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誓約の地/漂流編・134<生誕(1)>


お久しぶりです。YUKAです。
大変更新が遅くなりました。誓約の地・漂流編も残すところあと数話。
まだ書き終わっておりませんが、既に更新を止めてから1月が経とうとしています。
そろそろお話を進めていきたいと思っていますので、本日よりUPさせて頂きます。

そして暫くの間、誓約の地更新を金曜日の22時とさせて頂きます。
かなり間が開きましたが、よろしければ最後までお付合いくださいますよう、心からお願いいたします。
よろしくお願いします^^



飾り33


誓約の地/漂流編・134<生誕(1)>


コウジへの断罪、そして彼の懺悔。
優奈が語ったあの一日から、早くも2カ月が経とうとしていた。
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 コウジは謝罪と懺悔の後、優奈の言葉通りみんなと共に過ごしていた。

 暫くは全員の反応も鈍く彼への対応を戸惑っているようにも見えたが、日が経つにつれて徐々に落ち着きをみせはじめている。

 今ではそれぞれがコウジに声をかけることも増えた。コウジ自身は依然口数は少なく笑顔を見せることもまだ少なかったが、それでも今まで通り作業をこなしていく。

 この間の一番の変化といえば、コウジが夜の海での見張り番を全てかって出た事かもしれない。

 優奈とヒョヌはあれからも同室で生活を続けているが、当初優奈とヒョヌは同室解消を考えていた。しかしそれを杏子と当のコウジが反対したのだ。

 特にコウジは「2人が変わる必要はない」と言って、毎晩夜の見張りに出ると自ら志願した。

 毎日の夜の海の見張り――それは救助のために通りかかる船を見つけた際、積み上げた薪を燃やしてSOSを出すためのもの。夕食後から朝方全員が起き出すまで続く見張りは教会側が男女ひと組で、海側が男性2人ひと組とすることに決めていた。

 教会側は夜警と防犯を兼ねた見張りであったが、教会側ならば何かあってもすぐに寝ている全員が駆け付けられるという判断で、女性陣が海の見張りの担当をすることは当初からない。

 もちろん担当した人はその後交代して休むことはできるが、毎日見張りを担当するということは、夜にベッドで寝ることが無いということになる。

 杏子が教会発見当時、「ベッドで寝れるのはいいこと」と判じていたように、この生活でゆっくり身体を休めることは必要不可欠なことだ。

 それでなくても日が昇れば暑さの厳しい島では、日中に熟睡することは難しい。人はどんなに無理しても夜行性にはなりきれない。必ずその無理は身体に、心に現れる。


 それが毎日では堪えるのではないか――はじめ、佐伯は医師として難色を示した。

 しかし諦めと反省と後悔を心に刻んでいたとしても、教会での寝起きはまだ苦しいはずだと修平が佐伯を説得して、カズヤもそれに同意する。

 それを受けて佐伯もコウジと話し合い、週に一日は夜に部屋で休むこと、2人1組になる相手は修平とカズヤと佐伯の3人で担当すること、「暫くの間様子を見るだけ」ということを条件に受け入れた。

 そして同時に部屋割も少し変更し、コウジと修平が同室となった。

 優奈の語りで全員が落ち着きを取り戻してはいたが、その心中はまだ個人差がある。同室になる者の、そしてコウジの心理的なプレッシャーを少しでも軽減するために考えた人選だった。

 修平は優奈とヒョヌに相談し、教会と海の見張りのシフトを組み換えて佐伯に提示した後で全員と話し合う。憤りがあるとはいえ、コウジの生活は必然的に優奈も絡んでくるのだ。

