご報告……。

ではでは。
Re: No title
grho 様、こんにちは^^


> ◆「微笑みながら」、ですね

そうです。ここの一文を結構いじったので
『微笑んだ』→『微笑みながら』への修正ミスです。修正しました。

>2人は笑い合いながらゆっくりと沖に進んで、胸の下まで海水が来たところで止まった。

はい、優奈の方です^^;『優奈の』と追加しました。


> ◆?!

あ、初めてですか?
普通使わないんでしょうか?^^;
『?!』はビックリする問いかけの感じで、私は時々使ってしまってますね。

「はぁ?!」「え――?!」「マジ?!」とか。

ちょっと大きな声をあげて、予想外のことに驚いてる感じです……伝わりませんかね^^;;;


ありがとうございました^^
  • 2011/10/09 14:37
  • YUKA
  • URL
こんにちは、チョコです^^

今日は17話まで、一気に12話読んでしまいました〜><
本当は5話ずつって決めてたんですが
続きが気になって自分なりにキリが良い所で止めました。
止めなかったら全部読んでしまいそうな勢いです。

遭難から月日が経って色々出て来ましたね〜。
17話まで読んで思ったのが
やっぱり杏子さん最高!かっこいい!!姐さん!!って感じです。
そして私はヒョヌx優奈のカップリングが好きです。
この2人が一緒に居る所を読むのが1番好きです。
何だか幸せなのに切ない...
修平、頼むから諦めて大人しくしててよ。
とか思っちゃうんですけどそれじゃぁお話が盛り上がらないんですよね。
でも男のヤキモチは見苦しい....

でもでも皆が幸せになる結末であります様に..
チョコさん、こんばんは^^

読んでくださって、ありがとうございます^^
凄い一気読みですね^^嬉しいです♪

お!勝敗まで来ましたね~~
杏子姐さんは、相変わらずです(笑)

チョコさんの感想に杏子姐さんが笑ってますよ~~
「あら、わかってるじゃない!」って^^


『優奈&ヒョヌ』は、主役ですからね~~(一応?^^;)
主要キャラ4人のなかで優奈だけが属性『M』です^^
かまわれっ子です^^

あ、次回が、次回が~~~!
先に謝っときますね、ごめんなさい^^;
ヒョヌはまだまだ、色んな意味で前途多難(爆)


でも私は一応、ハッピーエンド推奨派ですよん♪
  • 2011/10/14 17:47
  • YUKA
  • URL
基本的に、わたしは自分のブログ小説では、「!?」も「?!」も「!!」も使いません。

なぜなら、「縦書き」にしたとき恥ずかしいので……(^^;)
ポール・ブリッツ さん、こんにちは^^
ポール・ブリッツさん、こんにちは^^
コメントありがとうございます^^
「?!」はイレギュラーなんですかね?^^;;
そうか……
ライトノベルではない小説でも見かけていたのですが、ナシですね^^;
確かに、縦書きだとおかしなことに。。。
その本では半角だったのかな。

教えてくださってありがとうございます。気をつけます^^
  • 2011/10/23 14:06
  • YUKA
  • URL
いや、できるんだったらわたしも使いたいんですが、前に同人誌を作るためにワードで書いて縦書きにしたら、半角の「!?」が横を向いてしまった、という……(^^;)

それ以来こだわってるんですが、たまに、「いっそ外字を作ってやるか」と思うことがあります。めんどくさいのでしませんが(^^;)
ポール・ブリッツ さん、こんばんは^^
ポール・ブリッツ さん、こんばんは^^
コメントありがとうございます^^
なるほど~~~同人もやっていらしたんですね。
私は経験が無いんですが、ちょっと憧れ(笑)

「!?」は印字が難しいんですね。。。
私が見たのは、一応プロの出版物なので出来たのか。。。
『外字』――面倒ですね^^;;;どこまで作るかも悩みますよね。
ファンタジー系なら、どうしても必要なんでしょうか。。。

私は『ルビ』を振りたいです(笑)
難解漢字は使っていないつもりなんですが、どうもね~~
こっちで読んでほしいと言う、読み(響き?)の拘りもあるんですが
それはそれで、面倒なんですよね^^;
  • 2011/10/23 17:16
  • YUKA
  • URL
私も実は、「!?」は使わないようにしています。理由はポールさんと同じ。
でもたぶん、縦書きで「!?」がうまく並ぶ方法もあるんでしょうね。

それと、「!?」は「びっくり」と「疑問」をかけあわせた記号だと思うのですが、その二つの感情を「!?」という二つの記号だけで表現することに、自分的には違和感を感じるからです。

感情は記号だけで表現せず、できるだけ地の文で表現したいと思っています。

…とまあ、これは西幻の一個人の意見でございます。基本的には作者の書きたいように、書きやすい方法を使うのがいいと思います ^^
西幻響子 さん、こんばんは^^
西幻響子 さん、こんばんは^^
コメントありがとうございます。

もう、本当に重ね重ねごもっともでございます^^;
つい、癖で使っているようですが、
これから意識して気をつけたいと思います。
地の文での感情表現――その通りだと^^;
頑張ります。

  • 2011/10/24 18:15
  • YUKA
  • URL
人の愛が狂気なときはありますけどね。
それを許容するかどうか愛の形なんですよね。
他人に対する愛の表現の仕方が普通じゃない人はザラといます。
だから、SMグッズやそういう道具が売れるんですからね。
  • 2013/05/29 20:36
  • LandM
  • URL
LandM さん
LandM さん、こんばんは~^^
コメントありがとうございます^^

そうですね。狂気、盲執、愛情表現は様々ですね。
受け取り手に寄っても、その想いは変質しますし。
私も嫌がる人に勝手に無理強いすることと幼児虐待以外は
あっても大人であればいいかなと思ってますが。
人の好みは様々ですからね。
とはいえ、私はノーマルなストレートですが(笑)

  • 2013/05/30 23:51
  • YUKA
  • URL
  • Edit
Comment Form
公開設定

Trackback


→ この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。