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【誓約の地・番外編】 真夏の夜の悪夢(後篇)


こんにちは。

今日は昨日に引き続き番外編の(後篇)です。


相変わらずオジサマ・フェア続行中♪

そして、終了……。



なんだか続きそうですが、一応終わりです^^

またこのパターンが書きたくなったら書くかもしれません(笑)



引き続き、恋愛要素なし、オチなし、シリアス路線ですが

それでもいいよ~~というお優しい方は、追記からどうぞ♪

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 暫く考えに沈んでいた優一は、おもむろに受話器を取った。
 
 次に電話をかけた先は、神奈川県の鎌倉にある九条の家。

 ここは妻である奈々子の実家で、そこには優奈の祖父母が健在だった。



 コールの後に出た住み込みの家政婦に名前を告げる。

 暫く鳴っていた保留音の後、カチャリと通話の音がした。

「優一くんか?」

「はい。お義父さん、お久しぶりです」

「久しいな。――大丈夫か?」

「はい、なんとか」

 その会話で、優一はすでに義父の恭一郎がある程度の状況を把握しているのだろうと感じたが、あえて状況を告げた。

「優奈の乗った客船が、海難事故に巻き込まれたと連絡がありました」

「報告は受けとるよ。捜索状況は?」

「まだなんとも――」

「あの海域は座礁するようなものはないはずだが。遭難時の天候も荒れていたわけではないと聞いとる」

「先ほどランバートと連絡を取りました。まだ何とも言えないそうですが」

「そうか。まだ通常の捜索が先だろう。彼らが動くのは、早くても数日後か」

「そう言っていました」

 質問に答えながら、優一は密かに舌を巻いた。

 政府の関係者である自分でさえ、やっと掴んでいる情報。

 それを既に把握している義父は相変わらずの早耳だ。

 政府要人でもない彼の情報網にあらためて感嘆する。


 悟られないようにため息をつくと、電話口で恭一郎が話し始めた。

「杏子くんも一緒か?」

「はい」

「そうか」

「お義母さんは?」

「まぁ、少し横になっとるよ」

 この報告を聞いたせいだとすぐにわかった。

 きっとショックで伏せているのだろう。



 奈々子は2人の1人娘だった。その娘に不幸にも早く先立たれている。

 男の子は望めなかったが、唯一の孫である優奈を本当に可愛がってくれてもいた。

 そしてその友人である杏子も、2人は実の孫のように可愛がっていたのだ。

 その2人が同時に巻きこまれた遭難事故――

 気丈に言葉をかけてくれる義父の心労も相当だろう。



「乗客には著名人も多いようだが、そっちは大丈夫か?」

「……すみません。まだ完全に把握していませんが、その件もあって御相談を」

「マスコミが煩さいか」

「はい」

「あまり詮索されると面倒が出てくるな」

「はい」

「わかった。日本のことは心配せんでもいい。……相田くんには?」

「状況がわかり次第連絡します」

 まだ情報が揃っていない。もう少し精査する必要もあると優一は考えていた。

 杏子の父である相田敏也は日本有数の、いや世界でも有数の企業家だ。その辣腕ぶりは海外でもよく知られている。

 その娘である杏子が、この海難事故に遭ったというだけでもかなりの話題になるはずだ。

 早々に情報公開するというのは気が引けるが、彼ほどの著名人になるともう一般人ではあり得ない。

 だが彼も遭難者家族であることに違いないから、悪戯な情報で翻弄するわけにはいかなかった。

 そのうちどこからか嗅ぎつけたマスコミが、彼を取り囲むのは目に見えている。

 そのためにも整理された情報を連絡する必要があると思っていた。

 彼の娘の杏子は一般人であり遭難者でもあるから、マスコミも押さえることはできるだろう。

 彼女を一般人と評していいのかは、いつも迷うところではあったが――。



 娘の交流を通して知り合った相田敏也と優一は、気心の知れた友人である。

 普段は剛腕で恐れられる企業人だが、優奈を非常に可愛がってくれている気のいい男だ。

 そんな彼が頭の上がらない数少ない人間が、この鎌倉の義父でもあった。

「詳細が入ったら知らせるよ」

「あ……はい」