 優奈とヒョヌが過ごすその傍での生活は、コウジを追い詰めるだけ――それだけは避けたいというのが共通する素直な心情だった。

 それぞれの想いを胸に、誰もが優奈とコウジの心情を尊重して異論は出ずに話しあいは決着する。

 その決定に深々と頭を下げたコウジを、全員が見守っていた。




 島は今日も快晴。

 全員が早朝から一日の労働を終え、昼食後の時間を思い思いに過ごしていた。

 海から運ばれる潮風は木々をすり抜ける間にその熱気を手放し、森の中心へと吹き抜けていく。

 揺れる草木のこすれ合う音に混じって、時折コーコーと低く響くような鳥の鳴き声が聞こえている。

 優奈は教会の住居区最奥にある医務室のドアを開けると声をかけた。

「杏子を見ませんでした?」

 声をかけた先に、キャシーとミラがいる。

 2人は執務用の大きなデスクを挟むように向かい合い、書きかけていたものから視線を外して振り返った。

「自分の部屋にいるんじゃない?」

「急用?」

「いいえ」

「……大丈夫?」

 キャシーが発するいつもの問いに、優奈は頷いて頬笑みを返していく。


「探したわよ」

 その声で振り向くと杏子が入口に立っていた。

「それ、私のセリフ」

 優奈が苦笑すると、杏子は笑いながら執務用のテーブルまで近づいて「何してるの?」と声をかけた。

 「カレンダーよ」

 得意げに笑ったミラは遭難当時から欠かさず一日をカウントしていた。

 遭難した日時も、その後どのくらい時間が経過して目覚めたのかも定かではなかったが、全員の記憶とカウントし続けた日数を頼りに、教会に移動して暫くするとカレンダーを作ろうと決心したのだ。

 この島で日付の意味が特にあるわけではない。

 しかし大まかでも日付が分かれば、季節感のないこの島での生活でもメリハリが付けられる。特にクリスチャンであるミラとキャシーは、それにまつわる祝祭日を知りたかったのだ。

 そしてここにきてようやく納得のいくカレンダーが出来上がった。

 綺麗に並べられたアラビア数字を見ながら、優奈と杏子がある日付にふと笑みを消した。

「どうしたの?」

 キャシーの声で我にかえった優奈は、別にと微笑んで首を振った。

「優奈、着替えは?」

 唐突な問いかけに優奈がきょとんとして振り返ると、杏子は呆れた顔で肩をすくめる。

「温泉、行くんでしょう?」

「あ、うん。とってくるね」

 そう言ってほほ笑むと足音を立てて部屋を後にした。

「温泉に行く約束をしてたのね?」

「まぁね」

 優奈の姿を見送った杏子は、またカレンダーへと視線を移す。

「……何かあるの?」

 杏子はミラの声に薄く笑って少し考えた後、ある日付に綺麗な指を落とした。






     
     ***







「あぁ~~やっぱりいいわね、温泉は。極楽極楽」

 ふぅとため息をつくように零れた杏子の言葉に、優奈が隣でくすくすと笑っている。

 泉のほとり――。

 大きな岩に囲まれたその一角で、優奈と杏子は温泉につかっていた。

 その奥にはゆらゆらと陽炎のように立ちのぼる源泉がある。その脇には泉の水源を保つ小さな滝があって、積み上げられた岩の間を縫うように綺麗な水が音を立てて流れ落ちていく。

 その滝のおかげか、泉の気温は森の中でも少し低い。午後の日差しが木々に遮られ、その木漏れ日が水面でキラキラと踊っていた。

 教会に移動して暫くすると、マーク主導でこの一角が整えられた。

 浅瀬に湧き出る温泉からあがるたびに、滴る水滴でぬかるんでいた着替えの足場も今は岩や廃材で整備されている。

 お陰で「綺麗に整った露天風呂」とまではいかないが、「かなり整えられた秘境の温泉」という様相を呈していた。

 2人は暫く黙って温泉につかっていた。それは嫌な沈黙ではなかった。

 景色に溶け込むように自然の音へ耳を傾ける。緑に染まる森の木々を眺め、水に浮かぶ光を掬いあげるようにして身体にかけていく。

「杏子、大丈夫?」

 優奈がそっと杏子に声をかけた。

「何が?」

「ちゃんと寝てる?」

 ちらりと盗み見た杏子の目の下にうっすらと隈ができているのを、優奈は随分前から気付いていた。

 理由はわかっている。だからこそ言葉を飲み込んで躊躇っていた。

 杏子は大きく息を吐くと、両手ですくったお湯で顔を濡らしていく。

「それ、私のセリフよ」

 視線を森に向けたまま苦笑する杏子に、優奈も静かに笑って応える。

「私の目はごまかせないわよ」

「何が?」

「大丈夫……じゃ、ないわね」

 ため息交じりの杏子の呟きに、優奈はあらためて杏子を見た。

「私はちゃんと寝てるわよ」

 片手でお湯を掬いあげ、肩に首にとかけながら優奈は微笑んでいる。

 杏子はそんな優奈の顔を暫く見つめていた。

「優奈」

「なぁに?」

「あれからヒョヌさんと寝てないでしょ」

 優奈の手が一瞬止まった。

「ちょっと。何言ってるのよ」

 苦笑しながらあわてて抗議する優奈に、杏子は少し首を傾げた。

 その顔から笑みは消えている。



「怖いの?」

 杏子の一言に、優奈の笑みも消えた。












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Comment

こんにちはでっすYUKAさんヽ(=´▽`=)ノ
誓約の地、更新キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

