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誓約の地/漂流編・45<決意(4)>




優奈の恋愛に異常に執着する、彼女の親友杏子。

ヒョヌは自分の想いを打ち明けていく――





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「もしも……」

「ん?」

「もしも、あの子が、あなたから離れたいって、言った時は?」

「…………」

「――どう?」

「それは、本心で?」

「さぁ、どうかしら?」

「――僕のことが嫌になったなら、しかたないと思う。でも……」

「でも?」

「何か別の理由で別れるようなことは、ない」

「言い切るの?」

「言い切るよ」

「そう」

 杏子は焚火に視線を移した。

 2度と同じ形を作ることのない、その炎の揺らぎをただじっと見つめている。


 彼からすれば好きな女の親しい友人、優奈を心配する、おせっかいで勝ち気な友達。

 まだ、その認識以上ではないはずなのに、自分に向かって対等に心を開こうとしてくれる。

 優奈を受けとめたのときっと同じように、自分を受け入れ、受け入れてほしいと願っている。

 同じように、優奈を大切に思っている。

 彼女を守りたいと思っている。

 だから認めてほしい――彼の真摯な思いが伝わってくる気がした。


 不意に黙ってしまった杏子を見つめながら、ヒョヌは呟くように切りだした。

「――他の女を選ぶことはないの? とか、聞かないの? 今回みたいにって」

「それは、ないわね」

「言い切るの?」

「ええ。言い切るわよ」

 そう言って、杏子は夜空を見上げて微笑んだ。

 焚火の炎に照らされた横顔は、思わず魅入られそうになるほど美しい。

 口の端に笑みをたたえながら、杏子はヒョヌへ視線を送る。

「それに――」

「ん?」

「そう言われたり、思われたりしたくないから、悩んでいたんでしょう?」

「――まぁ、ね」

「だったら、自分で言うものじゃないわ」

 何を言ってるのかしらと、呆れるように肩をすくめて笑っている杏子を見ながら、ヒョヌはそうだねと苦笑する。


 杏子は空を見上げた。

 彼は、優奈の愛している彼は、杏子の思っていた以上にいい男だった。

 上出来――、だと思った。

 今まで優奈の周りにいたどんな男よりも、そして杏子の出会ったどんな男よりも。


 自分の中で、何かがそう言っている気がした。

 それが、自分のことのように嬉しかった。



「遭難して、初めてよかったって思った」

 力を抜いてふわりと笑う。

 それは、ひとり言のような呟きだった。

「もうひとつだけ、聞いていい?」

「どうぞ」

「いつから、優奈を好きだった?」

「……いつ、かな?」

「…………」

「たぶんあの時だ。この島に漂着して、優奈に助けられて、初めて彼女を見た時」

 それを聞いて杏子は艶やかに微笑んだ。思ったとおりだった。

「僕も、ひとつ聞いてもいいかな?」

「なぜ、ヒョヌさんは優奈マジックにかからないか?」

「さすが」

「優奈マジックにかかる男の人は、優奈の気持ちを勘違いする人達のこと。優奈の気持ちはあなたにあるんだから、あなたのは勘違いじゃないでしょう?」

「なるほど。杏子ちゃんは全てお見通しなんだね」

 そう言ってため息をつき、大げさに項垂れるヒョヌに、杏子は笑いながら話しかけた。

「ヒョヌさん、話してくれてありがとう」

「いや、聞いてくれて、ありがとう」


 杏子は満足していた。

 間違って絡んでしまった糸。

 解くキッカケを作ろうと思っていたのに、自分の予想より早く2人が動き始めた。

 しかもあの優奈が――

 まるで恋愛をあえて避けるようにして、仕事に夢中になっていたあの子が、また人を好きになった。

 そして杏子が、彼ならと思うことが出来る。


 安堵感と充実感で久しぶりに泣けてきた。

 人を好きになるのに理屈はいらない。

 でもこんな状況でなければ、優奈がこんな風に恋に落ちることも無かったかもしれない。



 例えば仕事を通じて会ったとしたら、こんなに親しくなっただろうか?

 この島に遭難して出会ったのは、偶然だったのだろうか? 



 そんなことを考えていた。


















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Comment

ここまで 拝読しました

いいですね

ボクも恋愛小説を書こうかな?

