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誓約の地/漂流編・72<濫觴(2)>



動きだした想いと抱える心。

それぞれの決意が、新たな時間を紡ぎ出す。





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「リョウコちゃん!」

 慌てて掛けてきた優奈は肩で息をしながら、浜辺でエリと話していたリョウコに声を掛けた。

 心なしか顔が赤いのは、勢いよく掛けてきたから――だけでは無さそうだ。

 声を駆けられたリョウコはギクリと肩を揺らし、ゆっくり後ろを振り返る。

 こちらは首筋まで真っ赤に染まっていた。

「ご、ごめんんさい」


――やっぱり!


 慌てて謝るリョウコの様子に優奈の顔も赤く染まる。

 リョウコとエリの傍に座り、切れる息を整えながら胸に手を当てて謝った。

「ううん。私の方こそ、なんだかごめんなさい」

「そんな! 私が悪いんですから」

 まるでお見合いのように向かい合って互いに謝り続ける2人を見て、傍にいたエリが噴き出した。

「聞きましたよ。残念でしたね」

「ざ、残念って――」

「本当にすみません。その前に覗いた時は杏子さんと一緒だったので、まさかヒョヌさんがいると思わなくて」

「あ、ううん。あの後入れ違いで――」

 ひとしきり笑ったエリが、ふと思いついたように声をかける。

「優奈さん、ヒョヌさんは?」

「あ、先に行くって言ってきたから」

「え? 置いてきちゃったんですか?」

「え?」


 そうだった。

 あんまり動揺して、そのまま飛び出してきてしまった。

 そう言えば、選んだ水着もそのまま――

 苦笑する優奈にエリは驚いたように笑っている。

「リョウコ、ヒョヌさんに怒られるよ」

「ええ? そうかな? そうだよね……」

 ヒョヌさんにも謝らなきゃと困惑しているリョウコに、優奈は慌てた。

「怒ってないよ。そもそも私達が悪いんだし」

 もうしないからとリョウコに謝る優奈を見て、エリとリョウコは苦笑する。

「もうしないって――。それは、ヒョヌさんが可哀そうですよ」

 無理だと思いますとエリは笑っている。

 リョウコもさすがにビックリして、困っている優奈に声を掛けた。

「別に、悪いことじゃないです。ただ――知らなかったからビックリしただけで」

「優奈さん、ヒョヌさんと付き合ってたんですか?」

「あ、うん」

「へぇ――、いつからですか?」

 無邪気に声をかけるエリに、今更ごまかせないと諦めた優奈は3か月前ぐらいからかなと答えた。

「ごめんね。黙ってて」

「それはいいんですよ。ね! リョウコ」

「ね。どっちかな? とかは思ってましたけど」

「どっち?」

「修平さんとヒョヌさん」

「何か、聞けなかったから良かった。そうだとは思ってたけど」

「え? あ、そうなの?」

「最初、2人ともあんまり知られたくなさそうだったし」

「私も、最初どっちかな? って思ってた」

「三角関係! 3人とも素敵だから、リアルドラマみたいだった」

「何? それ」

「南の島の? わかる! 本が書かけそうだよね」

「あ、いいかも!」

「良くは、ないから」

 何故か盛り上がり始めた2人に、優奈は驚いて苦笑した。

「急にラブラブモードになったよね」

「なった、なった!」

「そう、かな」

「そうそう! 言葉わかんないけど、優奈さんの時だけ絶対声の響きが違うもんね」

「絶対ね! 憶えてる? あの歌! あれ聞いた時鳥肌立った」

「すっごく良かったよね。ウチら通りすがりに勝手に聞いちゃったのに、アンコールしようとしちゃったし」

「歌? 浜辺での?」

「そうです」

「そうだったんだ。きっと2人が頼んだら歌ってくれるよ?」

「違うんですよ。あれは絶対優奈さんヴァージョン」

「何それ?」

「私、あれでヒョヌさんは、優奈さんが好きなんだって確信した」

「私も」

「え? そうなの?」

 驚く優奈を見て、2人もさすがに呆れていた。

 気付いてないのは優奈さんだけですよと笑われて、何だか酷く居心地が悪い。

「私なんて、初めてヒョヌさんを見た時、気付いてたわよ」

 その声に驚いて3人が振り返ると、杏子が微笑みながら立っていた。

「杏子! いつの間に――」

「さすが杏子さん!」

 その場にゆっくり腰を下ろす杏子を見ながら、優奈はいつからいたの? と声を掛ける。

 その問いをサラッと流して杏子は呆れたように笑った。

「だから、気をつけなさいって言ったのに」

「それは――」

「エリならともかく、リョウコには刺激が強過ぎるでしょう?」

「え? 大丈夫ですよ」

「確かに、リョウコには刺激が強いかもね――」

「あ、エリまで! 大丈夫だってば」

 拗ねたように抗議し始めたリョウコに、今度は優奈が苦笑する。

 中学から大学までずっと女性ばかりの学校に通っていたというリョウコは、見た目も性格もおっとりしていて可愛らしい。

 男性にあまり免疫がないと聞いていたから、見つかった相手がリョウコだと知ってよけい動揺したのも事実だ。

「私も、リョウコちゃんだからよけい動揺して」

