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誓約の地/漂流編・103<迷走(1)>+次話のご連絡

誓約の地/漂流編・103<迷走(1)>

※次話はR指定予定のため、優芽の樹での掲載はしません。
木曜日にMNでのみ掲載予定。

指定の嫌いな方及び18歳未満の方は、次に掲載する分から読んで頂ければ話が繋がるようにしますので
大変申し訳ありませんが、掲載まで暫くお待ちくださいm( _ _ )m

(今のところ、指定話は1話分の予定です。。。未定ですが^^;;)

大丈夫~~と思われる大人の方は、MNの方で読んで頂けると嬉しいです^^


大人の方でR18がOKな方はMNへ→ R18サイトMN 【誓約の地完全版】


この話の続き(R18)は、MNの131話・132話となります。







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 教会が見えなくなってすぐ、コウジは足をとめた。

「あ、もしかして……」

 突然声をあげたコウジに驚きながら、優奈も足をとめる。

「どうしたの?」

「さっき泉に来た後散歩して迷ったんだ。そうたら反対の崖の所へ出ちゃって。 崖に気付かなくて、動揺して落としたのかも。やべぇ、どうしよう」

 泉から北西の方角を見つめながら、コウジは頭を掻いた。

「あの辺に落としたかな。参ったな」

「そうね、あっちは危ないから――」

 コウジが悩むのも当然だと優奈は思った。彼が高所恐怖症なのは遭難当時の自己紹介で聞いている。

 普段、彼は崖には近づかない。

 島の地理にも詳しくなってきたので危険はだいぶ軽減したが、それでも全てを把握しているわけではない。

 森の奥に進めばほんの少し進路を間違えただけで、全く見たこともないところに出るのもよくあることだった。

 今日もまだ見つけていない食料になりそうな物や薬草がないか、佐伯とジャンが捜索しているはずだ。

 主に男性陣は、そうやって今も交替で探索を続けている。

 そのおかげで色々なものを発見できたのだから、散策自体を責めることはできない。

 優奈はそう思ってため息をついた。

「手当てが終われば杏子たちも来るから、みんなで探そうか?」

「……いいよ、悪いから。俺だけで」

 そう言って苦笑いするコウジを見て、優奈も苦笑する。


 コウジが杏子のことを苦手なのは知っていた。

 物おじしない強気な杏子に、比較的おとなしいコウジが気後れするのもわかる。

 不注意で落としたものを探そうと言えば、杏子から1つ2つ小言を貰うのも目に見えている。

 それを思って躊躇しているのだろう。

 しかし、杏子には泉に行くと伝えてもらうことにした。

 それでなくても杏子に1人でどこかに行かないようにと釘を刺されている。

 杏子がコウジを警戒しているのも知っていた。

 そのコウジと一緒に出かけ、泉にいないと心配するかもしれない。

 躊躇している優奈に追い打ちをかけるように、コウジが呟いた。

「大事なものなのに、自分が落としたのが悪いんだ」

 それを聞いて、優奈ははっとする。

 母の形見――

 そう聞いた時に思いだした、母との想い出がよぎる。


 遭難して命が助かった。

 でも助かった仲間でさえ、大切な人や大事にしていたものを多く失っている。

 多くの荷物を客船から運び出し、そこから見つけられたものもあるが、やっぱり無くなっているものの方が多いのだ。

 ここに着いてから優奈は何度も荷物整理を行ってきた。

 その度に発見した物をみんなに伝え、持ち主を捜した。

 荷物の中から自分のものを見つけた時の嬉しそうな顔と、諦めた時の寂しそうな顔がよぎる。

 母の形見。

 それはここで生きるためには必要ないものかもしれない。

 でも――


 うなだれるコウジを見て優奈はちょっと考えたあと、小さくため息をついて微笑んだ。

「……じゃあ、近くまで探してみて、見つからなかったら明日にしよう」

「いいの?」

「だって、コウジくんじゃ崖の傍は無理でしょう? それに……大切なものなんでしょう?」

「……うん」

「日が暮れるから、早く行こう」

 そう言って笑うと、優奈は泉と反対側へ歩いて行く。



 その後ろを歩くコウジは、優奈の後姿をじっと見つめていた。








     ***





 

 途中歩いたというところを、コウジに確認しながら2人で捜索する。

 崖まではまだ距離があったが、それでもつい探すのに夢中になってずいぶん奥まで来てしまった。

 優奈が顔をあげると辺りは随分と薄暗くなっている。

 これ以上行くと捜索どころでなくなりそうだ。


 2人で大きな岩まで来ると、後は明日にしようと優奈は一息ついた。

 森の木々が強風に揺れて、いつも以上に大きくざわめいている。


 目印に何かを置いていこうとポケットに手を入れた瞬間、優奈は誰かに呼ばれた気がして振り返った。

「コウジくん、今誰かに呼ばれたような気が……」

 誰に呼ばれたのかと耳を澄ませながら、何気なくコウジを振り返った。

 いつの間にか傍まで近づいてきたコウジに少し驚いて、優奈はその顔を見上げる。

 するとコウジが静かに口を開いた。

「大声を出さないで」




 その時、優奈は何かがわき腹に当たるのを感じた。

 ゆっくりと視線を落とす優奈の目に、ナイフを握るコウジの手が映る。

「――え?」

 優奈は一瞬、何が起こっているのかわからなかった。

 無意識に後ずさった優奈の背に岩肌が当たる。

 コウジは目を見張っている優奈の腕を掴むと、強引にその腕を引き寄せた。


 大きくうねるような風が2人の間を通り抜けていく。

 薄暗い森の木々がその風に煽られて騒ぎ出すと、いっせいに飛び立つ鳥の羽音が混ざり合って空へと舞い上がった。

「……なにを、するの?」

 優奈の心臓の鼓動は警鐘のように鳴り響き、驚きと恐怖で声が震えた。

 鈍く光るその先端から目が離せない。



「一度でいい」



 コウジの低く呻くような声に反応するかのように、ざわめいていた木々の葉音がいっせいに止んだ。














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