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光と影のエチュード 5謀略の罠

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  誓約の地 × 【侵蝕恋愛】
〈ケイ視点〉



ただ、傍に。




謀略の罠2
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 空を仰ぐとフィオラの花びらが風に舞っていた。
 風光明媚なこの街でもひと際賑わうカフェの一角は、なぜか奇妙な緊迫感に包まれている。


「すごく凝った招待状よね」
「そうだな。紙質も凄くいい。かなりきちんとしたものだって俺にもわかる」
「イタズラにしちゃあ、凝り過ぎだよな」
「イタズラなのかなぁ。ちゃんと確認したはずだけど」
「じゃあ、誰から?」
 キョウコから発せられた言葉が、重苦しい雰囲気に拍車をかけた。

「ヒントはこの書簡では?」
 そう言うと、ユナがあらためて封を開ける。

 流れるような文字が紙の上を滑るように踊り、示したレターヘッドには王冠の下に2本の剣と動物が浮き彫りになっている。
 スタンプではない。箔を押してから紙を浮き上がらせるエンボス加工がされた仕上がり。
 材質も上品で手触りが良く、手の込んだ仕上がりはオーダーメイドを感じさせる高価な品だった。

「王冠に剣に……犬?」
「ライオン、かな」
「王冠なんてなかなか使わないわよね」
「こういう感じで使うとすれば……どこかのホテルとか」
「王族とか?」
「王族だから王冠? 安直だな」
「でもそういう国もあるわよ?」
「そうだなぁ。でもそこまで正式なものなのか?」
「確かにね。プライベートのものっていうにはきちんとしているし、公式には思えない。どこかの名家って感じではあるけど」
「貴族とか王族の眷属ならあるんじゃない?」
「そもそも……本当に〈ラ・ルーナ〉からのものではないのかな?」
「そうよね」

 何故かイライラして、思わず口を挟む。
「この紋章は見たことがある」
 その場にいた全員の視線が一斉に集まった。
「Insulae Canariae」
 ユナは少し驚いて俺を見つめていた。榛色の澄んだ瞳に俺が映っているのが見える。

「王冠に双剣、犬の紋章」
「え? ……あ!」
 暫く考えていたユナが顔をあげて叫んだ。
「そうだね。『canaria』の紋章っぽいね」
「……スペイン領の?」
 キョウコはそこまで言うと首を傾げた。

「悪いが、俺にはさっぱりわからない」
 シュウヘイはヒョヌと目を合わせて互いに首を振り、肩を竦めている。2人ともお手上げってことだ。
 面倒で説明などしない。
 しかし、ゆっくりと珈琲を飲む俺に誰も期待もしていないようだった。
 彼らはいっせいにユナを見て、説明を待っている。

 ユナは紙を取り出し、その上にすらすらと文字を綴っていく。

「Islas Canarias……一応、スペイン領なんだけど。アフリカ大陸の北西海岸近くに、カナリアス諸島って呼ばれる7つの島があるのは知ってる? 言い伝えでね、昔カナリア諸島は〈世界の西の限界と祝福された死者のすみか〉だと信じられていて、この諸島は始め『Fortunate Islands(幸運の島)』というラテン語で呼ばれてたらしいの。

諸説あるんだけど、紀元300年ごろにある探検家がその島の一つであるグラン・カナリア島で大型犬を発見して、ラテン語の『canis(犬)』から、グラン・カナリア島がラテン語名で『Insula Canaria』という呼び名で知られるようになって。それが後にカナリアス諸島全体を意味する複数形の『Insulae Canariae』になった……と言われてる。

でね。カナリア諸島の州旗には「王冠」と「犬」と「双剣」が描かれているのよね。『Las Palmas de Gran Canaria(ラス・パルマス・デ・グラン・カナリア)』が州都の1つにあたるんだけど、確か紋章は王冠と7つのクロスした剣に犬と……砦だったと思う」

「……この押印」

 そう言って、同じように加工されているエンペローブの封蝋に押された刻印を指差した。
 すでに少し崩れている臙脂色の封蝋は判別が難しかったが、刻印は小さな鳥を象っている。

