FC2ブログ
QLOOKアクセス解析

光と影のエチュード <挿話>9カリスの囁き


飾り33
 誓約の地 × 【侵蝕恋愛】
<ケイ視点>




次話最終話の予定でしたが、ツイッタ―でもお話していた不確定だった1話。
ダンスに連れ出された優奈とケイ様の様子を挿話としてUP。

恋愛せずに愛を語る、2人の奇妙で不可思議な会話。




カリスの囁き




飾り34





「あんまりオッパをいじめいでくれる?」
 後が大変なんだからと言ってユナが苦笑した。
「そんなつもりはない」
「でも、私と踊りたかったわけじゃないんでしょう? 現に凄く後悔してる」

 その言葉に反論はできなかった。まさにその通りだからだ。
 人は時に愚かな行動に出るというのは本当なのだと、身を持って知ったところだ。
 現に今、俺はあり得ない状況に自ら身を置いている。
「そんなに緊張されると、こっちまで緊張するんだけどね」
「別に緊張などしていない」

――全て、あの女のせいだ。

 陽光の下で儚げに見えた女の姿ではなかった。
 まるで夜の闇を引き連れて、そのなかで悠然と輝く冷ややかな月。
 艶やかにくっきりと縁取られた女から差し出された腕は、まるでフィオラからのびる蔦のようにその触枝をのばしてきた。
 彼の花が路を、建物を、街を飲み込んでいくように、濃密な芳香を纏ってしなやかに絡め捕られる。

「お前、何者だ?」
「何者って。別に何も隠してない。私は私よ」
「その割に随分慣れているな」
「好むと好まざるとにかかわらず」
「……お前もか」
「なにが?」
「キョウコも同じことを言っていた。思い出作りにしては随分大掛かりだ」
「自己満足かもね」
「自己満足?」
「そう。確かに彼女と想い出を作りたかった。彼女を好きになったから。でも彼女がこの状況を望んでいたわけじゃないの。これは私が、私たちが勝手にしたことだもの。決して傷つけたり困らせたかったわけじゃないけれど、それでも作りたかったの」
「何を?」
「感情の記憶を」

――感情の記憶?

「その人を形成しているのものは感情の記憶だと思ってる。それはどう足掻いてもどうすることもできない自分自身。人と違うことを認識する前から、生まれて何も憶えてもいないほど幼い頃から感じて、その感情をどこかで記憶している。何を感じ、何を考え、どう行動してきたか。自分の中の正義も過ちもすべて自分だけは記憶してる。人にはわからない、自分だけが知っている記憶で人は自分自身を形成していく。私たちは記憶を作ることで、2人の中に残りたかったのかもしれない。だからやっぱり自己満足よね」

――そういうことか。

 なんとも迷惑な話だ。
 その自己満足でいいように振り回された俺の目に、その元凶たちが映った。
 しっとりとこの場に馴染み、談笑する彼らの姿を捉えて無性に腹が立った。押さえていた感情がうねりとなってふつふつと肌を泡立てていく。

――冷静になれ。

 空気に溺れるように我を忘れてもがく意識の中で、その感情が思わぬ言葉を導き、今こうしているのだ。
 同じ過ちは繰り返すまい。

 全く不本意な話だ。
 始めて逢った時から不用意に近づくまいと誓った女と、なぜ踊らなければならない?
 自分が酷く滑稽に思えて、痛烈な自己嫌悪に襲われる。

――それも全て、あの女のせいだ。

「苦しそうね」
 唐突なユナの声で引き戻される。
 目の前に鮮やかな光が戻り、その光に少し目がくらんだ。

 その声に視線を落とすと、息のかかる程近くで精巧な髪飾りが揺れている。
「何が?」
 問いかけると、ユナが少し視線をあげて俺を捉えた。
「愛することに苦痛が伴う時は、愛しすぎているんですって」

――愛、だと?

