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誓約の地/漂流編・112<断罪(2)>

誓約の地/漂流編・112<断罪(2)>



自暴自棄に駆られた、コウジの暴言が続く。


その時修平は?ヒョヌは?

そして、杏子は――?








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「あ?」

 修平の鋭い視線が項垂れたコウジに向けられる。

「自分だって、優奈を抱きたいと思ってたくせに!」

「――――」

「優奈がほしくて憎んでただろう! 途中で諦めただけだろう? 偉そうにカッコつけてるけど」

 この発言に憤ったのはヒョヌの方だった。

「お前と修平を一緒にするな!」

 その声に、倒れ込んだコウジが身体を起こしながら質問する。

「どこが違う? 同じだろう? ただ――諦めただけだ」

 修平はコウジを見つめたまま黙っていた。

 コウジは決して視線を上げず、口元を拭いながら話し続ける。

「……俺はできなかった。諦められなかったんだ。何度も何度も諦めようとしてできなかった。一度でいい、1人の男として受け入れてほしかった。女として俺を見てほしかった。……だから、一度だけ受け入れてくれと頼んだんだ」

「お前――」

 修平は、再び挑みかかろうとするヒョヌを無意識にきき手で制した。

「やめとけ。コウジ、お前もいい加減に――」

「彼女はそんな俺の気持ちを……受け入れてくれたんだ」

 コウジの暴言にヒョヌがいきり立つ。

「な、に?」

 ゲンナリした口調で修平がコウジに釘をさした。

「コウジ、いい加減にしろよ。そんなわけないだろう」

 
 修平は直感的に感じていた。

 コウジのあからさまな嘘。

 冷静に考えれば、優奈がそんな事をするはずがないと全員わかるはずだ。

 優奈が助かった今、目覚めればすぐに真実は明らかになる。

 なのになぜ、今更こんな嘘をつくのか。

 修平は眉間にしわを寄せたままコウジを見ていた。




 彼が知っている――ここにいる誰もが知っている優奈は、確かに誰にでも優しい。

 人の痛みには敏感過ぎて、自分のことは後回しにするほどに。

 優奈を好きになって彼女を知る度に、そんなに甘くて今までどうやって生きてきたんだと内心心配になったほどだった。

 しかしそれは何でも許すということではない。

 大概のことは受け入れてしまうほど寛容な性格ではあるが、自分自身には酷く厳格で潔癖だった。

 たとえどんな理由があっても、そういう意味で優奈は妥協しないだろう。

 いや――この場合は譲歩でもいいが、そんな駆け引きをする女でも、またできる女でもない。

 彼女を知ればわかりきったことだ。


 だからこそ、失踪での不安が増幅した。

 受け入れられない現実に直面して、彼女のとる行動が怖かった。

 それだけを案じていた。

 そしてそれはたぶん、ヒョヌも同じはずだった。


 

「はじめはキスだった。舌をからませて――長くて甘いキスだった。 彼女は無抵抗だったよ」

 コウジの戯言を受け流しながら、修平は激情に揺れるヒョヌを見た。


――優奈には今、ヒョヌさんがいる。


 まだ2人が付き合う前から、優奈の想いの強さに何度も驚き落胆してきたのは、ほかでもない自分だ。

 そんな優奈が他の誰かに――なんて事はあり得ないと言い切れる。

 彼がいる今となっては尚更だった。

 そう確信できるほどには、優奈を真剣に好きだった。


 そこまで考えてはっとした。

「コウジ、お前まさか――」

 修平の問いかけを無視して、コウジは話し続ける。

「服も無理やり引きちぎったりしていない。見ればわかるだろう? 確かに脱がせたのは俺だけど、胸を揉んでる時も、ズボンを脱がす時も抵抗された覚えはない」

「それ以上しゃべると――」

「よせ!」

 コウジに向かって1歩踏み出そうとするヒョヌを修平が押しとどめる。

「殴る? それとも――殺す?」

 コウジが小さく笑った。

「いいよ。確かに俺がやった事は正しいことじゃない。そんなことはわかってる。でも――彼女に聞けばいい。俺に愛されてる間も、あそこに手を伸ばした時も抵抗したのかどうか。脚を広げて俺に組み敷かれてる間どうしていたか。優奈さんは俺を受け入れてくれたんだ」

