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誓約の地/漂流編・79<特別(2)>


誓約の地/漂流編・79<特別(2)>







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 カズヤが優奈とヒョヌに相談をしている頃――

 午前中の作業を終わらせて昼食を終えたケイタ、コウジ、ツヨシ、修平は、いつものように浜辺でビーチバレーに興じていた。



 すでに少し日が傾き始めている。

 潮風が幾分涼しく感じられる頃、3試合ほどを終えてみんなで休息を取ることにした。

 その間に修平は1人で海に向かう。

 まだ運動するのかと呆れるケイタ達にすぐ戻ると声を掛け、熱くなって汗をかいた体を冷やそうと暫く泳いだ。

 この島の周囲はぐるりと岩に囲まれていて、その岩までは遠浅の海が広がっている。

 この遠浅の海で泳ぐには、島から離れてかなり先まで進まなければならない。
 
 島から外れるのは危ないからと優奈に止められていた。

 そのため、島をぐるりと囲むように連なる岩より先には行かないようにして、穏やかに揺れる海を島と並行するようにしてひたすら泳いでいく。



 修平は、あれから杏子と時々肌を合わせていた。

 実際、杏子のあまりの良さにあの浜辺での一夜でさえ、途中から夢中になり我を忘れたほどだったが――

 それでもその後の関係は恋人というわけでもなく、非常にあっさりしたものだった。

 これは杏子の性格によるところが大きい。

 時々気が向くとさり気なくどちらかが誘い、身体を重ね、時間を共有した。

 少し泳ぎ疲れて海に漂うように浮かんでいた修平は、杏子との関係に苦笑する。

「なんなんだろうな、この関係は」


 優奈が好きだった。本気で手に入れたいともがいていた。

 でもそれは叶わなかった。

 あの沈みこんでいく心の闇は、自分自身が真っ黒に染まっていくのではないかと危惧するほど抗《あがら》いがたい力を持っていた。

 あの後の杏子との一夜で、何だか少し救われた気がしている。

 しかし――


「だからってなぁ」

 燦々と降り注ぐ太陽に目を細めながら、修平は自分の行動を自重気味に笑った。

 本気で好きになった女との恋に破れて傷ついていたとはいえ、その想いを抱えたまま彼女の親友と寝るなんて、自分も随分節操がないなと苦笑する。

 しかもその関係はずっと定期的に続いているのだ。


 修平は杏子の持つ独特のオーラに癒されたと感じていた。

 苦しく切ない想いから逃れたくて、縋《すが》るように抱いた杏子は自分を救ってくれたと。

 あれから暫く経って、ヒョヌとの会話も増えていった。

 日本語を勉強しているヒョヌとは、最近ではほとんど問題なく日本語で会話が成立している。

「随分仲良くなったもんだよな」

 苦笑交じりに呟いた修平は、海に漂うのと同じように思考の波に身を任せていた。

 もともと優奈のことがなければ否定する理由がないと思うほど、最初からいい奴ではあった。

 ただ――認めたくなかっただけ。



――小さいよな、俺は。


 砕け散った恋と一緒に、いつの間にかヒョヌに対するわだかまりも溶けていくように感じた。


 もともと修平は、いつまでも根に持つような性格をしていない。

 本来の彼は苦しいことも悔しいことも、皮肉や冗談にのせながら笑ってひらりとかわしてきた。

 この島に来ていつもの調子を忘れていた。

 そしてそれを取り戻した。


「らしくないって、当たってたかな」

 以前、杏子に言われた一言を反芻《はんすう》する。

 あの時掛けられた言葉の数々が、彼女が何を言おうとしていたのかが、今ならわかる気がする。

「しっかし、あいつは何者なんだ?」

 杏子のことを考えるといつもそう思う。

 ビックリするほど勘がよく、どんな時も落ち着き払っているあの態度は下手な男より男らしい。

 見た目はすこぶるつきのいい女に見えるのに、中身がまるで豪胆な猛者のようだと思った。

