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誓約の地/漂流編・123<懺悔(9)>



誓約の地/漂流編・123<懺悔(9)>




緩やかな風の流れる昼下がり

優奈の元にエリとリョウコ、カズヤが訪れた。



カズヤの想いを受けて 優奈は決意する――



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 窓の外を眺めるようにして、優奈は相変わらずベッドに横たわっていた。

 ずっと寝ていたせいで少しふらつくことがあっても、起き上がることに問題はない。

 しかし主治医だと豪語する杏子の命令で、まだ暫くは安静にしていろと言われているのだ。

 食事も医務室代わりの部屋で杏子と共に取っていた。



 コウジはずっと、礼拝堂の隅で常に数人の監視下に置かれている。

 空き部屋の1つに閉じ込めることも考えられたが、他のメンバー、特に女性陣の寝る部屋の近くにコウジを囲うのは好ましくないだろうという判断だった。

 みんなに逢いたいという優奈の言葉を受けて、全員が毎日代わる代わる顔を出す。

 それでも男性陣だけで部屋に入ることを、杏子は許さなかった。ヒョヌは例外として、修平でさえも必ず杏子が付きそっている。

 今はエリとリョウコが森で採った果物を持って優奈の元を訪れていた。

「美味しいね。ありがとう」

 優奈が声をかけると、エリとリョウコが嬉しそうに笑った。

「あの――優奈さん」

 エリが遠慮がちに声をかける。

「なに?」

「実は窓の外に、カズくんが――」

 エリの言葉を聞いて、優奈は窓から外を覗いた。

 キョロキョロと辺りを見渡すと、「ここ」と下から声が聞こえる。

「何してるの?」

 驚いて思わず声をかけた。

 カズヤは医務室の窓下に胡坐をかいて座り込んでいる。

「お見舞いに――」

 見上げたカズヤが頭を掻きながら答えると、優奈はくすりと笑った。

「そんな所にいないで、エリちゃんと入ってくればいいのに」

「いや、杏子さんから入室厳禁の厳命がくだってるんですよ」

 俺だけ――そう言って苦笑するカズヤに、優奈は「きっと冗談だよ」と言って笑った。

 それでもカズヤは「ここで平気っす」と言って立ち上がると、ズボンに着いた土や葉を払いながら建物の壁に寄りかかった。

「少し顔色が良くなって、良かった」

 カズヤがそう言って笑うと、優奈も小さく笑った。

「心配かけて、ごめんね」

 そう言った優奈の顔を、カズヤは暫く見つめていた。

 カズヤの眼が少し哀しそうで、そして苦しそうで、らしくないと優奈は訝しく思った。

「どうしたの?」

「優奈さん……ごめん」

「なんでカズヤくんが謝るの?」

 その言葉に、カズヤは少し俯いた。

「あいつが優奈さんを好きな事、ずっと知ってた」

 風の音に消えてしまいそうなカズヤの声。

 暫く続いた沈黙の後、カズヤが口を開く。

「俺、たかを括ってたんだ」

 苦しそうなカズヤの呟きを、優奈は静かに聞いていた。

「コウジと俺は同じ大学の先輩後輩で、職場も一緒だった。良くつるんでたし、俺は……あいつの友達だった。そう、思ってた。俺が知ってるあいつは気が小さいけど凄くまじめで……いい奴だと思ってたんだ。こんなことをするなんて思ってなかったっていうか――出来るわけないって、はなから予想もしなかった。優奈さんの傍にはいつもヒョヌさんがいる。修平さんだって敵わなかったのに、お前じゃ無理だってどこかで思ってて。だから優奈さんを好きになっても諦めるしかないって思ってた。段々思いつめている風になっていくあいつを見ても、仕方ないって、いつか諦めるだろうって」

 だから、ごめん――

 森を眺めながらそう告げるカズヤに、優奈は小さく首を振った。

「俺、浮かれてたんだと思う」

 そう言ってカズヤは空を見上げた。

「エリと付き合って、ここの生活も案外悪くないかもしれないなんて考えてた。意外と過ごしやすいし、南の島だと思えばけっこう贅沢なんじゃないかって。いつかは救助が来るだろうって呑気に考えてて、それまでは少しでも楽しんでなきゃやってられないななんて思ったりしてさ。だからあいつが悩んでても、諦めろよ、忘れろよってどこかで簡単に考えてて……」