 そのバカバカしさに鼻を鳴らした。この女らしい戯言だ。
 多くの者が信じ、渇望し、惑わされる幻影の象徴。人は愛玩物にその幻影を見い出し、縋りつき、強要する。
 なんて不条理で理不尽で乱暴な言葉だろうか。
 まるで、それを理解できぬものなど居ないかのように。
 その存在を疑うことなど、あり得ないと言わんばかりに。

「何も感じなかった人は何も感じない。でも感じないのは、感じることを封印している場合もある。感じないように記憶を、感覚を封印してきた。記憶は優しいものだけじゃないからね。揺さぶられる激しい感情は、時に相手だけでなく自分自身をも傷つけてしまうから」

 語尾に違和感を感じ、腕の中に収まるユナに視線を落とした。
「自分自身を傷つけてしまうような感情の記憶を、お前も持っているということか?」
 答えはない。
 しかしその唇がゆるやかに弧を描き、沈黙が雄弁に語る。

 急速に息苦しさを感じた。霧散する空気が俺の喉を締め付けていく。
 あの女に感じる苦しさとは異質の、本能的な恐怖を憶える苦しさ――。
 遮断しなければ息ができない。そうでなければきっと生きられないのだろう。
 そんなことを漠然と思うほどの息苦しさに、大きく息を吸い込んだ。

「空気が違うのよね」
「……何?」
 唐突な言葉に思わず問いかけると、ユナは「嫌気生物」と囁いた。
「けんき、せいぶつ……?」
「そう。同じ星なのに、太古の世界では空気が違ったんですって」

――何を言い出すんだ、こいつは。

 旋律がホールの中で踊り、それに合わせて人も揺れている。

「……多くの動植物がこの地上の同じ空気の中で生育しているでしょう? 大気中に含まれる酸素を吸って吐いて。目には見えないけどそれは絶対に存在していて、もう当り前にその存在を身体が知っていて、それこそ細胞が、遺伝子が、それを享受できると疑いもしない。でも太古の大気中には、現代の人や動物が無ければ生きられないものが無かったの」

――無ければ、生きられない?

「それが酸素か」
「当り前にあると思っている、無くては生きられないと思われているもの」
 確かに、と思いながら鼻先で笑った。
 無くては困るもの、空気。子供じみた問答だ。

「酸素ってね、とても不安定な物質なんですって。すぐに変化してしまう。人はそれをとり込んでエネルギーに変えて生きている。今生きている多くの生物は、その不安定な酸素を取り込んでエネルギーに変えられるようにできているの。それは好き嫌いを超えていて、ほとんどの生物にとって無くては生きられないものでしょう? でもそれができない生物にとっては、あると生きられない世界になってしまうの。ほんの少し侵蝕されただけで終ってしまうの」

 なぜか目を逸らすことができなかった。
 いや、逸らすということさえ忘れて、榛色の瞳に映る自らの姿を無意識に眺めていた。
 綺麗な榛色の瞳に俺が映り込んでいる。
「お前……いったい何の話をしている?」

「人はみんな違う。人にはそれぞれ歴史があって思考があるのだから、培われた嗜好も違って当然。多くの人が好ましいと感じるものだけが全てじゃないわよね」

「綺麗事だ。お前だって排除してきただろう。自分と相容れないものを」
「そうかもね」
 ステップを踏みながら、ユナが淡々と語っている。軽やかな足取りに慣れていると思った。
 やはりこの女もキョウコと同じ世界に属しているらしい。

「酸素を作って好酸生物を生み出したのは、その嫌気生物たちなのにね」
 頭ひとつ分以上小さく華奢なユナは俺の胸元に収まり、囁きは鼓動に合わせて緩やかに流れる。

「酸素が嫌いな生物達が、オゾンを作り、酸素を作り、今の大気を形成した。そのおかげで好酸生物は爆発的に増えて進化したけれど、嫌気生物は自分達の作った世界では生きられなくなってしまったの」