「もう、優奈さんまで!」

 頬を膨らませるリョウコに、優奈に言われる様じゃおしまいねと杏子がぼそりと呟く。

 すると今度は優奈とリョウコが2人がかりで抗議し始めた。

「嘘は言ってないわよ」

 拗《す》ねる2人を宥《なだ》めながら杏子が苦笑する。

 その横でエリが噴き出して笑っていると、ヒョヌが浜辺へゆっくり歩いて来るのが見えた。

「あ、ヒョヌさん!」

 エリの声に気付いたヒョヌが近づいてきた。

「楽しそうだな」

「ヒョヌさん、さっきはすみませんでした」

「え? あ、いや――」


――そんなに申し訳なさそうに謝られても。


 俯いて謝るリョウコに驚いて、ヒョヌは何と声を掛けようか困っていた。

「ヒョヌさんが悪いんだから、リョウコが謝る事ないわよ」

「杏子!」

「ヒョヌさんも悪くないですよ?」

「そうです。私が悪いので――」

「リョウコちゃんは悪くないから!」

 にわかに上がり始めた女の子達の声に、ヒョヌはもう一度苦笑する。

「あの岩場の先」

 目を細めてそっと浜辺を一瞥していたヒョヌは、急に声を掛けてきた杏子に黙ったまま小さく頷いた。

「オッパ、どこに行くの?」

「ん? ちょっと。あ、水着は部屋に置いたままだよ」

 そう言って歩き始めたヒョヌの後姿を見送った。


――どう、したんだろう。


 何となくいつもと違うヒョヌの様子が気になって暫くその姿を見つめていると、不意に杏子に腕を掴まれた。

「大丈夫よ」


――大丈夫?


 杏子の言葉の意味がわからず、優奈は目を瞬《またた》かせる。

 何が大丈夫なのか聞こうとして首を傾げた。

「水着、選べたの? 着替えにもう一度戻る?」

 急に話題を変えた杏子を不思議に思いながら、優奈はそうねと微笑んだ。
 
















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Comment

こんばんは!
なによしです。

おお!皆に祝福されてる感じでいい流れですね!このままラブラブモードが続いてくれればいいなあ、と良心的な心が言っています…(笑)ヒョヌさんの様子が・・・?とも思いましたが、杏子さんが言うなら「大丈夫」ですよね!こうして皆にカップルとして認識されれば、愛の営みも不自然な事とは誰も思いませんよ!大人だし!
いや、待てよ・・・コウジさ(ry
・・・・・最近ずっとコウジさんがどう動くのか気になって・・・・でも、なかなか動きを見せない・・・うう・・・・焦らされている!?(笑)
修平さんと杏子さんの衝撃的な前回のラストも気になるし・・・・・!
いろんな意味で目が離せません!
次回も楽しみにしています!
なによしさん、こんばんは^^
なによしさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます^^
女の子は、こういうことに敏感ですから^^
浮気も勘づくのは女性の方だと思いますよ~~(笑)
ヒョヌはね~~^^ま、今回は相手がリョウコちゃんですから^^
さすがに拗ねたら大人気ない(笑)
そんなことより、ヒョヌにはやらねばならないことが待っているので。
次回からが、この章の本題です!^^b
色んな意味で楽しんで頂けると嬉しいです♪
  • 2011/11/09 01:48
  • YUKA
  • URL
ふふ。ヒョヌさん、なかなか大変そう(笑)

女の子ってひとの恋話(コイバナ)が好きなんですよね(私も例にもれず… ^^;)。でもリョウコちゃんとエリちゃんが優奈ちゃんとヒョヌさんの恋を祝福するようないい子で、良かった ^^

おっと。
次回、本題ですか!楽しみだなあ~♪
Re: 西幻響子さん2
西幻響子さん、おはようございます♪
コメントありがとうございます^^
恋バナ。。。好きですね^^女の子の方が、応々にして勘もいい!^^
2人はいい子ですよ~~^^杏子に懐くぐらいですから。
優奈のライバルは、もっと先ですね(笑)……っているのか?^^;
本題。。。伝わるかドキドキ*^^*
これからちょっとだけ色々あってから、episode・0が入ります^^
読んで頂けたら嬉しいです*^^*

  • 2011/11/09 07:57
  • YUKA
  • URL
こんにちは~。

女の子のコイバナ、楽しいですよね♪
こういうキャッキャッとした雰囲気、
高校生に戻った感じがします~。

ヒョヌくんと優奈ちゃんのもっとラブラブしたトコ見たいな(期待)
でも、コウジくんの今後の出方も気になる……。

あ~、思いっきりコイバナしたいッ!!!
……もう出来ないけど(シュン)
滝元 真那 さん
滝元 真那さん、こんばんは^^
コメントありがとうございます^^
恋バナ。。。いいですね~(笑)
キャッキャッした雰囲気、伝わりましたか?^^嬉しい*^^*
ラブラブな2人(笑)ラブラブが少ないんですよね~~ウチの子たち。
ラブラブにしようとすると、ヒョヌがすぐ狼に(爆)
えぇ~~恋バナしましょうよ!――私も小説の中でですけど~(笑)
  • 2011/11/09 16:36
  • YUKA
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