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誓約の地/漂流編・94<微熱(7)>



誓約の地/漂流編・94<微熱(7)>

※MNで2月29日に更新した分をUP。






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「コウジ、悪いな。優奈は医務室に連れていくから――」

 そう言って立ち去ろうとした2人の前に、杏子と修平が顔を出した。

「あら、どうしたの?」

「ちょうど良かった。杏子ちゃんを探しに行こうと思ってた」

「何で?」

「ちょっと熱があるみたいなんだ」

 ヒョヌの言葉を受けて、杏子は優奈の額に手をあてた。

 そして両手で耳の後ろに触れて触診した後、口を開けさせて喉の奥を覗く。

「なんだ、優奈具合が悪かったのか?」

「朝は平気だったんだけどね」

 修平と優奈のやり取りを聞きながら杏子は少し首を傾げた。

「そうね、少し熱があるわね。とにかく医務室へ行きましょう」

「あ、でもまだ終わってないから……」

 置きっぱなしのバケツと花を見て、優奈が躊躇っていると

「俺が替わる。花を供えるだけでいいなら、俺でもできるって」

 そう言って修平が笑った。

「でも……」

 かたくなに動こうとしない優奈に、杏子はため息をつく。

 この日課に優奈が拘っているのはわかっていた。

 決めたことはどんなことでもやり通す――そんな優奈の性格もわかっている。

 ここで押し問答しても仕方がない。

「手伝うわ」

「え?」

「早く終わりにしましょう」

 それでも大丈夫だと微笑む優奈に、杏子は肩をすくめる。

「優奈。もし具合が悪いのが自分以外の誰かだったら?」

「え? それは――」

「手伝うって言うでしょう? それにこの島の健康管理は佐伯先生と私に任せたはずよ? その私が言ってるの。今日だけは手伝わせて。それで終わったらすぐ医務室へ行くわよ」

 杏子の言葉に優奈は苦笑して折れた。

 その場にいた全員で花を供え終えると、バケツを2つ重ねて杏子がコウジに声をかける。

「これは食堂の方へ持っていってくれる?」

「……わかった」

「コウジくん、お水を汲んで来てくれてありがとう」

「あ、いや――」

 何かを言い淀んでいるコウジを見て優奈が首を傾げると、出入り口から杏子の声が飛んだ。

「優奈、行くわよ」

「うん」

 杏子に促されて優奈が礼拝堂から出ていった。当然のようにヒョヌがそれに続く。





 3人が去った後も、コウジはなんとなくドアを見ていた。

 それからゆっくりと視線を落とし、自分の掌を眺める。

「コウジ」

 コウジの傍についていた修平が声をかけた。

 ビクッと身体を震わせて振り返ったコウジに、修平はことさら明るく話しかける。

「たまには遠泳しにいかねぇか? コウジ以外に遠泳に付き合えるほど泳げる奴はいないからさ」

「……これ、置いてこなきゃだし」

「それ置いたら行こうぜ」

「いいよ」

 そう言って重ねられたバケツをコウジは少しかがんで持ち上げると、食堂へ続くドアに向かって一歩を踏み出した。

 視線を合わせることもなく小さな声で呟いたコウジの腕を修平が掴む。

「そう言うなって。意外と気分転換になるぞ?」

「ほっといてくれっ!」

 修平の手を、コウジは思いっきり振り払った。

 その拍子に持っていたバケツが手を離れて投げ出される。

 物凄い音を立てて転がっていくその音で、コウジ我に返った。

「あ、ごめん」

 立ち尽くすコウジの代わりに、ゆっくりバケツを拾った修平が声をかける。

「――平気か?」

「何が?」

「何がって、お前……」

「僕が平気だろうが平気じゃなかろうが、問題はないよ」

 自重気味に笑うコウジを見て、修平は小さくため息をついた。

「そんなことねぇよ。仲間だろ?」

「……仲間……そうだね」

 修平に視線を合わせたまま、コウジは口角をあげる。

 しかし何かを笑おうとして持ち上げられた唇は、奇妙に歪められただけだった。

「少し一人にしてほしいんだ。ごめん――」

 心配して眉間にしわを寄せた修平の視線でさえ、今のコウジには煩《わずら》わしい。


――そんな目で見ないでくれ。


 無意識についた悪態は心の中でだけでこだまする。

 修平を振り切るようにして表に出たコウジの足は、自然に森の奥へと向かった。







 










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Comment

YUKAさん、大変お久しぶりです、西幻響子です。

ブログ立ちあげて、一周年なのですね。
おめでとうございます!!
凄いですね! 
「誓約の地」もいつのまにやら114話まで進んでるし(笑)。
これからも、ご活躍、応援しております。

ということで・・・・・・(なにが?)

西幻はここまで追いつきました。
修平くんは杏子さんと(とりあえずは?)落ち着いたみたいでホッとしたのですが、今度はコウジくんの言動が気になってきました。
大丈夫かなあ、優奈・・・。
杏子ねぇさん、守ってあげて!
相変わらずヒョヌさんは余裕の大人の男で優しくカッコ良く、惚れ惚れします。
  • 2012/09/22 10:52
  • 西幻響子
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西幻響子さん
西幻響子さん、こんばんは^^
コメントありがとうございます♪

――って!!!!

西幻さん!西幻さん!!西幻さ――――ん!!!
お久しぶりです!!お元気でしたか?^^
いや~~~~~~ん。嬉しい、嬉しい、嬉しい><。

ポールさんのところでお名前を見かけて、
でも人様のところで声をかけるなんておこがましいと
何度も何度も思いなおして、自制しておりました(笑)

優芽の樹にコメントを頂ける日がまた来るとは――
いえ、信じていましたけど、信じてはいましたけど><。。。

お名前を見て、嬉しさのあまり、小躍りしました~~^^

西幻さんがロックンロールヘイズを閉鎖されてから
何だか本当に寂しくて。。。
私は閉鎖されたブログは、一定期間を置いて整理するのですが
ロックンロールヘイズは、消せませんでした。
ブログ訪問される方が「あれ?」と思われるかもと思っても
名前を残しておきたくて。

いつか、いつかまたどこかでお名前を見れるかもしれない
またお話を読めるかもしれない

同じブログではないことは承知していたんですが
いつまでも待っているとの気持ちを込めて^^


読んでくださってありがとうございます^^
そうなんです。
いつの間にか、ロックンロールヘイズの105話を超えました(笑)
なんだか長くなってしまって^^;;
しかもまだ終わりません(笑)

コウジ。

この先大変なことに(笑)
優奈も大変なことに~~~~~~

読んで頂けますか?
また寄ってくださいますか?

読んで頂くには相変わらず拙な過ぎて恐縮しちゃいますが
それでもこうしてお名前を拝見できて
コメントを寄せて頂けてとても嬉しいです^^

いつかまた、銀次の物語も読みたいと思っています^^
色々なことが落ち着かれて、また公開する日がきたなら
出来ましたら教えてください^^

何を置いても駆け付けますよ~~^^
あ、閲覧ですが(笑)

なによりの祝いとなりました^^
これからも地道に頑張ります!^^

また寄ってくださいね^^
絶対、声かけてくださいね!(念)
  • 2012/09/23 19:20
  • YUKA
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