 カズヤはわざとおどけて話すいつもの口調ではなかった。

 一つ一つ確かめるように言葉を紡いでいる。

 時折吹く風に髪が揺れ、優奈は顔にかかる毛先をゆっくりと指でよけながら、どこか淋しそうなカズヤの声をただ黙って聞いていた。

「もっと気をつけるべきだったと思う。そうすれば優奈さんもヒョヌさんもこんなに苦しまなかったのに。二人は俺らのこといつも気にかけて助けてくれてたのに、俺は自分のことばっか考えてて……本当にごめん」

 何度もごめんと謝るカズヤに、優奈は小さく微笑んでいた。

「カズヤくんは、優しいね」

 驚いたカズヤが振り向くと、窓枠に肘をかけ、頬杖をついた優奈がカズヤを見ている。

――この人は、どうしていつもこんな風に笑えるんだろう。

 そう思いながら「そんなことないよ」とぎこちなく笑い返す。

「あ! あのさ。別にあいつを庇っているわけじゃないから! 優奈さんにしたことを許せないって思うのは同じだからさ。だから――何でも言ってほしい」

 真剣な眼で優奈を見るカズヤに、優奈も頬笑みを止める。

「何でも?」

「そう。俺ができることなら何でもする。みんなとも話してきたんだ。もし優奈さんがあいつを見るだけで辛いなら、あいつを見なくてもすむ方法を考えるし。みんなもそのために色々考えてくれてるから。優奈さんが前みたいに笑って過ごせるように全員で協力するって、約束してくれた。エリもリョウコちゃんも、そうだろ?」

 声を張って部屋にいる2人に問いかける。

 優奈が振り返ると、エリとリョウコが頷いた。

「……そう。ありがとう」

「あいつは罰を受けるべきだって、思ってるから――」

 カズヤがその次の言葉を告げようと口を開けた瞬間、叩きつけるような鈍い音が響いた。

「な、何?」

 リョウコがビックリして椅子から腰を浮かせる。

 音は礼拝堂の方から聞こえた。

 驚いて硬直する優奈を見たカズヤは、壁から体をひき剥がす。

「俺がちょっと見てくる。心配しないで、部屋に入ってて!」

 そう言い残して、カズヤは走りだした。


















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Comment

こんばんはっ(*´∀`*)ノ
遅ればせながらようやくじっくり読んで、コメントに参りました~~~っヽ(=´▽`=)ノ☆

カズヤさん、優しいですね(´Д⊂
普段とぼけているように見えるけれども、心根が暖かく優しくて・・・
カズヤさんのせいではないのですが、コウジと一番近い関係にあったのは自分だったということで、ずうっと自分を責めるような悩みを抱えちゃってたのでしょうか><

また、

>エリと付き合って、ここの生活も案外悪くないかもしれないなんて考えてた。意外と過ごしやすいし、南の島だと思えばけっこう贅沢なんじゃないかって

ここの部分から、カズヤさんのポジティブシンキングっぷりや良いエネルギーに満ちた人なんだなあ~と、明るさの中に「強さ」を感じました!
私はどうしても、同じ状況ではカズヤさんみたいに考えられないから。。。><;
この現状を嘆くばかりでなく、プラスへ向かおうとする力や思考は、優奈さんに似ていますね^^♪
杏子さんやヒョヌさん、修平さんも勿論プラスの力を持っているのですが、それぞれ拠り所にする愛する人がいるというのもすっごく大きいのでは・・・なんて^^//
カズヤさんにはエリちゃんがいるし、やっぱり追い詰められた状況で心を救うのは唯一無二の拠り所がないと、脆くなってしまうのでしょうね。

そっそして、ナニゴトΣヽ( ゚д゚)ノ (゚д゚)!?な急展開!
まさかコウジ、脱走・・・もっもしくはじさt(ry・・!?ハラハラ!
常に見張りを置いて囚人と看守のように生活するのも限界がありそう・・・な<懺悔>編、どういう結末になるのか、ドキドキしながら楽しみに待っていますです~~ヽ(=´▽`=)ノ☆
こんばんは〜(^^)
今回の訪問者は、エリとリョウコと、そして窓の外のカズヤ!(笑)カズヤの性格が良く出てるなーって思って、何だかカズヤが愛しくなってしまいました///

3人の訪問者ですが、特にカズヤに焦点が当たっている回のように思いました。以前のコメント返信にて、元々構想になかった流れですとのお言葉がありましたが、無人島にいらっしゃる様々な人々の、それこそ主要登場人物じゃない他の人々の息吹をすごく感じることが出来た回でした!