 ふと廻る視線の先にまたあの女を捉えた。
 生を感じさせぬほど白く細い腕に、目が、意識が、思考が侵蝕される。
 振り払っても消すことのできない、醜悪で甘美な残像。

「今でもいるのよ、彼らも。今でも酸素の無い世界で生きているの。この世界には酸素の無い世界だって確実に存在していて、酸素の好きな生物と酸素の嫌いな生物は同じ世界では生きられないけれど、それでも共存している。酸素の嫌いな生物たちが生きれる世界はとても狭くなってしまったけれど、それでもね、自分達が生きられる場所を見つけて共存しているの。酸素が入ってくると生きられないから、入りこんでこないように防御された世界で生きているの」

「それなら、お前と俺は構成しているものそのものが違うのだろう。互いが異質で共存できないものとして」
「共存はできるわ」

 いつの間にか女をとり囲んでいた男どもは消え、かわりに紅い瞳が隣に向けられている。
 唇は三日月を描き、その腕がしなやかにヒョヌの腕に絡みつく。

「嫌気生物の中には、物凄い猛毒を持つものもいる。人の生死を分けるほどの猛毒を恐れて忌み嫌われたりもするけど、中には人にとって無くては困るものもあったりするの。同じ世界では生きられないけど、同じ世界に共存してる。だからね、いいと思うの」

 その言葉で、無意識に視線を落とした。
「無理して理解することはない。無理して排除することもない。あるがままでそこにある、それでもいい」
「無理だな」
「どうして?」

「世の中は多数方式だ。人は性格や考え方が違うという「結局は同じ者同士のちょっとした違い」は何となく受け入れられても、極端に異質なもの、自分とは余りにもかけ離れた考えやカテゴライズ出来ないものに対して 反射的に「嫌悪」や「拒絶」を感じる生き物だからだ」
「違っていても存在を否定される根拠にはならないでしょう?」
「詭弁だな」

 確かにその通りだ。人は同じではあり得ない。
 だが多くの者が好ましいと思うものが、社会を、秩序を、法でさえ支配しているのもまた事実。
 その小さな世界を守るために、相容れないものを排除し、拒絶し、強引に捻じ曲げようとする。受け入れられないものは存在すら許されないかのように。

「多数派は強者となり、少数派は弱者となるものだろう」
「多数派が強者とは限らないわ」
「それは少数派に絶大な力がある場合だ。権力しかり、財力しかり。圧倒的な力の差はその評決さえ動かせるからな。例えば王族が、例えば政治家が、例えば資産家がというように。それ以外は多数がモラルになる。多くの賛同が法となり、秩序となっている」

――「愛は至高のもの」が絶対多数の意見であるように。

 だからこそ自分の価値観を脅かす異質なものを無意識に排除しようとする。
 他者だけでなく、自己の中からさえも。
 どう見えるかに重きを置き、自己肯定と自己否定を繰り返し、より好ましい自分自身だけを認識する。

「たとえそれが多くの意見の賛同を得られたとしても、一方的なものの見方はとても傲慢で強引な気がする。そして、その逆も」
「……逆?」
「そう。少数派で弱者だからといって、それを盾にするのも違う。受け入れるべきということではなく、「そこに在る」ということ、「交わらざるとも共存する」ということでいいんじゃないかしら」
「それこそ綺麗ごとだな」

 人は常に誰かと、何かと比べて自己を形成している。他者からの、そして他者との比較で自己を認識するものだろう。貧富も優劣も、幸福であるかさえもその比較から生まれている。
 だからこそ必要なのだ。自己肯定するための弱者という少数派が。
 自身の正当性を、幸福を、その存在意義と価値を肯定する道具として。
 共存のためではない。

 人を動かすのは簡単なことだ。虚栄心を煽り、自尊心をくすぐり、異を唱えれば容赦なく叩き潰せるぞと言外に匂わせればいい。
 人は強者に迎合する。意識的に、無意識に。

――それを巧みに操ってこの会を開かせたのは、他ならぬお前たちではなかったか?

