QLOOKアクセス解析

誓約の地/漂流編・91<微熱(4)>



誓約の地/漂流編・91<微熱(4)>






=============================================



 そっとドアを開けて中を覗く。

 明かりのない教会では、部屋の明かりは蝋燭だけだった。

 寝る前にそれを持って移動し、ベッドに入ると消すことになる。

 優奈は部屋に入りベッドを確認すると、ヒョヌがすでに横になっていた。



 蝋燭を棚に置き、ヒョヌの持ってきていた蝋燭共に吹き消すと、一瞬部屋が暗闇に包まれる。

 それでも目が慣れると、表情を判断できる程度には明るかった。

 虫除けにと全員で部屋の窓に張ったネットの間から零れてくる月明かりが、仄かに部屋を照らしているからだ。

「もう終わった?」

 ベッドの横になっていたヒョヌが優奈に声をかける。

 優奈はうんと返事をして頷くと、ベッドの端にそっと腰を降ろした。

 髪をまとめていたシュシュをするりと外してベッドのそばの椅子の上に置くと、そのまま脚を持ち上げベッドに横になる。

 ヒョヌは横になった優奈を軽く抱えるようにして自分に引き寄せ、腕の中に抱え込んだ。

「ごめんね。起こしちゃった?」

 ヒョヌは腕の中から見上げて優奈が問いかけると、ヒョヌが起きてたと小さく答える。

 ヒョヌがそのまま優奈に口づけると、優奈は緊張で身体を固くする。

 バカみたいに緊張で苦しい――
 
 ヒョヌは頭を掻くと苦笑して起き上がりベッドに腰掛けた。

「やめとく?」

「え?」

「嫌がってるのを無理矢理って、趣味じゃないし」

「別に、嫌がってるわけじゃ……」

 慌てる優奈にヒョヌは苦笑する。

 今日一日、優奈が酷く緊張しているのをヒョヌは感じていた。

 みんなに気を使っているのにも気付いていた。

 ただ幸いというべきか、今日の浜辺の見張りはコウジと修平だった。

 だから問題ないだろうと思っていたが、肝心の優奈が気乗りしないのなら仕方がない。

「いいよ。怒ってるわけじゃないから。楽しみにし過ぎだよな。ちょっと浮かれ過ぎだって反省してた」

 優奈が部屋に来る前、ヒョヌはベッドに横になって考えていた。

 ヒョヌが特に気になっていたのは、コウジの視線――

 優奈を好きなんだということは見ていれば気が付く。

 修平と違い、遭難当初から彼とは何度か会話もしていた。

 始めの頃は通訳を通してだったが、日本語が上達し始めてからは直接話すことも多かった。

 しかし――

 優奈と付き合うことを隠さなくなた頃から、コウジとの会話が極端に減った。

 話しかければ受け答えするが、コウジから話しかけてくることはなくなった。

 むしろ避けられているような様子もあったが、優奈との交際を隠していた時期は特に、変に突っ込まれないようにあえて放っておいたのだ。

 あまり気にも留めなかったのだが、この間からコウジの様子を見てその変化が気になっていた。

 だからと言って、せっかく一緒になった部屋でこれから先全く何もない――というのは難しい。

 それこそ、コウジにそこまで遠慮する必要があるのか、とさえ思う。

「そんなことないよ」

 黙り込んだヒョヌに、優奈が声をかけた。

「私だって今日一日緊張して――あ、でもそれは嫌だったわけじゃなくて、嬉しいっていうか、それで緊張してただけだから……。楽しみにしてたし……ほ、本当だよ?」

「楽しみにしてくれてたんだ」

「――――!」

 慌てる優奈の瞳を覗きこみながらヒョヌが微笑んだ。

 今日から一緒の部屋だと全員が知っているこの状況で、ヒョヌ自身がどうしようか迷っていたのも事実だ。

「我慢しようかとも思ったんだけど――でもまぁ、ご要望にはお応えしないとかな?」

「ご、ご要望?」

 ヒョヌは優奈を抱え込むように抱きしめた後、何度も深くキスをする。

 暫くして唇をそっと離し、頬にかかる柔らかい髪をそっと払いながらヒョヌは優奈の瞳を覗きこんだ。

「なんか、新鮮だな」

「え?」

 何が? と聞こうとしたが出来なかった。

 ヒョヌは優奈を組み敷いたまま彼女のふっくらした唇を吸うと、舌をからめながらキスをした。














=============================================


※この後2話分はR18になります。
 「優芽の樹」での掲載はしませんので、お読みになりたい方は
 「ムーンライトノベルズ」の117・118話をお読みください。 ➡ 【誓約の地/MN】
 お読みにならなくても92話からで話は繋がります。


関連記事

Comment

Comment Form
公開設定


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。