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誓約の地/漂流編・115<懺悔(1)>


誓約の地/漂流編・115<懺悔(1)>



咎負い、罪を背負ったもの

断罪し、罰を与えようとするもの


闇に包まれた かつての楽園に

光が戻り始める――







================================================




 杏子の断罪の後、一向に目覚めない優奈をそっと医務室のベッドに移した。



 その2日後――

 その日も抜けるような青空が広がっていた。

 風に木々がそよぎ、時折鳥の鳴き声が聞こえている。

 暑くなりそうな一日の始まりだった。





 伏せられた優奈の瞼が微かに揺れている。

 ベッドのそばに腰かけて優奈の様子を見守っていたヒョヌは、優奈の異変に気がついた。


「優奈……?」

「…………」

 ヒョヌは、うっすらと目を開けた優奈の顔を覗きこんだ。

「優奈、僕だ。ヒョヌだよ。わかる?」

 優奈の瞳に心配そうなヒョヌの顔が映る。

「……オッパ。あ、大丈夫? ケガ……怪我はない?」

 ヒョヌの腕を掴んで揺すりながら、優奈が問いかけた。

「大丈夫だよ」

 ヒョヌは自分の腕を掴んでいる手をそっと離しながら、いきなり起き上がろうとする優奈をなだめる。

「大丈夫」

「あのね……あ。あの……コウジ君が」


 どう伝えたらいいのか――

 切迫した顔をして言い淀む優奈に優しく微笑んで、ヒョヌは優奈の頬に触れた。

「わかってる。大丈夫だから、何も言わなくていい。 僕は怪我をしてないし、コウジは今、修平やケイタが見張ってる」

 そう言いながら、ヒョヌは泣きそうになった。

 声をかけたら震える気がして、黙ったまま優奈の手を握った。


 こんなにボロボロに傷ついて、一番つらかったのは優奈のはずだ。

 それなのに、痛いとか苦しいとか怖かったとか――自分のことは何も言わず、目覚めたばかりの第一声で自分を心配している。

 ただひたすら、それを心配してくれていたのだろう。

「気がついて良かった」

 ヒョヌは心からそう思った。

 大きく息を吸ってため息のように吐き出すヒョヌを見ながら、優奈は声をかけた。

「オッパ」

「何?」

「ごめんね」
 
 ヒョヌは優奈の顔をまじまじと見つめた。そしてその一言に苦笑する。

「……優奈は何も悪くないだろう?」

 笑っているヒョヌに少し安堵しながら、優奈はヒョヌの頬に触れた。

「……心配したって、顔に書いてある」

 じっと自分を見つめて微笑んでいる優奈の言葉に、ヒョヌはもう一度苦笑するしかなかった。

 それは――間違っていない。

「オッパ、怒ってる?」

「怒ってないよ」

 ヒョヌは呆れたように目を見張った。

 心が張り裂けそうになるほど心配したのは事実だが、怒るわけがない。

 優奈は何も悪くないのだ。

 いつものように力になろうと奔走し――裏切られた。

 欺かれ、陥れられた。

 その時の衝撃と恐怖と失望を想うと、ヒョヌの中にまた沸々と怒りがこみ上げてくる。

 怒っていいのは優奈の方だ。

 優奈が怒ることはあっても、優奈を怒る理由なんてない。



 自分が怒るとすればそれは――




「……コウジくんを怒ってる?」

 優奈の問いかけに、ヒョヌは真顔になった。

 ほんの少しではあったが、2人の間に沈黙が流れる。

 しかし不安そうな優奈の顔に気付き、ヒョヌは小さく微笑んだ。

「優奈は心配しなくていいから。ゆっくり休んで、早く元気になれ」

「……うん」

 そう声をかけても、優奈の顔は晴れなかった。

 これからのことを考えれば、不安になるのも心配するのも当然だろうとヒョヌは思っていた。

 頬にはだいぶ紅みが戻ってきたが、それでもまだ顔色は悪い。小さな切り傷もまだ癒えてはいない。

 身体にはこれ以上の傷があるだろう。

 この傷と同じ分だけ心にも傷を負ったはずだった。

 優奈の顔に刻まれた傷を見るたびに、自分の無力さに腹が立つ。



 でも、もう大丈夫。

 2度と、もう2度とこんなことはさせない。

 誰にも。どんな理由でも。

 あんな思いをするのはまっぴらだった。

 今度こそ、絶対に守ってみせる。




「何か欲しいものはある?」

 優奈の気分を変えようと、ヒョヌは声をかけた。

「……お水」

「わかった。今、冷たいのを持ってくる!」

 足早にドアを開けて部屋を出ていくヒョヌの後姿を、優奈は寂しげに見つめていた。
















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Comment

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  • 2012/09/30 22:49
二人ふぁけの淡々としたやり取り。部屋の空気をスパスパ緊張が逆に静けさを生み出していて。。。今後の喧騒をさらに厳しく予感させますね。。。週末は寝てばっかりでした。唯一髪を切りに行っただけw
YUKAさんは外で台風の雨風浴びなかったですか?こんな晩は早く寝ましょう(←まだ寝るw) HIZAKI
  • 2012/09/30 23:56
  • HIZAKI
  • URL
鍵コメNさん
鍵コメNさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます♪