 だとするなら充分認識しているはずだ。キョウコも、お前も。

「……お前は、多数派で強者だろうからな」
 するとユナは「そうかもね」と薄く笑った。
 その回答は不思議と不快ではなかった。
 ただ楽曲の旋律に調和したユナの声が、違和を唱えることなく静かに聞こえている。

「私自身は恋愛も人生観も一般的な日本的モラルに沿って考え、それが規範となって生きていると思う。でも世界は広がっていて、自分とは生き方も環境も違ったり、宗教・国籍・人種というカテゴリーから、驚くような違いを感じることも多くなっているわ。理解できないからといって、それ自体を否定する根拠にはならないのよ」

 ユナから逸らした視線の先で、突然奴と目が合った。
 静かに見据えるヒョヌの視線は、俺の上を滑り落ちてユナへと流れる。
 ほんの少し表情を歪めて向けてくる瞳に浮かんでいる感情――。

「苦しそうなのはあいつの方だろう」
「何が?」
「気付いてないのか?」
 流れていた旋律が終わりを告げる。
 ユナは微笑んだままその問いには応えず、少し離れてソワレを摘まみ、優雅に礼をとった。

「酸素を当り前に享受している生物達にとっても、酸素はとり過ぎると有害なんですって。毒になるほどね。無意識に欲して、無ければ生きることさえできないのに、とり過ぎると毒になって有害だなんて、ちょっと皮肉だなとか思ったりもするのよね」

――何?

 俺に問いかける猶予を与えず、全てを許容しながら拒絶する独特の笑みを浮かべた。

――変わった女だ。

 迎合せず媚びもせず、かといって拒絶も威圧もない。
 ただ静かに俺を見ていた。
 凪いだ湖面を彷彿とさせる瞳に俺を映して。


 時が緩やかに動き始め、ユナは真っ直ぐに男の元へと帰っていく。

 その後ろ姿の先に映る紅い瞳が俺を捉えていた。















飾り34



こんばんは。今回も【侵蝕恋愛】と誓約の地のコラボです!
そして今回はお詫びから。
「光と影のエチュード」は木曜20時更新をしておりましたが、前話8話はなぜか間違って水曜日にUPされていました―!!水曜日は帰宅も遅く、気がついた時にはすでに遅かった(笑)ま、前倒しだからいっかと思いましたが、自分のアホさにあきれます^^;;(日付間違って設定していたらしい)
にもかかわらず、読んでくださった皆さま、コメントを寄せてくださった方々、本当にありがとうございます!
ツイッタ―でも話していたのですが、お詫びを兼ねて未完だった不確定1話を今回UPしました。
すみません、1話挟んでしまったので次話が最終話です!!!

「カリス」はギリシア神話に登場する美と優雅を司る女神たちの総称です。複数形は「カリテス」
「嫌気生物」はお話に出てくる通り「空気があると生息できない生物」のことです。
「嫌気生物」には、酸素を利用できる「通性嫌気性生物」酸素に暴露することで死滅する「偏性嫌気性生物」があり、中には酸素を利用することはできなくても生存に影響がない生物もいます。

多くの嫌気生物は細菌やバクテリア。嫌気性バクテリアとよばれるものは地中や海中など酸素のない場所に多く生息しています。人体にとって文字通り猛毒を出す(破傷風毒素やボツリヌス毒素)ものも多い嫌気生物。しかしバイオテクノロジーに使われたり、腸内に有用な「ビフィズス菌」も嫌気生物なのです。

そのことを唐突に話す優奈と聞くケイ様のかみ合わない感じ(笑)お互い相手に対峙していながら違うことを考えていたり、ちょっと例えがあれ過ぎて意味不明だったりする感じの話です^^;このネタは以前から私の中にあって、誓約の地本編で使おうかな~とも思っていたのですが、ケイ様との会話の方がなんとなく合う気がしたので。しかし上手く言えなかったなぁ(書けなかったな)という後悔も。

優奈が言う「空気」や「酸素」を、「愛」だとか「愛情」だとか「夢」だとか、何か普通の人は絶対必要だと思っている概念的な言葉に置き換えて頂くと、なんとなく「ふ~~~ん」と思える雰囲気は伝わるでしょうか(←他力本願)