カズヤも、いろいろ考えていたのですね。そして、カズヤの言う事も、カズヤの気持ちも、すごく分かるなーって思ったんです> <やっぱり、理屈でコウジが思い詰めてるな、って理解出来てても、人間ってどこか自分の感覚を中心に物事を運ぶところがあるから、ついつい、敢えて苦言を呈さずに、それこそ、諦めろよって軽い感覚で考えてしまうんだと思ったんです> <カズヤは、本人も言及してましたが、エリと付き合っていたから、尚更その辺りのコウジの感覚にリアルに追いつけなかったのかもしれませんね> <

そしてほっとした矢先の、これは、ええ、ここで引きだなんて、YUKA先生たら読者泣かせ〜〜(笑)
でも、ただ事じゃない予感です・・・!!!
礼拝堂はコウジがいる部屋ですっ、一体、一体何が・・・!?
次話をお待ちしております・・・!!
なによしさん
なによしさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます♪

いえいえ~~~
私の方こそ、お返事がいつも押せ押せで申し訳ないくらいです。
とても楽しく、楽しみに読ませて頂いてます^^

カズヤ、優しいですよね^^
彼がコウジと仕事仲間、友人だったことは
以前<微熱10>で書いていたのですが、
カズヤはコウジをずっと仲のいい友達だと思っていたんですね。
カズヤはコウジの1っこ上の先輩。
コウジにとっても、カズヤは一番気軽に話せる相手だったんです。

そうそう。
カズヤのせいでは無いですよね。
コウジの過ちはコウジの心の問題であって、カズヤのせいでは無いんです。
ですが親しい人間の犯した罪は、自分が止められたのではないか
優奈を好きだったことを知っていたのに、何もしなかった――
そのことがカズヤの中に、悶々とした思いを生むきっかけになりました。

そして、優奈とヒョヌが同室になって新しい生活を始めるキッカケになったのも
カズヤの「相談」からだったのです。
憶えていますでしょうか?^^<特別3><特別4>の頃ですね^^
思い返せば、このことがキッカケでコウジはおかしくなっていきます。
現実を見せ付けられたという感じでしょうか。
一方で、カズヤはエリと上手くいっていて、少なからず浮かれていた。。。

彼はもともとお調子者で楽天家です^^
「ま、何とかなるか!」と、いつもどこかで思っているんですね~
だから、ここでの生活にも慣れて、生きてるし、遊び呆けてるし、彼女はいるし
「ま、いいか~」と思っていたわけです(笑)

苦しいことを考えてばかりいられない、彼の性格かもしれませんね^^
コウジにとってつらいことも、カズヤにとってはそれほどでもない。
その感覚のギャップが、今更ながら身に沁みています・

それも全て、少しでもみんながそう生活出来るようにと頑張っていた
優奈のおかげであることもちゃんとわかっているんですね。
しっかり者のエリちゃんもついてますし、みんなに意外と可愛がられているので(笑)

そうそう!
ポジティブなのは、優奈と似ています!!
そうなんですよ~~~
ここの人達は、優奈のそのポジティブさに救われ、感化されていると言えますね^^

そして裏設定(?)では、ケイタ・ツヨシ・カズヤ・コウジは
趣味であるスキューバダイビング仲間なんです^^
だから初めから仲がいいんです^^
これは、登場人物案内でしか、触れてなかったかもしれませんが^^;


>それぞれ拠り所にする愛する人がいるというのもすっごく大きいのでは・・・

まさに、そうなのだと思います^^
やはり好きな人がいる、その人が自分を想ってくれているというのは
支えになり、大きな力にもなるのだと思います。

そして、ラスト^^
これは……一大事です!(ぇ?
そろそろ本題に入らないとですからね~♪
礼拝堂で何が起こっているのか――起こしているのはもちろん彼。
そっちの彼じゃ無くて、あっちの彼です(なんのこっちゃ^^;;)
次回から、とうとうこの章も佳境に突入です!
まだまとまってもいなくて、日曜が怖くもありますが(笑)
また遊びに来て頂けると嬉しいです♪(*´∇`*)

  • 2012/12/06 23:13
  • YUKA
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canariaさん
canariaさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます♪