 そう返事をして、優一はもう一度ため息をついた。

 詳細を教えてほしいと言われるならわかるが、民間人に知らせると言われてしまっては立場があべこべだ。

 心の中で愚痴ったが、いつものことだと考えをあらためて受話器を置いた。




 すると狙ったかのようなタイミングで、性急にノックした竹中が足早に入室してくる。

「どうした?」

「いえ、乗客名簿に――」

 そう言って差し出された用紙に優一は目を通した。

「カン・ヒョヌ……?」

「ご存知ですか?」

「どこかで聞いた事が――」

「韓国の俳優です」

 そう言われて優一は顔をあげた。

――確か優奈がファンだと言っていたのはこの名前だったのではないか?

「たしか優奈が、娘がファンだと言っていたような……。彼も乗船を?」

「はい。一応は極秘だったようですが」

 優一はまた眉間にしわを寄せた。

「もしかして、お譲さんは知っていて乗船を?」

「それはないだろう」

 優一は目の前で手をひらひらと振って否定した。
 
 娘が有名人を追っていく、いわゆる『おっかけ』のようなことをするタイプではないと知っている。

 そこまで異性に積極的ではないことも。


 と考えて、ふと杏子の名前に目が止まった。

 優奈の異性関係に対する杏子の姿勢は、父親である自分よりも鋭い。

 一人娘につい甘くなる自分と違い、その対応も見る目も厳しく、また正しい。

 彼女の勘の良さは優一も知るところである。

 老獪な『鎌倉の狸』と言われる義父でさえ、一目置いて可愛がっているぐらいだ。

 杏子なら極秘のスケジュールを確認し、相手を見極めるために偶然を装って逢う――ということぐらい朝飯前だろう。

「いや、まさか――」

 思わず零れた言葉に竹中が首を傾げるのを見て、優一は慌てて質問を続けた。

「彼がどの程度有名人なのか知っているか?」

「はい。もともと10代から20代に人気があります。最近台湾や日本での活動も始めて、今では日本にも熱狂的なファンがいるようです。2年前に史劇で主役を務め、そのドラマの視聴率が40%を超えました。そのおかげで年配の方にも知名度が上がっており、現在韓国で知らない人間はいないと思います」

 断言する秘書官の顔を見てため息をついた。

「韓国マスコミが騒ぐかな?」

「マスコミはもちろんですが、むしろファンの方が――」

「ファン?」

「先述の通り、彼のファンは10代から20代が多いようですので。熱狂的なファンは既に今回彼が客船に乗船していたことを掴んでいるようです。今のところは公式な発表前ですので、乗船した船名までは知られていませんから騒ぎになっていませんが、韓国もかなりのネット社会です。日本同様、法整備が整っていない部分も多く、そういう意味では公的なマスコミよりも対応が難しいかと思われます」

 優一はため息をついた。

「それに――」

「ん?」

「交際されていると言われているのが、人気女優のパク・ソリョンです。現在29歳。5年前にモデルから転向して現在は女優として活動してます。カン・ヒョヌとは2年前に共演したことがキッカケで交際を始めたようです。以前から外資系化粧品CMに起用されていて人気があるようですし、出演中のドラマも好調です」

「有名人カップルか」

「はい」

 韓国の騒ぎも倍になるということが予想される。頭の痛い問題が増えた。

 通常の事故でマスコミやファンが騒ぐのはよくあることだが、その捜索過程を詮索されるといろいろ問題が出てきそうだ。

「彼のご両親は?」

「健在です。父親は外資系傘下の会社役員でした。現在はリタイアされていますが生活は安定しており、比較的裕福な家庭と言えるでしょう。母親は専業主婦。両親ともクリスチャンのようでボランティア活動も積極的にされていますが、宗教への傾倒はないようです」

「詳しいな」

「有名人の家族ですから、ある程度は情報公開されています」

「なるほど」

 優一はしばらく考えた後、竹中に指示を出した。

「非公式にご両親と連絡を取ることは可能か?」

「お会いになるのですか?」

「公人としてではなく、遭難者家族である父親としてね」

「それはどういう……?」

「彼らの息子は有名人だ。当然マスコミにも一番狙われるだろう。だが彼のご両親は一般人で、盾になって守ってくれる術がない。色んな問題に巻きこまれる前に、力になれないかと思ってね」