読んで頂けて嬉しいです!!
おお!
冒頭文に反応して頂け手嬉し~~~い^^
冒頭文には私のその回の想いが入っていたりするので、そう言って頂けて嬉しいです^^

そうですね。
優奈はずっとヒョヌのことを心配していました。
うなされるほどに。
それを杏子が聞いたからこそ、コウジと優奈のやり取りも想像できたのですね。
そうなんです。
ヒョヌは今回の件で、怒りと共に後悔も抱えました。
2度と同じことは起こさない、起こさせない――

内緒話ですが。。。(白反転)


実はここ、伏線なんです^^
彼の決意はこの先ずっと彼の中に生き続けます。
それほどの衝撃だったのですね。
そのことがこの先の2人にどう影響するのか、見届けていってください^^


優奈は、杏子やヒョヌとは違う想いを抱えています。
ま、当事者ですしね。
この辺は優奈の性格によるものですが、彼女は2人のことをとても大事にしているので
彼らの気持ちを考えて苦悩します。

それでも優奈は優奈。
実はとても芯が強いので(杏子いわく頑固(笑))彼女は彼女なりに自分で考えていくでしょう^^

仕事はなんだか来週が佳境で^^;;
更新は楽しいので頑張ります^^
こうして反応して頂けると、疲れも飛びます(笑)


それから、新しいツール♪
コンセプトがとても好きで、私もずっと設置してます^^
これを設置すると、色々な方が来ますけどね^^;;
大丈夫ですよ~~^^
これを使う方というより、これが嫌いな方もいるということなんです^^;;

鍵コメさんの粗相なんて気にしませんから^^
たぶん、粗相なんて思わないと思います(笑)

ブロガ―同士の交流ツールとして
とてもいいと思っているので、楽しく活用してください^^

でも何かあったり困ったりしたら、いつでも相談してくださいね^^
わからないことも聞いてくださいね~~~^^
私も新米ですが、知っている範囲でいつでもお話を聞きますので!^^

ひとりで抱えないようにね!(笑)
  • 2012/10/01 00:17
  • YUKA
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HIZAKIさん
HIZAKIさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます♪

そうなんです。
この静かな2人の時間。
想いは通じあって、そしてまだすれ違っています。

優奈が目覚めたことでもうひと波乱です。
それはヒョヌにとって、少しキツイ事かもしれません。

お互いがお互いを思いやる、そしてそのせいで生まれるすれ違い。
男女の差はありますが、彼らは少し似ているんですね。

この先、見届けて頂けると嬉しいです^^

そして、今日は寝ていたんですね^^
明日からの英気を養ったということでいいと思います^^
髪を切って準備万端♪
少しお忙しそうですが、無理はしないでくださいね。


雨には濡れませんでしたが、凄い風で
髪型はぐっちゃぐちゃです(;´▽`A``

そうそう。
こういう日は早く寝ましょう♪
――って、もう日付が変わってますが(笑)

  • 2012/10/01 00:25
  • YUKA
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  • 2012/10/01 23:25
鍵コメGさん
鍵コメGさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます♪
お返事が大変遅くなりました^^;;


いえいえ、どんな手段でコメントを頂いてもかまいませんよ~^^
コメントを頂けることが有り難いので^^

そんなに喜んで頂けたなんて、私も本望です^^
そして、私の感謝が伝わりましたでしょうか?^^
もちろんです!
こちらこそ、よろしくお願いします^^


優奈、目覚めましたね。
一昔前の韓国ドラマのように、記憶喪失もチラッと脳裏をかすめましたが(笑)
いかん、いかん。
と、やめました~~(笑)

優奈の中には、ヒョヌヤ杏子と違う想いがありますね。
もちろん怖かったでしょうし、怒ってもいると思うのですが
彼女が感じているのは、哀しみに近いかもしれません。

何故こうなったのか。
人は怒りを外に向け発信する人と、内に向ける人がいると思っています。
優奈はたぶん後者ですね。
激しい感情をぶつけるというのが、彼女の最も苦手とするところです。
それを杏子は心配しているのですが。

実はですね。
私も出演陣の中で、優奈が一番つかめません(爆)
彼女の心は私の考える次元とは少し離れていて
そう設定したのですが、なかなか掴みづらい子でもあるんです(笑)

彼女の中には一応のルールがあって、それは彼女の指針となっています。
その話はまたまた「追憶編」ですが^^;;


もう10月、神無月ですね~~
一番好きな季節なのに、一番忙しいスタートです^^;;
ま、それは喜ばなければいけないのですが。
ありがとうございます!
もろもろ頑張ります^^

  • 2012/10/03 23:04
  • YUKA
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  • Edit
こんばんは^^
おお、優奈さんが目覚めた・・・!
第一声がヒョヌさんへの気遣いの言葉というところが、本当に
優奈ちゃんは・・・!という堪らない気持ちになりました> <
ヒョヌさんと同じ気持ちです。
あんな事があった後なのに、どこまで優奈さんは優しく思いやりのある子なのでしょう・・・
いや、それもあるけれど、それ以上にヒョヌさんを愛してるのですね・・・!!