「何でもお見通しって感じだもんな」

 独り言を呟きながら苦笑する。

 しかし、打てば響くような会話も無駄を省いたような言い回しも、決して嫌ではない。


 実らなくても思い残すことはないと思えるほど、精一杯優奈が好きだった。

 それでも、優奈を見ると最初の頃はキリキリするような痛みを伴っていた。

 でも自分を取り戻した。

 優奈とヒョヌを見ても、前のような感覚はいつの間にかなくなっている。


 俺は結局――らしくない自分が一番怖かったのかもしれない。 



「……俺の恋は終わったんだな」


 それが少し寂しいような、ホッとしたような、そんな感覚だった。


















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Comment

YUKAさんおはよぉ~ございます♪

いい、いいよ、それでもねっ!
修平くんもいつかは気持ち切り換えなきゃ
いけない時期が来るんだし
それが杏子さんの後押し(複雑だけど…)で
気持ち切り換えられたそれだけでも
救われてる「何者なんだ…」←う~ん。。。
修平にとっては救世主かも*^^*
  • 2012/01/27 09:16
  • 奏響
  • URL
奏響さん
奏響さん、おはようございます^^
コメントありがとうございます♪

ですよね!修平にも愛の手を~~~(笑)
杏子の心情はまだ明かせませんが(ネタばれなので)
これで、ベースがでそろいました^^
次は主役の2人ですね~~~

これは小説。拙いながらも小説!
幸せはそんなに長く続かないのです!!(ぇ?
  • 2012/01/27 10:11
  • YUKA
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • 2012/01/28 21:02
鍵コメさん
鍵コメさんこんばんは^^
コメントありがとうございます♪
わぁ~~~~全部読んでくださったんですか?ありがとうございます><

白反転、真似っこしました^^




>「キャラが立っている」

おお!何という嬉しいお言葉~~~(〃'∇'〃)
寝不足ではないでしょうか?大丈夫ですか?^^
無人島でのサバイバルな状況を感じてくださってありがとうございます♪


> きっと入念に調べられたんだろうなあ・・・という妊娠にまつわる医学的見地からの杏子さんの台詞や、韓国と日本の事情、関係、韓国独自の概念「オッパ」・・・等。冒頭の優奈さんのペットボトル湯たんぽでもそうでしたが、これらの事がさりげなく描写されているので会話が中心になりつつすごく読みやすいのに説得力も同時にあって非常にバランスのとれた作品だなーって思いました。


ありがとうございます!!
ペットボトル湯たんぽ――これは遭難中での低体温症についての医学知識からヒントを得ています。
状況が状況なので、ここで出てくる病気や怪我は、医療道具が無い状態で改善できるものが基本ですので。
低体温症症例についてはかなり調べました。重症度と意識レベル、医学的治療法まで^^
韓国・韓国語の知識は韓流をかじったことのある方ならわかるレベルではありますが、一応、語学の勉強と訪韓もしたんです(笑)
ヒョヌは芸能人設定なので、ファンミと呼ばれるイベントに潜入したり(笑)ドラマなども一応何本も見て書かせて頂いているのです^^

小説を書く場合(人によると思うのですが)やはりかなりの知識を必要とするので、調べることの方が書くより時間を取られる気がします。
イメージ先行で書き始める方と、プロットを作って書く方といますが、長編小説の場合はプロットが無いと破綻するかと^^;;
私事ですが、1行書くのに丸3日下調べにかかったりするので、非常に効率が悪いというか^^;;
稚拙小説ではありますが、愛情と頑張りだけはプライスレスです(笑)

そして、貝殻集めのシーン!!気に入って頂けて嬉しいです^^
映像で浮かんで頂けるのは嬉しいです!さすが、漫画を描かれる方ですね♪
そうです!修平はいい奴なんですよ~~