「黙れ!」

 殴りかかろうとするヒョヌを修平が必死で留めていた。

 振り切ろうとするヒョヌを必死に押しとどめながら、修平は叱責するように叫ぶ。

「こいつの戯言だ。まともに相手すんなっ! そんな女じゃないのはあんたが一番よく知ってるだろっ!」

 ヒョヌは肩で息をしながら、止めに入った修平と睨み合う。

 修平の言うとおりだった。

 それはわかっていても、ヒョヌの感情が暴走していく。

 優奈の名誉のためにも、コウジを黙らせたい――そう思っていた。







「修平の言う通りよ」


 その時、凛とした声が礼拝堂に響き渡った。














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  • 2012/09/03 20:38
鍵コメCさん
鍵コメcさん、おはようございます^^
コメントありがとうございます♪


そうなんですよね~~
諦めた者と諦められなかった者。その固執する心が、既に狂気なんですよね。

良く「純愛」などといわれる愛情表現は紙一重だと思っているのです。
相手が嫌だと感じなければ愛情表現、
嫌だと感じた時点で「ストーカー」になったりすることってありませんか?

主役の2人が中心に話が進む時、主人公の行動はどうしても正当化されるのですが
後をつけたり、覗き見てしまったり、泣きわめいたり、ヤツ当たったり(笑)
意外と可笑しい行動は多いものです^^

コウジの主張――確かに彼がやったことは絶対に許されないですし、一線を超えました。
ヒョヌや今の修平側から見れば、彼は身勝手なんです。
それはコウジも十分承知で――
だからこそコウジは終始、彼らの目を見て話すことができていません。

魔がさしたのか、狂気に傾いたのか。
彼の心がおかしかったことは確かですね。
彼の中では、教会に戻ってからが現実に戻ったという感覚でしょうか。
あからさまな嘘――
彼はどうしてそんな事を言うのか。

あの頃の修平も杏子がいなかったらどうなっていたか……
そのことは誰よりも修平が一番よくわかっています。
だからこそ、コウジがこんな態度を取る1つの可能性として「まさか」と気付くのです^^

修平とコウジの違い――
これはそんなには無いと思っています。
男としての度量はもちろん違う――と思って書いているのですが(笑)
万が一、あの状況に置かれたらどんなことになっていたかはわかりません。

そしてそれを感じていた杏子は、神経質なぐらい
修平にばれないように、決定的な亀裂にならないように配慮していました。
それが優奈のためにならないと思っていたからです。
それほど修平もまた、この島では中心人物でした。

でも、杏子はコウジに対してそこまで気を使っていません。
実際は少し侮っていたというのが正しいかと思います。
だからこそ、杏子の後悔と憤りも半端ではないですね^^;;
油断――
それは彼女が一番感じていたと思います。


優奈の優しさ――

「優しさ」の定義は難しいですね。
彼女の優しさは本人の資質はもちろん、育てられ方にもあるのだと思うのですが
彼女の母が大きくかかわっています。
優奈も杏子も、実は「約束」に拘っているんです。
それは「誓い」といってもいいかもしれません。

人によって、それは道標となり、呪縛にもなる。

それぞれが生きてきた中で、
人と、また自分と交わした「約束」が彼女たちの今を作っています。

そしていつも杏子は、優奈のその優しさに救われてきました。
優しすぎて、時には甘さに映る優奈の優しさ。
もどかしいと感じることも多い杏子ですが、優奈の優しさ、温かさに癒されています。
そしてまた優奈も、杏子の厳しさ、凛とした潔さに憧れているんです^^

上手く表現できるかわからないのですが、この先も少しずつ出てきます^^


この先は、杏子の断罪。
やっとここまで来ました~~^^
プロット時点ではもっと過激な表現でしたが、散々迷って少し推敲しました。
彼女の発言はいつも過激(笑)
私の本音が出てしまうのかもしれません(笑)


お返事コメント、読ませて頂きました^^
書き手の思惑と読者の受け止め方――なかなか難しいですよね。
凄くわかります!!
実際、私も表現にかなり悩むことが多いですし、
誓約の地は、表現や記述に悩む作品でもあります(笑)
この先「彼の国」の内情は……どんな反応だか、戦々恐々(笑)
ま、小説ですけどね~~~タイムリーでね~~~(笑)
昔から変わらないお国なので、ある程度は覚悟していましたが^^;