今回の展開、実は少し意外でした!
杏子さんの断罪が神聖で衝撃的だった後だったので、流れがガラッと変わった感じがあって、穏やかな朝の情景が引立っているように思いました。
2人の心境は少なからずそれとは違うものだろうけど・・・
安心しました 。゚ (゚´Д`゚)゚。


ヒョヌさんの決意が印象深かったです。
これは伏線でもあると・・・!!
決意と共に、まだコウジへの怒りが収まらないといったような・・・
当然ですよね・・・> <
先の展開が全く予想がつきません・・・!
とうとう目覚めた優奈さんが、この後周りの皆とどう関わっていくのか、コウジはどうなるのか・・・次回をお待ちしております!
canariaさん
canariaさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます♪

そうですね。
優奈はただひたすら、そのことを想ってましたから。
遭難し、発見されて目覚めるまで数日が経過していますが
優奈の中の時は、あの時の時間で止まっていたと思います。

色んな感情が出てきて、真っ先に思うのはヒョヌのこと。
だからこそ、一時はコウジの言うことを聞こうとしたのだと。

そしてヒョヌもまた杏子の断罪で、優奈の想いを垣間見ています。
自分の責任――
それを痛いほど感じているのです。

意外な展開でしたか?^^
そうですね~断罪では、みんなが闇に傾いていました。
そして杏子の絶叫は、全員の心に闇を落としたんです。

でも、一番辛いのは当り前ですが優奈なんですね。
理不尽な言動と暴力で心も体も傷つけられているだろうという彼女の前で諍いは論外です。
まして、大声を上げたり、罵倒する言葉も。
それがたとえ、優奈ではない何かに向けてでも。
そう考えています。

そうそう。
優奈とヒョヌはやっと会えました。
でもその心は、今はまだすれ違っているんです。
ヒョヌの心はまだ怒りと呪詛でいっぱいです。
当然ですね。
優奈を守りたい――ただその一心なんですけどね。

ヒョヌの決断は……そう!伏線です(笑)
もう、canariaさんにはバレバレでしょうか?^^
優奈はヒョヌを守るということに失敗します。
ヒョヌは守りきれませんでした。
そして杏子も。

愛する人を守ること、愛すること、彼らの選ぶ決断をこの<懺悔>で描くつもりです。
それがあっているか間違っているかというよりは、彼らが選択し、決断したものは何かという感じです。
そうは言っても、まだ優奈もヒョヌも杏子さえもどうすべきかを掴んでません。

その形は優奈の心に隠されている――と言いましょうか^^
(作者のみぞ知ると言いましょうか(笑))

展開が読めない~~~~~何よりのお言葉です♪

<懺悔>は少し長いです^^
お付合いくださると嬉しいです^^


  • 2012/10/07 21:16
  • YUKA
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  • 2012/10/16 06:44
鍵コメHさん
鍵コメHさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます♪

私もいつも素敵な写真を見せて頂いてますよ^^
コメントを送れないので、送っても負担になるかなと思って
いつもひっそり見せて頂いてます^^

そして、笑っちゃいました^^
そうだったんですね~~~^^
何ででしょうね???

いえいえ、応援しに来てくださってありがとうございます^^
見て頂けるだけでも嬉しいですよ^^
お忙しいでしょうか?
あまり無理せずに、ご自身のペースで進んでくださいませ^^

レシピの方もありがとうございます^^
あっちは特に足跡がわからないので(笑)
来て頂いたかどうかは、おきてがみ頼みなんです^^;;
コメントも出来る範囲で、気が向いたらでいいですから^^

でも待ってますね(笑)

  • 2012/10/16 22:13
  • YUKA
  • URL
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優奈の意識がもどって、ほっとしました。
それにしても今回強く思ったのは、YUKAさんのコウジの描き方です。
見事に「にくたらしい」キャラになっていて、読むほうの気持ちを盛り上げてくれます。

コウジがヒョヌさんのことを餌にして優奈を脅迫して自分のものにしたと知った時はとてもショックでしたが、実はそうはなっていなかったんですね。よかった~。
西幻響子さん
西幻響子さん、こんにちは^^
コメントありがとうございます^^

体調を崩してしまってお返事が大変遅くなりました。
ツイッタ―での優しいお声かけ、ありがとうございます^^

やっと目を覚ましましたね~~
そうなんです。
R18指定ですので、あの続きはMNのみの掲載ですが
逃げ出した優奈は危機一髪だったのです^^

憎たらしいコウジ(笑)
彼には可哀そうなほど、酷い役回りですが
本当は小心者のコウジはこの後どうするのか。
自分を見失っていた者がそれに気付いた時、それがちょっと怖いです。
それを優奈はどうするのか。
そんな事を考えて……筆が止まってますが(笑)
頑張って書きますね~~^^
また読んで頂けると嬉しいです^^
  • 2012/10/21 13:12
  • YUKA
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