「なるほど」

 相変わらずだ――竹中は少し微笑んだ。

 大使の仕事は激務である。

 自分の娘も海難事故にあっていて心労のかかる中、大使としての仕事も多忙であるはずなのに、他の遭難者の家族にまで気を配ろうとする。

 この気質は変わらない――そこが優一の尊敬できる点でもあるが、倒れてしまわないかと心配もする。

――いや、そのためにも自分がいるのだ。

 竹中はそう思い直し、わかりましたと頭を下げて部屋を出ていった。




 すると、優一の胸ポケットに入っていたケイタイが震えだした。

 着信は『相田敏也』


――ここにも一人、早耳がいる。


 優一は、もう何度目かわからないため息をついた。
















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Comment

今晩は~
ボクはこの手のお話が好きです^^

オジサマ好きでは ないですけどねww
  • 2012/09/06 19:35
  • フラメンティ
  • URL
こんばんは。

本編をまともに読んでないので(ゴメンなさい)、何とも言えませんが、確かにオチがないですね(笑)

でも、娘を想う父の気持ちは凄く伝わってきました。事務的な対応振りなんかも上手く描かれていると思います。

強いて言うと、娘が遭難なんて聞けばもっと狼狽したりもするのかな……なんて気もしますが、このお父さんはこういう落ち着いたキャラと考えればアリかな。

簡単ですが、以上、読んで思った点でした。

  • 2012/09/06 22:14
  • バカッパ
  • URL
フラメンティさん
フラメンティさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます♪

お好きですか!ありがとうございます♪
そう言われると、また考えます(笑)

あ、お姉さま好きですね?O(≧▽≦)O


そっちも頑張ります(笑)


  • 2012/09/06 22:16
  • YUKA
  • URL
  • Edit
バカッパさん
バカッパさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます♪

本編は、もう非常に長いですからね^^;;
こちらを読んでくださっただけでもありがたいです^^


そうですね。
本当はもっと動揺し、狼狽するのだと思います。
ただまだ遭難して1時間しか経ってませんし
実感がわいてない――という感じで^^;;

それに、遭難している島にはある秘密が。
まだ明かしていませんが、優奈パパはその真相を知っています。
もしかして――と、一抹の期待も。

オチはないんです(笑)
もう、パパサイドの断片という感じで^^;;;

コメントまで頂けて嬉しかったです。
本編はオチがつくように頑張ります(笑)

  • 2012/09/06 22:21
  • YUKA
  • URL
  • Edit
人脈がすごすぎて・・・何も言え無え!!小心者です。

お爺様は一体何者なのかと・・・狸なのかと・・・
杏子パパもかなりの人だということが分かりました。
杏子姐さんはもう・・・一般人レベルじゃないですよね!
失礼しました~
  • 2012/09/06 23:51
  • 小心者またはチキン
  • URL
小心者またはチキンさん
小心者またはチキンさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます♪

お返事が大変遅くなり、申し訳ありません^^;;

あはは~~^^
おじい様は狸です!(笑)
優奈さんはじつはお譲なのです。
お譲学校でしたしね~~~(。・w・。 )

杏子姐さんは、親の地位関係なく一般人ではないですね!
なんだか都合のいいお金持ちですみません^^;;

  • 2012/09/09 20:25
  • YUKA
  • URL
  • Edit
気長に、、
なるほど。
これは続きが気になりますね。(笑)

気長に待ってマース^^

優一さんは気長に待ってられないんだろうなぁ。
  • 2012/09/11 08:54
  • きたのくま
  • URL
きたのくまさん
きたのくまさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます♪

あ。気になってくださいましたか(笑)
ありがとうございます(*´∇`*)

いつかまた、優奈パパの話しも書きたいです(懲りずに)

今、優奈パパはどうしているでしょうね~~~^^

  • 2012/09/11 21:30
  • YUKA
  • URL
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