実は改稿前の修平は不人気でした。あの<哀悼>はお話しにあったのですが、恋愛小説としては重いかな?と思って、黙祷のシーンと合わせてシーンの掲載を後で入れていたんです。
そうしたら、嫌味な男になってしまって、修平のずるさだけが強調されてしまったんですね。
ヒョヌを目立たせるという意図もあったのですが思った以上に伝わらず、そうなると今後の話しが破たんするので、本来入れるべきところに入れ直した感じです^^

R指定分は、成人男女の場合避けては通れないので(笑)喜んで頂けて嬉しいです(〃'∇'〃)
今後も出てくるのですが、最近「優奈=YUKA」のようなイメージを持たれている方が多く(笑)
とても嬉しいのですが、R指定を書きづらくなるというジレンマに陥っております(笑)
ま、どの部分も私の一部には違いないのですが~~^^

杏子と修平は、まず優奈とヒョヌとの対比もあります。
主役2人が純愛っぽく始まっているので、身体から入る恋愛もありという方向性で。
杏子の恋愛のとっかかりが純愛ではないなという感じです。
杏子はどんな意図を持っていたのか――ネタばれになるのでそのうちに明かしますが、杏子姐さんなりの想いがある――はずです(〃'∇'〃)

優奈と杏子は、ただの友情ではないですね。
なぜあそこまで優奈に拘るのか――2人の関係は過去にあります。そしてそれは漂流編が終わった後の、追憶編で明かされる!!はず(笑)
上手く伝えられるといいなぁと思います。


優奈の心情――気付いてくださいましたか?^^
彼女の人間形成と、バカがつく程の思いやりと行動力は、やはり過去に鍵が^^
そしてヒョヌ――こちらは、その先で明らかに。。。とまぁ、先はまだまだ長いです(笑)
コウジは、壊れていきますよ~~
そして島の謎。これは最大の難関です!もう必死です(笑)
上手く伝えられるとですが^^色々伏線を張っているので、回収できるように頑張りますね。
あ、そういうこと!!と言って頂けるように(笑)

基本的には「誓約の地」はハッピーエンドを目指しています。
読者様がいるのでそれが励みです!読んで楽しんで頂けることを目指して^^

いえいえ、もう好きなことを気軽にコメントしてくださって大丈夫です。
むしろ、ご自身の感想が嬉しいです。
基本的には自分の描きたい世界を描きますが、読んでくださる方を常に意識して書いているので、反応を糧にして描写を追加したり表現を変えたりはしています。
より伝わり易くなればいいなと思っているんです*^^*
純愛カテゴリーでエントリーしていたせいか10代の閲覧者も結構いるので、その辺の兼ね合いも難しいところですけどね。


もともと私自身が完全な素人ですから、小説書きとしてのルールとか思いっきり無視してたり、タブーを犯してたりするので(笑)今更直せないほどに~~~^^;;
本来新人は、登場人物を2人、多くて4人が限度だともいわれています。それが私は16人(笑)
人称も三人称で多視点という、難しい展開にしているので^^;;;

こちらこそ、読んでくださった上にたくさんの感想を頂けて本当に嬉しいです!!
感想を読んでまた頑張ろうと思っています。ありがとうございました♪

  • 2012/01/28 23:52
  • YUKA
  • URL
  • Edit
のおおおおおおお!!

ここで続きは修平エピソードに!!!
カズヤの相談がものっそい気になる傍ら、
修平のエピにも釘付けでした。
その後、杏子姐さんとどーなったのか?とか。

さすが、私の姐さん。
人気キャラ投票したら絶対ベスト3入りするよね。

修平が杏子姐さんに癒しを感じる気持ちが凄く分かるの。
上手く言えないんだけど私も同じ様に彼女に癒しを感じます。
ヒョヌとはまた違った感じで優しく厳しく
優奈を守ってるよね。
そんな杏子姐さんが凄く好きだ+゜。*゜+
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