いつもみたいに

どろどろじゃない  甘いやつでも(笑い
  • 2011/10/19 05:14
  • いちごはニガテ
  • URL
おはようございます、チョコです^^
続きが気になって朝一から読んでしまいました!
今日は30話まで、キリが良い所で止めました。

取り合えず修平が出て来てないのでほっとしてます(笑)
ごめんなさい、どーしても今は好きになれない修平....

このまま平穏を保って欲しいと願いつつも
30話まで読んで「遭難」している事に改めて気付いた私でした。
もう遭難そっちのけで優奈xヒョヌ が早く幸せに!!って気持ちが強かったので^^;
でも教会で見付けた日記...
あの存在が一気に彼女達が置かれている現実に気付かされました。
日記に書かれている内容も何やら意味深です。
怖いとも感じました。だって4年も遭難だなんて...
杏子姐さんにも認めてもらえたから
あとは無事に救助されて皆で幸せになるだけ!!
きっとそこに辿り着くまで
乗り越えなきゃいけない試練だらけなんだろうけど...

どーなるんでしょう?
どんなお話になって行くのでしょう?
そんな風に思えるお話を書けるなんて
YUKAさんって凄いな><
いちごはニガテさん、 こんばんは^^

> ボクも恋愛小説を書こうかな?

いつもありがとうございます^^
いいですね~~読みに行きますよ^^b


> いつもみたいに
> どろどろじゃない 甘いやつでも(笑い

私はどろどろも好きですけども^^
  • 2011/10/19 16:54
  • YUKA
  • URL
チョコさん、こんばんは^^
> おはようございます、チョコです^^
> 続きが気になって朝一から読んでしまいました!
> 今日は30話まで、キリが良い所で止めました。

おお!もう追いつきますね^^
いつも読んでくださってありがとうございます^^


> 取り合えず修平が出て来てないのでほっとしてます(笑)
> ごめんなさい、どーしても今は好きになれない修平....

あははははは。わかります。今彼は……見失ってるから(杏子談)


> このまま平穏を保って欲しいと願いつつも
> 30話まで読んで「遭難」している事に改めて気付いた私でした。
> もう遭難そっちのけで優奈xヒョヌ が早く幸せに!!って気持ちが強かったので^^;

私も。。。
この人達が結構のんきに遭難している気がして
時々忘れそうです(苦笑)

> でも教会で見付けた日記...

あの、とんでもなく飛躍した会話の数々は
こんな状況なら、色んな事考えるよなぁ~~という。
これが伏線かは……色々内緒です^^


私からすると、あんなに魅力的なイラストを描けてしまう
チョコさんの方が凄いです!!!

最後まで楽しんで頂けるように頑張ります*^^*

  • 2011/10/19 17:01
  • YUKA
  • URL
わたしも恋愛小説の小品を書くことにしました。

ちょうど相互さんから挑戦を受けたばかりだし(挑戦じゃないって(^^;))

プロットを作って登場人物を動かしてみて、なんとか形にはしましたので近日UPします。問題は、恋愛小説になっているかどうかですが……(^^;)
ポール・ブリッツ さん
ポール・ブリッツ さん、こんばんは^^
おお!恋愛小説~~♪読ませて頂きますよ^^
ポール・ブリッツ さんなら大丈夫でしょう♪
私なんて、カテゴリーが恋愛小説なのに
あんまり甘くなかったりしてますよ^^;;;
  • 2011/10/29 17:34
  • YUKA
  • URL
今日はきりのいい30話まで読みました。
ヒョヌくんの誠実さがたっぷり感じられて、
私が心満たされました~。
優奈ちゃんには悪いな(°▽°)

それと……
ヒョヌくん意外と情熱的!?
キスシーンにドキドキしまくり!!

どうやったらYUKAさんのように書けますか?
自分の実力のなさにガッカリです(T^T)
滝元 真那 さん
滝元 真那さん、こんばんは^^
読んでくださってありがとうございます^^
本当ですか?ヒョヌ、喜びます^^
なんせ作者に、ヘタレだの嫉妬深いだの言われてるので(笑)
キスシーン。。。
そんな風に言って頂けて嬉しいです*^^*
つねづね、私の小説は甘甘が少ないなぁ~~と思っているので^^;;;
恋愛小説のくせにね~(笑)
滝元 真那さんの素敵な作品群の足元には及びません。。。
  • 2011/11/03 01:17
  • YUKA
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