窓の下のカズヤ(笑)
以前、部屋で騒いで杏子に怒られたので(笑)
入室禁止令を出されてしまったカズヤくんです(笑)
それを律儀に守る彼もまた、可愛いですけどね~~(。・w・。 )

優奈はそれを「杏子の冗談」だと言っていますが。
杏子は半分冗談、半分本気で言っています^^;
カズヤはコウジに一番近かった人物だから。
当然それを優奈も知っていて、だからこそ杏子はまだ少し距離をおくようにと思っています。
そしてそれをカズヤも感じているんです。
それは誰よりも自分がそう思っているから、ですね。

canariaさんの言う通り、今回はカズヤにスポットが当たってます^^
いつも陽気でお調子者で、和ませ系の彼が思う気持ち。
カズヤはコウジの1こ上の先輩で、会社でも同じプロジェクトメンバーでした。
だからこそ同じ船で遭難するのです。
一緒に休暇を過ごそうとするほど、仲が良かったということでもあります。

そしてなによしさんにも書きましたが、ケイタ・ツヨシとはスキューバダイビング仲間。
彼らは他のメンバーより、コウジを知っています。
身内の中から罪を犯した人間を出してしまったような感覚とでも言いましょうか。
その中でもカズヤは、やはりかなりの責任を感じています。
優奈とヒョヌが同室になるきっかけも、カズヤの「相談ごと」からでしたし。

楽観的に考えていた彼は、実は小心者のコウジのすることに「タカをくくっていた」んです。
どうせこれ以上は~~とか、所詮~~とかいう感じですね。
こんな大それたことをしでかすとは、彼がこんなにも波紋を起こすとは
想像できなかったという方が良いかもしれません。
そうなって初めて、何がそうさせたのか――そんなことを彼なりに考えていたのだと。

>理屈でコウジが思い詰めてるな、って理解出来てても、人間ってどこか自分の感覚を中心に物事を運ぶところがあるから、ついつい、敢えて苦言を呈さずに、それこそ、諦めろよって軽い感覚で考えてしまうんだと思ったんです

まさにそうですよね。
無駄だろう? 諦めろよ~
カズヤはそんな心境だったと思います。
彼にとってこの島での生活は、大変だけれど苦しくもがく程では無かったですから。
その温度差みたいなものに気付けなかった、
コウジに対しても友達として、どこかで悪かったと思っています。
そして同時に、友達が起こしたことだからこそ
憤りも寂しさも感じてしまっています。

>エリと付き合っていたから、尚更その辺りのコウジの感覚にリアルに追いつけなかったのかもしれませんね


その通りですね!!
自分の感覚で、心のありようで、景色さえも違って見えるのが人間ですから。
そしてそれは、優奈自身にも当てはまります。

誰もがそんな風に考えて、だからこそコウジの気持ちだけが取り残されてしまったのだと。

当り前ですが、優奈と杏子、ヒョヌと修平が中心になって話が進んでいますが
その影ではコウジの想いのように、死角に入ってしまったものがあった――
視えてはいても、目を向けることはしなかったのです。
コウジにとってそれは、かなり過酷だったのではないかと思います><

コウジは決して独りでは無かったんです。
一人ではありましたが、独りでは無かった。
でも彼は優奈のことで、とても孤独を感じていたんです。
誰に行っても諦めろとしか、しかたないとしか言っては貰えない。
それでも思う通りにできない心を持て余して、自問自答が増えていきました。
そこには彼の性格もあるのですが、
暗い闇の淵で覗きこんでいるうちに、知らぬ間に堕ちてしまった感覚でしょうか。


そして~~~引き(笑)引きは惹きになってましたか?^^
そうです!
礼拝堂は、コウジが軟禁されている場所。
引き起こしたのは、まさに彼。
その彼では無く、あっちの彼(何だかわけがわかりませんが^^;;)

もうね~~~そろそろ、この<懺悔>の本題に入らないとですからね^^
ここに礼拝堂がある1つの意味というか、役割が明らかに。。。。なるのか?(←
1話完結風に書いてましたが、この先は非常に長いので(笑)
数回に分けてお届け。。。のはず。
年内に<懺悔>完結させたかったのに、それさえも怪しい雲行き~~~
全く出来上がっていませんけどね~~(笑)

色んな意味で、日曜更新を楽しみにしてください!(ぉぃ!



  • 2012/12/06 23:45
  • YUKA
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