「我が家では正式な書簡には正式な家印を押して封をする。〈ラ・ルーナ〉のある程度の階級の家ではみんなそうなんですよ。それぞれの家にそれぞれの家押がある。しかしここに押されている物は見たことがない。……少なくともこの街のものじゃない」

「刻印、ねぇ」
「これは、……鳥だよね?」
 ユナの問いかけに少し頷いてみせる。
「カナリア諸島だとしたら恐らく……カナリア」
「カナリア?」
「カナリア島が原産の鳥ですからね。旧家ならその鳥を家押に使うこともありうる。おおかた、その島の住人なんじゃないんですか?」
「あり得ないわ。ウチの人間にも来る前に確認させたもの」
「じゃあ、そいつもグルなんでしょう」
「まさか!」
「そっちが主犯って可能性は?」
「私を騙したってこと? 根性あるわね」
「国を間違えたとか」
「いくらなんでもそれはないよ。ファルス家ってあるもの」
「でも俺じゃないんですよ」
「こんなことをする必要がどこにある?」
「こんなことをしたくなるほど、恨まれてるってことでは?」

 俺の発言に一瞬、全員が押し黙った。
「恨まれること……?」
 ユナが真剣に悩んでいる。
 存在自体が気に食わない人間がここにも一人いるぞと声をかけようとして、シュウヘイの声に阻まれた。

「ヒョヌさんのファンか?」
「ええ?」
「まだ知られてないよ」
「だよな。簡単にできることじゃないしな。あ、杏子にも送られたんだろ?」
「……どういう意味?」
「他意はない。可能性の問題だ」
「優奈より私の方が恨まれるだろうってこと?」
「心当たりがないなら違うんだろ」
「…………」
「……あるのかよ!」
「あり過ぎてわからないわよ!」
「胸を張ってえばるなよ」
 それからも延々と可能性についての議論が続いた。考えても答えは出ない不毛な検討を重ねている。

「全員、まっとうに生きているわけじゃないようですね」
 思ったことを言っただけなのに、あからさまな非難の視線は心外だ。
「少なくとも、これは俺からの書簡じゃありません。明確な答えはわからないし推測の域を出ないけれど、カナリアが係わっているんでしょう」
「だから、それは誰なのよ」
「さぁ?」
「その意図は?」
「さぁ?」
 憤るキョウコ、首を傾げるユナ、ため息をついて苦笑するヒョヌとシュウヘイ。

「偽物に踊らされて、わざわざこの街に……ご苦労様でした」
 労をねぎらってやっただけなのに、気に入らなかったらしい。
 ヒョヌの眼は坐り、シュウヘイが呆れた顔で肩をすくめる。
 気にも留めず、追加注文を取りに来た従業員に軽く首を振った。

 招待するつもりはない。
 そもそもパーティーなど開くつもりはない。あの家に大勢の人間を招くつもりなどないからだ。
 とにかく俺ではないときっちりと伝えた。
 とりあえずこれで面倒は回避された。

「楽しみにしてたのにね」
 寂しそうなユナの声が反響する。
 視線を向けると、頬杖をついて落ち込んでいる姿が映った。
「この街は祭典前に色々な行事もあるんです。それを見ていけば少なくとも無駄足ではなくなるはず」
「そう、だよね」

 すると、目の前に座っているキョウコが笑みを浮かべた。
 その視線に少しばかり居心地の悪さを感じたが、その顔は相変わらず美しい。
 咲き誇る、大輪の薔薇。
 艶やかな肌と整った顔が華やかな雰囲気を醸し出し、熟れ落ちる前の匂い立つような女を感じさせる。

――悪くない。

「案内しましょう」
 言葉はキョウコにだけ向ける。
「どこに?」
「この先にいくつか部屋を取ってあるので、そこに……」

 その途端、斜め向かいの席のカップがカシャンと音を立てた。
 行儀の悪い音に顔をしかめると、視線の先でシュウヘイが何故か楽しそうに笑っている。
「ま、頑張れよ」
 言っていることとやっていることがバラバラだ。意味がわからない。

「どういう意味です?」
「そのまんまの意味だよ」
 淡々と語りながら、彼は嘲笑と呼ぶにふさわしい笑みを浮かべる。

――なんだ、その余裕は?