コウジもだんだん自分を取り戻し始めているのだと思いたいです。
もともと、強い人間ではないと感じていた彼ですので、自分の過ちの重さに潰れてしまわないか‥・・とも思いましたが、優奈さんやヒョヌさん、修平さんたちのフォローでなんとか本来の彼らしさをとりもどせたらなと・・・思ったりしています^^
何度もコメで書きましたが、やっぱりコウジの「弱さ・闇・負」の面はどうしても抗いがたい人間の一部なんだと思っちゃうので・・・
あっけっしてコウジの過ちを推奨しているわけではないのですが。
ここから彼がどう変わってゆくか、それをYUKAさんがどう描くのか気になっていたもので~(*ノェノ)!!

優奈さんと杏子さんの混浴!!wシーンはサービスですねっ☆
この二人の間の沈黙が、嫌な沈黙じゃない・・・って、凄くよくわかるというか・・・好きな描写です!
心許したした間柄だと、沈黙も穏やかで心地良というか・・・!

優奈さんとヒョヌさんの関係が変わることはないと思いますが・・・ヒョヌさんはまだ、優奈さんのことを気遣っていそうですね。
難しい問題ですが、二人一緒なら乗り越えていけると信じて続きを楽しみに待っていますです^^
なによしさん
なによしさん、おはようございます!!
コメントありがとうございます(*´∇`*)

早速読んで頂き、コメントまで本当に嬉しいです!なによしさんの優しさに涙が(*/□\*) '゜゚゚・。 ウワァーン!!
俄然、やる気になりました(笑)

コウジ。そうですね。とり憑かれたように思いつめていた彼も、徐々に落ち着きを取り戻しています。ここはひとえに修平の尽力のおかげでもあるのですが、その辺のお話もいづれ書けたらな~と思っています^^

やはりね、このまま彼だけを悪者のようにして終わりたくないというか、彼がやったことはもちろん悪くて、それは色々な意味で認めることはできないのですが、罪を認め反省を促し、それを受け入れて再生と更生を誓って進んでいるなら、やはりそれも形に出してあげたいなと思うのです。
誰でも間違いは起こすし、取り返しがつかないこともありますが、彼らはまだ精一杯生きていますので、いつか――という日はあってもいいのだと思うのです。

ただ謝るとか、許すという言葉を与えるとかだけではなく、彼が少しずつ変わってまた自分を取り戻すようなお話がかけないかな?と。今はまだ無理ですが、それでも何かないかなぁと思っていますよ^^
番外編辺りでね~~~♪

優奈と杏子の入浴シーン(笑)言われて気付きました――(笑)
そうか、そうですね!
さすが絵師様、脳内変換もできますでしょうか^m^絵が描ければかなりのサービスショットになるんですが(笑)皆さんの想像力で補って頂きたい(THE・他力本願)

>二人の間の沈黙が、嫌な沈黙じゃない

そうなんです!無理して語らなくても間がもつのは、心を許した仲だからですね^^
その辺を汲み取って好きだといって頂けて凄く嬉しいです!
優奈もヒョヌもまだ少し囚われていて、そのキッカケが掴めずにいて、そのことに気付けなかった杏子もまた彼女自身の想いに囚われているんです。この辺は……実は追憶編への布石にもなっているのですが、この先このお話と、もう一つ話を組み込んで漂流編を区切りたいと思います。
やっとここまで来た~~~って感じです^^番外編も一つ挟みこみますが(笑)
あと数話で、第1章完結。お付合い頂けると嬉しいです!!^^


  • 2013/06/29 09:49
  • YUKA
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  • Edit
待ってました!

