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誓約の地/漂流編・110<迷走(8)>

本日はMNの137話<迷走(8)>の2/2再掲載です。


<迷走最終話>



*お願い*

またまた自己満足的に、だいぶ推敲・改訂してあります( ̄m ̄〃)
長くなったので、2話に分けました^^;;
(8)も今回と次回で掲載します。

コメントを頂けると非常に嬉しいですが、
なんせ再掲載なので(〃'∇'〃)ゝ
読んだよ~~のかわりに、拍手ボタンを押して頂けるのでも励みになります^^


ではでは、新掲載前に思い出して頂けると嬉しいです(笑)



新章<断罪>は、26日22時にUP予定です♪


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 ヒョヌは優奈を抱きかかえたまま、修平にさえ触れさせなかった。

 修平は優奈の発見を大声で叫びながら一足先に教会に駆け戻り、教会で待機していた杏子と佐伯に発見の状況と優奈の様子を伝える。


「低体温の危険があるな」

 佐伯は杏子にそう告げる。

「医務室は広すぎますね。治療の部屋を変えましょう」

 杏子はそう言うとキャシーに必要なものを伝え、優奈とヒョヌの部屋に入っていった。




「28.8℃」

 キャシーが体温計を読みあげると、杏子は一瞬目を閉じた。

 予想以上に危険だった。


 低温障害――

 身体の中核体温が、正常な生体活動の維持に必要な水準を下回ったときに生じる様々な症状。

 ヒトは直腸温が35℃以下に低下した場合に低体温症と診断される。

 優奈がどの程度の時間、川の水に浸かっていたのかはわからない。

 しかしいくら南の島であっても、長時間水に浸かっていれば低体温症は起こりえるのだ。


 症状は軽度・中度、重度に分けられ、一般に32~28℃は中程度。

 優奈の意識と血圧は低下し、序脈が現れ、手足も硬直しはじめていた。

 ここまでくると、急激に体の表面を暖めれば、末梢血管の拡張による血圧低下でショック状態に陥ることがある。

 そのため、みだりに暖めることもできない。

 保温での自己熱生産に頼るのはほとんど意味がなくなっていた。
 
 本来なら器具を使って、血液や体液を内から温める方法を取らなければならないのだ。

 即刻医療施設に搬送して、適切な処置を施さなければ命にかかわる――


 しかし設備がない。

 そのことを誰よりもわかっている佐伯と杏子は、暫く言葉が出なかった。

 だがそれも、時間にすれば一瞬のこと。

「……とにかく出来ることをしよう」

 佐伯は自分へ言い聞かせるように呟いた。

 その言葉に杏子も頷く。

 確かにそれしかなかった。

「輸液での加温や温水洗浄の設備はありません。どうやって体温をあげます?」

 指示を仰ぐキャシーの声も、心なしか震えた。

「――まず脇と鼠蹊部《そけいぶ》を温める」

 佐伯の声にキャシーが頷く。

「急いで髪も乾かします!」

 それを受けて、杏子は振り向きながら指示を飛ばした。

「エリ、リョウコ。瓶に熱湯を入れてきっちり蓋したものをタオルで巻いて、いくつか作ってちょうだい」

「瓶、ですか?」

「そう。簡易湯たんぽにしてリンパ腺を温めるの。早く!」

「はい!」

「部屋の温度も上げよう。極力窓を閉める。ろうそくの数を増やしてくれ」

「湯を張った鍋も置きましょう! マーク、大量にお湯を沸かして!」

「了解!」

「部屋の中で火は焚けないわ。修平、炭になったモノをアルミバケツに集めて持ってきてくれる?」

「わかった!」

 集まっていた全員が動き始めると、杏子はヒョヌに声をかけた。

「ヒョヌさんは外で待っていて」

 優奈の傍から離れないヒョヌに杏子が声をかける。

 ヒョヌは無言のまま振り返った。

「治療の邪魔だわ」

「でも――」

 立ち尽くすヒョヌの肩に手を置いて、杏子はゆっくり口を開いた。

「ヒョヌさんに出来ることは終わった。今度は、私の番」

「…………」

 杏子の言葉を受けて、ヒョヌは顔をあげた。

「治療をさせて」

 2人の視線が絡み合う。

 ヒョヌは苦しそうに口元を歪めたまま、小さく頷いた。

「……わかった」


 ヒョヌが部屋から出ていくと、杏子は優奈の傍でその身体を確認し始めた。

 全身にぶつけたような痣が広がり、擦り傷と切り傷がいたるところにある。

 触診で骨折はないようだが、設備がない上に優奈の意識がないので完全に確認する術がない。



 佐伯・杏子・キャシーは慎重に体温回復を図った。

 体内から体温を上昇させる治療は出来なかった。

 何と言っても設備がないのだ。

 リンパの保温に努め、室温をあげ、調整しながらゆっくり体温を上げる。




 あとは祈ることしかできなかった。











     ***











 陽が暮れはじめる頃、佐伯がそっと部屋から出てきた。

「優奈は?」

 部屋の前から動かずにいたヒョヌが佐伯に駆け寄る。

「とりあえず、体温はだいぶ回復した。でもまだ意識は戻ってない。杏子ちゃんがいるから、傍にいるだけなら入っていいよ」

 そう言われて、ヒョヌはドアを開けた。

 杏子が憔悴した顔をして、ただじっと優奈を見ている。

「まだ、意識は戻らない」

 杏子は独り言のように呟いた。

「……戻るかも、わからない」

 体温の戻った優奈の顔には少し赤みが戻っていたが、痛々しい傷がいくつもある。


「優奈……」


 眠るように眼を閉じている優奈の顔を見つめ、ヒョヌは静かに涙を流した。
















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