「嫌なら断るだろうからな。俺が何を言ったところで止まらねぇよ。はっきり言って止める自信も無い」
 高らかに宣言する真意がわからない。
 そんな男に文句を言われる筋合いもない。

「じゃあ、いいんですね?」
「それはどうかな?」
 にやりと笑うその余裕が気に喰わないが、キョウコは肩を竦めて笑っている。
 面倒はごめんだ。


 その時ユナが「そう言えば」と声をかけてきた。
 とりあえず珈琲に口をつけながら視線を向ける。

「何です?」
「ケイ君が言ってたここでの用事って、なんだったの?」
「…………」

 この女は言葉を求め、声を奪う。

 いつまでも答えを待ち続けるユナの瞳に俺が映っている。



 そして目の端で、せわしなく揺れる綺麗な黒髪を捉えていた。













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こんばんは、YUKAです。
今回も私が愛してやまない大好きなブロガ―様のcanariaさんが運営するブログ「音速形而少年」で綴られている【侵蝕恋愛】と、私の稚拙小説「誓約の地」のコラボ企画!!という名を借りた2次小説です(。・w・。 )
今回の画像もcanariaさんが〈ラ・ルーナ〉のカフェ画像で使われていたものの違う角度の画像。無料画像をお使いになっていたのだと思うのですが、カフェと考えた時にウロウロと徘徊して探し当てました(笑)

私の性癖……もとい、書き癖をご存知の方は「canaria」という言葉を出したくて作ったエピだろうとお察しのことと思います。はい、その通りです(。・w・。 )canariaさん、すみません><。
この国は実在します。スペイン領区にある諸島だそうです。〈ラ・ルーナ〉は架空の都市ですし、実際にも全く何の関係もございませんが、私がこの島を見つけて嬉々として書いたことは言うまでもありません。
そしてこの書簡。既にUP済です。お気づきになられたでしょうか? こんな感じですよというものをご連絡でUPしてます。3月7日にUPした招待状です。この細かい遊びが楽しくて楽しくて♪……すみません。
実はこの書簡にあるエンブレム(紋章)の中に、犯人の名前が隠されています。探せないようにしていたので、かなり小さな文字です(笑)気付いていた方は素晴らしい。  Let’s確認♪➡☆招待状☆
「yuka and canaria」――canariaさんまで犯人に仕立ててしまいました。もう本当にすみません。

「あり得ないわ。ウチの人間にも来る前に確認させたもの」ウチの人間→表向き執事。という前提のYUKA
「じゃあ、そいつもグルなんだろう」グル→YUKA
「そっちが主犯って可能性は?」主犯→YUKA
「私を騙したってこと? 根性あるわね」根性ある人→YUKA……Σ( ̄ロ ̄lll)いえ、無いですが。
……もうしませんからお許しください><。

そして、はい。ケイ様はセイレンを見に来ました!(←暴露)実は気になって気になって仕方がなくて見に来ちゃったという設定(←どんな設定?)忙しくて来れないセンセイへのかる~~い当てつけです(笑)

次話は「杏子視点」再びセイレン登場です。実は次話はとても難産でした。色々とね~
今回の私の遊びのくだらなさに、読むことをやめてこっそり閉じられることが無いようにと祈りつつ。
ここまでお読みくださってありがとうございました!
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Comment

誰が書いたのか!?と前回のコメントで残しましたが・・・そうでした、そうでした、確か、2人であの日に書いたんでしたねっ( ´艸`)ムププ私ったらすっかり忘れてました(笑)
書簡のエンブレム、実は、始めて拝見した時に、YUKA・・・naria?と書いてあることには気付いていたのですが、読めないなあ・・・と思っていたんです。意図的にcanariaのcの部分を隠されていたのですね、さすがです、騙されましたっ(笑)

YUKAさんは杏子さんの執事さんだし、書簡も真相が明らかになったし、ケイも優菜さんにさらりと自分の本音暴露されてしまって(笑)
冒頭の写真にも一人によによしておりました!^^!