こうして続きが読めると嬉しいですね~。あれからどうなったかとやきもきしていたもので。

コウジくんも立ち直って受け入れられたようで、ほっとしました。

次の更新が楽しみです!
祝! 連載再開
こんにちは。

やっぱり、ご本家に逢えると嬉しいですね。
あ、番外編ももちろんYUKAさんの手によるものだから、本物なんですけれど、そこからもだいぶ間が空きましたので、早く戻ってこないかな〜と思っておりました。

そして戻って早々、杏子姐さんがしっかりと眼を光らせていますね。

コウジがただの悪役ではないとしても、あんなことがあったのに、同じ狭い空間の中で一緒にやっていかなくてはならない閉塞感ってただ事じゃないと思うんですよね。当の優奈はもちろん、第三者にしてもこういう状況(遭難で逃げ場なし)でなかったら、わざわざ関わりたくないと思うのですよ。それをしなくてはならない状況が大変だなあと。本人も周りのその目があって、本人としての贖罪と立ち直りの意味もあって、夜にヒョヌと優奈が一緒に寝ている建物から離れる決断をしたんでしょうが……。

優奈って、自分の事よりもすぐに人の事を優先してしまう、分け隔てなく誰に対しても優しい。それは彼女の美点なのですが、彼女の場合はちょっと極端なので、それが彼女の人生に重荷にならないか、せっかくのヒョヌとの恋愛にも影を落とさないか、杏子姐さんがしっかり見張っているんだなあ。

次回も楽しみにしています。

(あ、すみません。コラボをした方のおうちのキャラは「敬意を込めて呼び捨て」ルールを適用させていただいております)
  • 2013/06/29 19:41
  • 八少女 夕
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  • Edit
ポール・ブリッツさん

ポール・ブリッツさん、こんばんは~^^
コメントありがとうございます!!

わぁ!ありがとうございます。
長い間おろそかにしてしまって、杏子にも怒られそうです(笑)
もうすでに「追憶編」が書きたくて仕方ないのですが^^;;
あと数話、頑張ってみたいと思います。

コウジは少し回復。
私は彼をこれ以上追い詰めるのは違うなぁと思っています。
まだまだ今までのようにってわけにはいきませんが、少しづつ何かを取り戻して行けたらな思います。
それは劇的な出来事ではなく、やっぱり少しづつだと思うんです。

暫くしたら、彼のその後も書いてみたいなと思います^^

  • 2013/07/01 19:59
  • YUKA
  • URL
  • Edit
八少女 夕さん
八少女 夕さん、こんばんは~^^
コメントありがとうございます!!
そして、嬉しいといって頂けて私が嬉しいです!^^
エチュードがあったので何となくごまかされてましたが(笑)そう言えば、本編は相当前ですね@@自分でもビックリです。あり得ないです。いくらマイペースとはいえ、読んでくださった方々に申し訳ないです^^;;

杏子姐さん、相変わらずです(笑)
ただコウジの一件があってから、杏子姐さんも少し様子が。。。

コウジの一件が落ち着くには、少し時間がかかるだろうと思い、本編でも2カ月ほどの時間経過が流れていますが、実際の掲載はその倍ぐらい開いてしまいました^^;;

優奈は自分のことより人のことを優先する人ですね。
それはもう、ちょっとおかしいと思うほどですが、彼女のその人のために尽くす感情って、本当に強さなのかな?とも思っています。
私はあえて優奈の心情を描くことをしてきていないのですが、この先の「追憶編」ではそうもいかないです(笑)杏子の過去、優奈の過去、2人の過去と想いをかけたらなと思っています。
で、出来るのか???
今はまだ下調べの段階で、それでももう根をあげそうなほどなんですが(笑)

ヒョヌと優奈の恋愛模様。。。
ここはね、こういうことがあった後はやはり避けて通れないと思うのです。子供じゃないので、それでどうこうということはないと思うのですが、コウジの件とは別にして、同じように過ごすには2人なりの、2人だけのキッカケがいる気がしています。

>それが彼女の人生に重荷にならないか、せっかくのヒョヌとの恋愛にも影を落とさないか


おお!そうですよね!
それは優奈の美徳ですが、その美徳が通じない人もいると思うのです。特に社会に出れば。
ヒョヌと付き合うことで、今までとは違う人とのかかわり方、人との出会いがある気がしています。

優奈にもヒョヌにも、戻ってからの方が大変な気もしますが(笑)
それはまた少し先の話で^^

次回からは金曜日更新にしました^^お返事が週末の方が書きやすいので^^
私の身勝手ではありますが、また読んで頂けたら嬉しいです!!^^

  • 2013/07/01 20:15
  • YUKA
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