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誓約の地/漂流編・90<微熱(3)>



誓約の地/漂流編・90<微熱(3)>







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 部屋割の変更で優奈達が移動をしている頃――

 ケイタとツヨシと修平の3人は、食堂として使っている部屋でトランプに興じていた。

 暫くすると部屋の移動を終えたコウジが合流した。

 最近では浜辺でのビーチバレーに飽きると、食堂でトランプ遊びが始まる。

 ポーカー、セブンブリッジ、大富豪――その日の参加人数と気分で対決する内容を決めていく。

 今日は大富豪を楽しんでいた。


 賭けるのはいつも、当番になっている海の見張り。

 教会に拠点を移してから救助の船を見逃さないためと教会周辺の安全の確保を目的として、海の見張りを2名、教会の見張りを2名、交替で置いていた。

 見張りは全員で分担していたが、安全を考えて女性2人にすることはしない。

 特に海は教会から離れているので、極力男性陣で行っていた。

 更に恋人どうしは一緒になるように優奈が配慮していたため、ここに集まっている4人は必然的に海の見張りを担当することが多いのだ。

 当番の間は仮眠をとれるが、やはりベッドで寝れる方がいい――。


 そこで、その当番を賭けての勝負となっていた。

「ヒョヌさんは移動し終わったかな?」

 トランプから目を離さずにツヨシが呟くと、ケイタが手札を捨てながら答える。

「もう、終わったんじゃねぇの?」

「いいなぁ、これから毎晩お楽しみだ」

 そう言って笑うツヨシに、「毎晩ってどうなの?」とケイタが笑い、修平も苦笑する。

「俺はそれより、修平に言いたいことがあるぞ!」

 突然叫んだケイタに、修平はビックリして視線を向けた。

「は? 何?」

「何――じゃあねえだろ? なんだよ、杏子ちゃんと付き合うってさぁ」

「ああ」

「杏子ちゃんが選んだんだから仕方ないでしょ?」

 苦笑する修平を庇って、ツヨシが擁護した。

「そうだけどな。俺が狙ってたのにさ――」

 横から出てきやがってとぶつぶつと文句を言い続ける。

 忌々しげに睨みつけるケイタの口元は笑っていた。

「悪い」

 修平はあっさりと謝った。

「どういう経緯でそうなったのか、詳しく話してみろ!」

 ケイタの突っ込みに修平は苦笑しながら手札を選んでいる。

「なんだよ。女じゃあるまいし、人の恋愛に首突っ込むのはどうよ?」

 修平が笑って突っ込むと、ケイタは苦笑した。

「あ、お前それで済ます気?」

「まぁまぁ。ケイタさん、往生際が悪い」

 手元のトランプを見ながらツヨシも笑っている。

 その会話を無表情で聞いていたコウジが、やはり視線を手札に落としたまま呟いた。

「救助が来ないからじゃないんですか?」

 突然、そう切り出したコウジに3人の手が止まる。

「何が?」と問いかける修平にコウジは先を続けた。

「すぐに助かっていたら――ヒョヌさんて優奈さんと付き合ったりしたかな?」

 その問いかけに誰も答えない。

 空気の変化を感じたケイタが、コウジに笑いかけた。

「なんだよお前、急に話したと思ったら優奈ちゃんの話?」

 ケイタの問いに答えず、手札を見ながらコウジは呟き続けていく。

「韓国の有名俳優が、本当に日本人と付き合っていけるのかな? 韓国に彼女もいるって聞いたし」

 コウジの呟きを聞きながら、修平は肩をすくめた。

 そんなことは、あの2人がよくわかっているはずだった。

 散々考えて出した答えなのだ。いまさら外野がなにを言っても仕方がない。


 それでも修平には、コウジの気持ちもわかる気がした。

 今はまだやりきれないのだろう――。

 だからといって、もうどうにもならないのだ。自分で心に折り合いをつけていくしかない。

「ここでも助かっても、優奈と別れるつもりはないって言ってたな」

 修平は小さく息を吐くと、世間話をするようにさり気なく忠告した。

「そんなことは、ヒョヌさんが一番わかってるだろうけどな。考えてるんじゃねぇの?」

 修平の発言を聞いて、コウジは小さく笑った。

「出来るのかな」

 コウジの様子を見かねて、ケイタが声をかける。

「コウジ。いい加減にしろよ」

「…………」

「気持ちはわからなくはないけどな」

 黙ってしまったコウジを見て、ツヨシが苦笑しながら冷やかした。

「選ばれなかったのは、ヒョヌさんのせいだけじゃないだろ? そりゃあ俺も残念だと思うけどさ。お前も往生際が悪いぞ?」

 そう言って笑うツヨシの発言に、コウジはかっとなった。

「なんだよ、往生際って――」

 ふり絞るような声で呟いてトランプを持っていた手にぐっと力を込めると、そのまま勢い良く席を立った。

 脚が腰かけていた椅子にぶつかり、大きな音を立てて倒れていく。

 投げつけるようにして置かれたトランプがテーブルに散乱した。

「別にどうこう言っているわけじゃないよ」

 コウジはそのまま大股で歩き、食堂のドアから出て行った。





 しんと静まった食堂で、ケイタとツヨシは顔を見合わせて肩をすくめる。

 修平は内心ため息をつくと、短い髪をがしがしと掻いて苦笑した。

「大丈夫かな? あいつ」

 修平の言葉にケイタも苦笑する。

「荒れてるな。――まぁ、時間が解決するさ」

 散らばったトランプをかき集めながら、ツヨシは盛大にため息をついた。

「修平の次はコウジか――」

 苦笑して呟いたツヨシの声を聞きながら、修平はコウジの出て行ったドアを見つめていた。











     ***














 部屋移動の後、教会の前で夕食を取り、暫く談笑してそれぞれが部屋に入っていった。

 島での生活は朝がとても早い。

 と共に起き出し、朝食をとると朝の作業にとりかかる。

 日が沈むと、暗闇の中で何かをすることが困難になるからだった。


 夕食の片づけを終えて、優奈は部屋の前に立つと静かに深呼吸した。

 今日は一日落ち着かなかった。

 これからこの部屋で、オッパと一緒の生活が始まる――そう考えると何だか妙に緊張する。



 何でもないふりを装いながら、日が暮れるのを何処かで心待ちにしていた。















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Comment

YUKAさんおはようございます♪

トランプ!娯楽できるものが
あって良かったです^^

うぅーん、、、船を見つけて
救助されたら…
私もどうなるんだろぅ…って考えちゃいました(笑)
修平は楽しそうですがやっぱりコウジが…
杏子姉さんじゃないけど気になっちゃいますぅ~><
  • 2012/02/20 09:07
  • 奏響
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奏響さん
奏響さん、こんばんは^^
コメントありがとうございます♪

トランプぐらいはあるだろうと^^
これぐらいは無いと、飽きちゃいますよね?(*´∇`*)

コウジは……色々悩んでますね^^;;
無人島に遭難して、私も優奈になれる自信は全くありません(笑)
  • 2012/02/20 23:21
  • YUKA
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