そ、それから、今週のごめんなさいは、修平さんへ!!
修平さんごめんなさいごめんなさい火傷されてないでしょうかっでも私も、どちらかというとケイの方が心配した方がいいのは分かる気がします///

次話は杏子さん視点なのですか!?あ、はい、何となく、杏子さん視点→セイレンは、難しそうなイメージがあります!どこがどう、と言えないんですけれど、さじ加減というか、杏子さんは天眼の持ち主なので・・・!!
一段落ついたのに、増々予想がつかなくなってきました!
杏子さんは本当にケイの誘いにのって下さる気なのか・・・!?とかも気になります!いろいろな意味で・・・!!
シリアスあり、笑いありのコラボから目が離せません(>▽<)
canariaさん
canariaさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます!!
もう、頂いた日に読んでいたのですがなんだか優芽の樹の調子が悪くてお返事ができませんでした。遅れて申し訳ないです><。PCはちゃんと動くので、何かの不具合???と思ったのですが、FC2の皆さんもちゃんとコメントとかできているようだったので、やっぱり優芽の樹だったのだと思います。

そうそう!一緒に書いたんですよ~~♪
す、すみません^^;;笑って頂けてホッとしました^^もうね。お名前をもっとさりげなく出したかったのですが、これに気付いたら書いていたという……無意識(笑)いえ、書こうとしていた時点で確信犯ですが(笑)
やっと招待状を出した意味を言えました♪この招待状が何気に意味を持つという~~~
その解説はもう少し先です^^

杏子の執事は私(笑)え?怖くて務まりません!相田家の執事なんて(爆)
優奈は天然的に悪魔的な突っ込みを^m^ケイ様は唖然でしょうね~~!!動揺を隠すために、一気に無表情の上に冷気を纏ったケイ様の顔が浮かんで私も書きながら思わず笑みが(←嫌な奴)

そして修平(笑)
まぁ、彼氏の前で堂々とね!受けて立つ(?)杏子も杏子ですが(笑)杏子でなければ許されないでしょうね~。で、この先、後悔する日がやってきます!(←確信犯)ケイ様的にね(笑)

TOP画像。気付いてくださいましたか?って気付きますよね^m^違う角度を持ってきましたよセンセ――!!もう、私の中での<ラ・ルーナ〉のカフェは丸テーブルのこの感じなので(笑)上手い画像を見つけてくるなぁと思っていたので、やっぱりこれしかないだろう!!と^^

そして次話ですね!!^^そうなんです。次話はね、杏子→セイレンなので、セイレンにも少し触れなければいけないのですが、実はセイレンの過去はわかっていてもセイレンの心の内が本当の意味でわかっているのはcanariaさんだけなので、相当悩みました(笑)合っている間違っているということは抜きにして(←抜いていいのか?)色々な意味で何かが伝わるといいなぁと思っちょりますです!

そしてですね!現在「孤児院日誌」で書かれていた「あの場所」や「あの動物」が実はとても気に入っていて、それをイメージして、というかそのまんま書いていたのですが、本編でその話が出てきてビックリしておりました!!私のイメージは過去の中の話だったのですが、現在でもやはり重要な場所であるのだとわかって、使って良かったのかぐるぐるしております(笑)
――って意味不明ですが、canariaさんには何となく伝わるだろうと思って書いてます(笑)

でも何気に次話は気に入っているのです。私は^^;;伝わるか伝わらないかは抜きにして(←抜いちゃダメですが)ちょっとね、シリアスっぽくなってます^^画像もあれとかあれとかイメージしているんです^^ですが、リンクも入れて脳内補完をして頂けないかと他力本願無ことも考えています(笑)

お忙しいと思いますが、いつもコメント本当にありがとうございます!!次話を読んだ後のご感想をお聞きしたいと思ってますので、お手すきの時にでもまた頂けると嬉しいです^^


  • 2013/04/14 01:57
  • YUKA
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