まだまだ先のことなので、ゆっくり推敲したいと思います^^


またお時間のある時に読んで頂けると嬉しいです♪

  • 2012/09/04 08:13
  • YUKA
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  • 2012/09/04 19:04
鍵コメGさん
鍵コメGさん、こんばんは^^
こちらにも、コメントありがとうございます♪

あれ!最高でした――――!!^^
もう、ひとつずつじっくり見ちゃいましたよ~~
是非是非シリーズで♪
かなり笑って癒されました。
私の方こそ、ありがとうございます♪


コウジくん、暴動ですね!ひとりで、ですが(笑)
まさに、やけくそ、開き直り、居直りです!^^
ここまで思いつめたのは、鍵コメさんのおっしゃる通り
閉鎖的なこの島のせいでもあるんです。
ここに遭難している人達は、あっけらかんとしてますが
彼は一番繊細です。

>を伸ばせばすぐ届く距離にいるのに、手を出してはいけない。

もう、鍵コメさんのおっしゃる通りです!



以前杏子が修平に言ったセリフがありますが、
普通ならほかにいくことができますよね。
無理でも離れていれば、少しずつ想いを薄れさせることができるかもしれません。
でもここに隔離された状況で、それさえも許されないというのは
実はとても過酷なんだと思います。
色々なこと、色々なものを用意して、肉体的にはずいぶん楽になった遭難生活。
だからこそ、ものを考える時間ができてしまったんです。。。

コウジを断罪できるのは、本当の意味ではいませんよね。
強いて言えば、やはり当事者の優奈だけでしょうか。
その彼女にしても、彼に対しての想いがあると思うのです。
あの、優奈、ですから。

杏子姐さんも、ある意味後悔を背負ってしまいました。
ですが、ここは色々な意味でも彼女は言わずにいられませんね~~

はい。頑張りますね!^^
断罪はあと2話。楽しんで頂けたら嬉しいです♪


  • 2012/09/04 22:57
  • YUKA
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  • 2012/09/05 10:57
鍵コメNさん
鍵コメNさん、こんばんは~~(∩´∀`)∩☆
コメントありがとうございます♪

わぁ~~何だかとても嬉しいです><。
小説に鍵コメさんのコメントが付くと浮かれます!(笑)
色々とお忙しいのにコメントを寄せてくださってありがとうございます♪

コウジ――
本当にどこまでも暴走中ですWW
私も書いていて「何言ってんだよお前~~~!!」って思っているところです(笑)

ヒョヌは……そうですね。
彼は今まで優奈の捜索を最優先で、それこそ他のことには構っていられませんでした。

しかし優奈が発見された今――
あんな状態で発見された今となっては、コウジに怒りを向けるのは仕方ないですね。
仰る通り、優奈はヒョヌの一番大事な人ですから。

それと同時に、彼は彼女を追いこんで守り切れなかったことにも憤っています。
自分に――ですね。
彼のせいではないのですが、杏子の不安的中で。。。

その点修平はまだ冷静です。
怒り狂ったヒョヌ……いつもとあまりにも違う彼に、誰も何も言えません。
言えるとすれば、出来るとすれば、修平だけですね。

実はこの役を彼に(修平に)するために、今までの修平の失恋と葛藤がありました。
ヒョヌと杏子はどうしても優奈に近いのです。
幼馴染で、恋人で、という風に。

その点修平は、ただのいいヤツではヒョヌにここまで言えません。
それで優奈を同じように思ったことがあって、ヒョヌと対等に話ができる必要がありました。
そして杏子も理解できる。

更にコウジにも一番近いんです。
だからこそ、彼の気持ちもわからないでもない。。。
コウジも、自分と修平の想いの差はないと思ってます。
砕け散った恋は同じだと。

そのことに一番憤ったのはヒョヌです。
修平はヒョヌが認めたいい男。コウジとは違うと思っています。


そうですね。
鍵コメさんの言う通り、修平には杏子がいました。
杏子もそのつもりで修平に近づきました。
でも杏子はただ優奈のためだけに近づいたわけではありません。
それは杏子姐さんのプライドが許しません(笑)