優奈は杏子のように直球ストレートで話していないのですが、彼女なりにケイ様やセイレンから何かを感じていて、それが自分の感じる、または考える世界とは違うと思っていて、そしてそれを肯定するという強い意識というより、「それでもいいんじゃないか」というようなゆるい肯定というか、そういう世界もそういう物事も共存していて当然だよねみたいなことを話しています。
優奈のちょっと斜め上を行く(笑)お話で、彼女の人となりを出したかったのですが、「恋愛」をせずに「愛」を語る不可思議な話になってしまいました^^;そしてなぜか随分と突っ込んだ話を優奈と交わすケイ様(笑)


今回はイレギュラーな話になったのですが、次話が本当にラストです!(説明&解説が長っ!)
UPしたことを自己満足的に肯定しつつ、ここまでお読みくださってありがとうございました!
関連記事

Comment

今晩は~
酸素

純粋な酸素は 今の生物にとっても

猛毒ですよね

その毒がないと生存できないなんて

生物は不可思議な存在だと思います
  • 2013/05/05 22:05
  • いちごはニガテ
  • URL
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • 2013/05/05 22:08
一瞬誤解して、ええっ、今日が最終回? とびっくりしましたが、そういうことでしたか。

「侵蝕恋愛」も「誓約の地」も流れている一番のテーマが「愛」なのだと思うのですが、主役たちの立ち位置が全く違っていて、それをYUKAさん視点でつまびらかにするとこういう事になるのかと、納得しました。酸素かあ……。なるほど。

と、思う一方、確信しました。やっぱり私は優奈さんを書けない……。「モイライ……」の時は、もう少し頑張って観察すれば書けるかなと思っていたんですが。しくしく。優奈さんの言動パターン、本当に予想がつかない!

お借りしたヒョヌさんは、次の日曜日にお返しする予定でございます。実は、二日ほど前に書き上がってしまっているのです。

P.S. 稔をしごいたのは、もちろん蝶子でございます。でも、稔はダンスってものに虫酸が走るみたいです。
  • 2013/05/06 04:34
  • 八少女 夕
  • URL
  • Edit
いちごはニガテさん
いちごはニガテさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます!

そうなんですよね。
純粋な酸素は、不安定で猛毒。人にとって。
空気自体が凄く絶妙なバランスで、人体に有用になっているそうですから。
本当に不思議。

純度の高すぎるものは、それが酸素であれ想いであれ愛であれ
純粋過ぎて毒にもなるのかもしれません。

と、理系をすぐに文系思考で考えてしまう私^^;;

  • 2013/05/07 19:46
  • YUKA
  • URL
  • Edit
鍵コメCさん
鍵コメCさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます!

いえいえ、もうその通りでビックリしております!そうなんです。私の中では、彼らの言葉も想いもすれ違っている様さえも実は繋がっているのです。優奈はこの中でケイとセイレンに対して話しているのです。

解説でも少し書きましたが、酸素を愛という概念に置き換えるともう少し意味が溶け込むかなと思って書いているのですが、その「愛」というものも、好気生物側に立てば「純愛」だの「慈愛」だのということになるでしょうけど、そういうものを受け入れられない、またはもう少し歪んだ形での「愛」というものを捉えている側からすれば、息苦しいというような。もっと言えばそれすら凶器になるほどの物かもしれないと。

遮断された側で生きる「嫌気生物」は、置きかえるならばその人達も普通の人たちなのです。以前性的志向のお話を記事で書いた事がありますが、例えば少数派の思考を持っている人や、人から受け入れることができないようなことを感じている人達も、いわゆる多数派のモラルによって自己否定や自己嫌悪を憶えることもあるかもしれない。人が「こうあるべき」という想いすら、一定の人にはその存在を脅かすほどのものになるのではないかというような。

「好気生物」と「嫌気生物」の間にあるのは酸素のですが、そういうものが見えない壁となって実は彼らのコミュニティを侵害したりしているのはないかと思ったりするのです。……上手く言えませんが^^;;

