QLOOKアクセス解析

誓約の地/漂流編・105<迷走(3)>





28日のMNでの新しい話の掲載はありません。

申し訳ありません^^;


現在、「誓約の地」の小説の続きは書き終えていません。

少しづつ、MNの掲載分を少しづつ推敲し直しているところです。


先に、MNで掲載していた分を優芽の樹でも再掲載していきたいと思います。


その他、途中になっているあらすじや【図解】も作っていこうと思っていますので

良かったらお付合いくださいませ。




本日はMNの134話<迷走(5)>の再掲載です。


================================================





 修平の言葉に、杏子の眉が跳ね上がる。

「何を言ってるの?」

 優奈に何かあったかもしれない。

 この状況で自分だけ何もせず、残っている理由など無いと思った。

 杏子は修平の言葉を無視するように捜索に加わる準備を続ける。

「言ってる意味がわからないわ」

「残れって言ってるだろう?」

「嫌よ!」

「落ち着け」

「落ち着いていられるわけないでしょう! あの子はこの島で遭難した時、私を必死に探してくれた! 優奈は私の親友よ! 私も探す! 当然だわ!」

 杏子の動揺と不安が痛いほど伝わってきた。杏子が自分のせいだと責めているのもわかっている。


 いつも冷静な杏子が取り乱している様子に、全員の緊張が一気に増していく。

 重苦しい空気に包まれる中で、さっさと部屋を後にしようとする杏子の腕を修平が掴んだ。

「こういう時は、無理にでも落ち着くんだ!じゃなきゃ、捜索してる方が捜索される側になるぞ!」

 静止を振り切って勝手に準備を進めようともがく杏子の腕を取ったまま、修平が一喝した。

 動揺している杏子の眼を見て、修平はゆっくり言い聞かせる。

「杏子、これは優奈の捜索だ。だから皆がお前を庇って行動はできない。この俺でもだ」

「……足手まといだって言いたいの?」

「そうだ」

 睨みつけるような杏子の視線を受け止めても修平はひるまなかった。

 その眼を真っ直ぐに見据え、言い聞かせるように話し続ける。

「確かに1人でも多くの人出は欲しい。お前の運動神経が悪くないことも知ってる。でも男と女じゃ、そもそもの腕力と脚力が違う。今日は月もでてない。この真っ暗な森の中での捜索は、何があるかわからないんだ」

 でもだからこそ、自分も行くべきだと杏子は思っていた。

 発見した時は誰かを呼べばいい。

「私は医師よ。万が一の事態にも対応できる」

「この暗闇の中で何が出来る?」

 杏子は奥歯を噛み締めた。その通りだということは充分わかっている。

 たとえ杏子が発見をしたとしても、万が一優奈が気を失っている、若しくは怪我をしている状態だった時、杏子1人の力では優奈を担いで運ぶことはできない。

 だが理屈ではなかった。

 じっとしていることなど出来るはずがない。



 杏子と修平の話を聞きながら、ヒョヌは黙って見ていた。

 修平の言う通りだった。

 今は杏子を、それどころか他のことを考えてやれる余裕はない。

 いつもならヒョヌも加勢して杏子を説得するところだ。

 しかしここは自分が話しかけるべきではないと判断した。

 ヒョヌが優奈を心配しているように、修平もまた杏子を案じているのがわかるからだ。

 杏子の気持ちも痛いほどわかっていた。

 普段の彼女を見ていれば、この状況で優奈を放っておけるはずがない。

 そしてそれは、修平も同じはずだ。




「お前にしか出来ないことはないのか?」

 杏子は修平の言葉にはっとする。

「たった一人、ここに残していくわけじゃない」

 その言葉で杏子は周りを見渡した。確かにその通りだった。


 杏子だけでなく女性陣はここに残る。

 既にこの状況の雰囲気にのまれて、リョウコは泣きそうになっていた。

 考えたくもないことだが――優奈がすぐに発見されるとは限らない。

 不安や動揺は不測の事態を招きやすい。

 細々とした指示を出し、みんなをまとめていた優奈がいないのだ。

 そんな時、いつもその代わりを務めるヒョヌも捜索に出てしまう。

 コウジを見張るために佐伯の手が空かないとすれば、それ以外のことへの対応は誰かがやらなければならない。

 自分から視線を外した杏子を見て、修平は小さく笑った。

「優奈はお前を必死で探してる時でも冷静だった。今自分にできること、できないこと、するべきことを常に考え判断してきた。どんなときもだ。――優奈にできて親友のお前に出来ないわけないだろう? それこそ、優奈ならこの状況で杏子に何を望む?」

 問いかけるように杏子の眼を覗きこんだ。

 真っ青な顔をした杏子を少しからかうような、なだめるような優しい声だった。



 優奈なら――

 もし優奈なら、ここに残ることを望むだろうか?



 考えるまでもなく、優奈ならそう言うだろうと杏子は思った。

 優奈はここにいる全員に心を砕いてきた。

 誰一人欠けることなく、いつか全員で無事に助かるために。

 自分のことは後回しにするくせに、人のことになるとお節介なぐらい手をかける。

 例え瀕死の状況でも、他の人を優先してくれと言いかねない。

 バカがつく程お人よしの、あの子なら。




 ため息をつく杏子に、修平は小さく笑って声をかけた。

「ここにいる誰もが優奈に救われてきた。今度は俺たちが助ける番だ。必ず探すから信じて待ってろ」

 修平の言葉に杏子は自分を取り戻していく。

 相変わらず顔は真っ青だったが、大きく深呼吸をして頷いた。



「……お願い」



 修平はふり絞るような声でそう告げる杏子の頭をぽんと叩いた。

 そして松明を持って他のメンバーと共に森へ向かった。














関連記事

Comment

Comment Form
公開設定


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。