コウジの件は、杏子も良くわかっていたはずなんですね~~
それでもこの結果。
杏子自身もコウジを侮っていたんだと思います。

彼らは本当に強いですよね~~~
発言だけでなく、その精神力が。私にも真似はできません(笑)



優しさの定義は難しいですよね。
自分が傷ついたり、相手を想って譲ることもありなのだと思いますよ^^

でもそれだけでは、大切なものを守れません。
大切な人や、大切な想いや、自分自身の誇りのようなものを、です^^
その人を形作る何かを譲ってはいけないんですよね^^
杏子も優奈も、それをわかっているのだと思います。
だから「ここはいい」「これはダメだ」というラインがあるのです。
優奈の場合は、いいよ~~の範囲が少し広いのですが(笑)


おお!!優奈と私を同列に~~?!
でも私はヘタレですからね~~~~~~~~~(笑)

次は杏子ですね^^
杏子姐さんの語りは意外と私の心が反映されるらしく(?)過激になりがちで~~(笑)
かなり抑え気味に書きましたWWW
って、私がいつも過激なことを言っているわけではありませんよ?(笑)
杏子の心を感じてくださると嬉しいです。
なぜ――?は「追憶編」で^^


お時間のある時でいいので、また読んでくださると嬉しいです♪



  • 2012/09/05 23:05
  • YUKA
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こんにちは、チョコです゜。・:*+・
番外編も読んだけど今日は本編に書き込みです(●>ω・)ノ

チョコの素直な感想。

コウジ死ね!今すぐ爆発しろ!!
それか俺に鉈無双で始末させてくれ!!

と、言うくらいコウジが憎いです。
こいつ本当に最低だぜ、救いようないぜ、状態です。
実際自分の周りでこんな事件が起こったら
私は絶対許せない。
コウジの気持ちなんて考えられない、理解したくもない。
明らかに道を踏み外した者だもの。

でも、
これをどうするかを決めるのは優奈。
修平も言ってたよね。
決めるのは優奈だって。
私は許して欲しくない。
でも許す事が出来ないって、それは弱い人間だからだとも思うチョコ。
許すと言う行為は凄く難しい事だと思うのです。
(あくまでもチョコの考えですが....)
優奈は許す事が出来る強い人間だと思うの。
心が強いキレイな優奈。
そう思うのです。

優奈が許しちゃうと、杏子様も納得しちゃうよね。
お互い凄く信頼してるし信じきってるから。
修平だってそうでしょう。
ヒョヌ的には受け入れる事が出来ないと思うけど
すべてを決めるのは優奈。

優奈はどうするのか....
優奈の決断をコウジがどう受け止めるか....。
続きが凄く楽しみです゜。・:*+・

  • 2012/09/07 12:42
  • チョコ
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チョコさん
チョコさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます♪

お返事が遅くなってすみません~><

あわわ^^;;
チョコさん過激です~~(笑)
あまり怒るとお肌に悪いですね!^^
あ、それも全部コウジのせいですね~すみません。

そうですね。
コウジは道を踏み外した者、その通りです。
彼を許すことがいいのか――
なかなか難しい問題ですね。

そうです。それを決めるのは優奈。
でもそれも凄く怖いことです。
法もなく、それを裁く者がいない状態で
被害者が加害者を裁くなんて……。
でも修平はすべて承知で優奈に託しました。
彼女が傷ついていることは承知です。
それでも、優奈ならこの状況を治められる、治めてくれないかと。

許せないチョコさんは、全然弱くないですよ。
それが普通だと思います。

杏子は……きっと優奈が許しても許せないと思いますよ^^
でも、優奈がどうするかもわかっている気がします。
昔から優奈を知っている、彼女の一番の理解者である杏子なら。

ヒョヌはどうするでしょうね。
彼もカレで、辛い選択を迫られることになると思います。

優奈はどうするのか――それが一番問題です^^;

そう。
そしてチョコさんの言うように、優奈の決断をコウジはどう受け止めるのか。
彼は今、本当は何を想っているのか。
優奈は優奈らしく……そうなるといいのですが^^;


また読んでくださると嬉しいです^^


  • 2012/09/09 20:41
  • YUKA
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