優奈は優奈なりに語っていますし、それを受けたケイ様もケイ様の世界観から理解できる話で話していますから、そこはすれ違ってしまうのですが、すれ違っていてもどこかでお互いの言いたいこともわかっている、でも同じ土俵で話さない、そんな攻防(笑)
だから今までと違ってケイ様も優奈の話がスッと入り込んでくるような気がして、つい耳を傾けてしまったのです(←という設定(笑))

優奈も杏子も、そしてヒョヌも修平も、ここでいう「好気生物」ですね。そしてやはり、ケイ様とセイレンは「嫌気生物」ということになるでしょうか。
ケイ様は自分が……ということでなく(自分が一般的なカテゴリーに属さないことも充分わかった上で)それでも多くの人がとるであろう習性や生理的な反応も充分わかっている頭のいい人です。それを嘆くわけでもなく、そういうものだと認識しているという感じで。

でも優奈はそういう人も想いもあると認めたうえで(自分は違うということも、それを自分が言うことが綺麗事や詭弁と捉えられることも充分わかった上で)それでもそういう世界は共存でいいのだと言っています。
共存とは、通常でいう「助け合って共に生きる」ということではなく、そこにある領域を侵さずとも、それはそれとして存在する、その存在を認め合うのでいいのではないかというような。


>「愛することに苦痛が伴う時は、愛しすぎているんですって」

>「自分自身を傷つけてしまうような感情の記憶を、お前も持っているということか?」
答えはない。
しかしその唇がゆるやかに弧を描き、沈黙が雄弁に語る。

>「酸素を当り前に享受している生物達にとっても、酸素はとり過ぎると有害なんですって。毒になるほどね。無意識に欲して、無ければ生きることさえできないのに、とり過ぎると毒になって有害だなんて、ちょっと皮肉だなとか思ったりもするのよね」


特にこのくだりは、優奈の過去、そしてヒョヌと自分のことを踏まえて語っております!もうその通りです!^^
そうですね。彼女たちは「好気生物」ではありますが、それは嫌気生物を文字通り嫌悪するものではなく、誰しもが色々な想いを抱えて色々な面を持ち合せているので、一見「好気生物」に見えたり「嫌気生物」に見えたりしても、人の中には両方が存在することがあってることを知っていて、その両面のどちらが絶対的な善でも悪でもないことをわかっているというか。

なんだか、禅問答のようになってしまいました^^;;
でもこのくだりは、やっぱり対極にいると思われるケイ様達との回の方がしっくりきたので、上手く書けたかどうかは置いておいて(置くのか?)この話をUP出来て良かったなと思っております^^

あと1話。最後は「あはは~」と笑って締めようかと(ぇ?
木曜日にちゃんとセットしましたので(笑)またお読み頂けると嬉しいです^^

  • 2013/05/07 20:20
  • YUKA
  • URL
  • Edit
八少女 夕さん
八少女 夕さん、こんばんは^^
コメントありがとうございます!^^

あはは^^;;すみませ~~ん。実はツイッタ―でお詫びをしていたのです^^
そうですね。私の稚拙小説も【侵蝕恋愛】も、大きなテーマとしてその底辺に「愛」というものが流れていると思います。
その表現も内容も想いも求めるものすら違っていて、それが登場する人物によっても大きく異なっているのですよね。何が正解というのは無くて、だからこそそれぞれがそれぞれに欲するものを書いているというか。

私のつたない文で、それぞれのキャラクターの個を書ききれない気もするのですが、それを今の私で書くとこんな感じになるという^^

あ、優奈、やっぱりダメですか(笑)うんうん、そのお気持ちが理解できてしまう薄情な作者(笑)
って、ええ?もう書けているのですか!凄っ!
了解です!楽しみにしております^^

稔氏。。。蝶子さんのスパルタで、もっと嫌になったのでは?(笑)

  • 2013/05/07 20:47
  • YUKA
  • URL
  • Edit
Comment Form
公開設定


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。