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誓約の地/漂流編・59<楽園(2)>



大きく揺れ出す様々な想いの始まりは、小さなイベントだった。


遭難中に抱える、不安とストレスの解消が目的の水着選び。

それが思わぬ歪みを生みだしていく――





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「だから、若干ふて腐れてるのか」

 水着を選びながら、優奈から事情を聞いた杏子は苦笑した。

 つられたように優奈も苦笑いする。

 エリとリョウコは選び終えて、着替えるために一旦教会へ戻った。

 杏子がお膳立てしてやった久々のデートに修平の邪魔が入ったと聞いて、ヒョヌの不機嫌さに納得した。

 あの日――

しばらくして戻ってきた優奈と、後を追いかけるようにしてついてきた修平に、杏子は内心びっくりした。

一人で戻ったヒョヌに『どうしたの?』と声をかけると、『別に』――そう言って逃げるように行ってしまったのだ。
 
「それは、穏やかじゃないわよねぇ」

「まぁね」

「優奈も残念だったんでしょ?」

「ん――」

「そりゃあ、そうよねぇ」

「タイミングが良いって言うか、悪いって言うか」

 苦笑する優奈に、杏子は笑いながら答えた。

「どっちも本気だから、あなたに起こる事が無意識にわかる。
 だからまるで知っていたかのように邪魔をする事になるのよ。
 相手と優奈が上手くいくってことは、自分と優奈の危機だから本能でわかるんじゃない? 
 今はまだ優奈をめぐってバッチバチだもの」

 楽しそうに笑う杏子の言葉を聞いて、優奈はちょっと引っかかった。

「ん? 今はまだ?」

「ん――。意外と気が合いそうな気が、してるんだけどね」

「そう?」

「そう。タイプは違うけどね」

 そう言って、杏子は楽しそうに微笑んだ。

 みんなから少し離れてソンホと話しているヒョヌを見ながら、優奈はため息をつく。


 想いが通じて付き合うことになってから3か月になった。

 優奈は、彼の傍にいるだけで毎日が幸せだった。

 時々、掴みどころのない不安が襲ってきても、彼のおかげで乗り越えられている。

 そして同時に、日々の生活が忙しくなった。

 生活拠点が移ったことで、共同生活を上手く機能させるルールも考えなければならない。

 語学教室も始め、その教材作りも忙しい。

まとめ役を引き受けた以上は出来る限りみんなの役に立ちたい。

 しかし、頑張れば頑張るほど必然的に『2人きりの時間』というのは、確保しづらくなっていく。

 普段のヒョヌは非常に協力的で、それについて何も言われない。

 しかし最近は、邪魔の入ったデートのせいで少々機嫌が悪い。

「まぁ、当然だけどね」

 物想いに耽るように考え事をしていた優奈に、杏子が肩をすくめて声を掛けた。

「ん?」

「そろそろ、優奈が欲しいって考えても」

「ん――」

「もしかすると、片想いだって思い込んでいた頃より辛いわね」

「そんなわけないでしょ!」

「優奈はね。ヒョヌさんは、そうもいかないわね」

「…………」

「ただでさえ共同生活で2人になることは難しいんだから、意識して作らないと無理よ?」

「わかってるけど、色々やることがあるからなぁ」

「まぁね」

「しかも、そういうことって――」

「ん?」

「ほら、完全に2人きりにならないとっていうか……」

「そうよね。……まぁ、見て欲しいって趣味の人もいるけどね」

 杏子の発言に、優奈はビックリする。

「え? そんな趣味ないってば!」

「わかってるわよ」

 苦笑する杏子に、優奈はちょっと考えてから口を開いた。

「――そういう趣味、ってこと?」

「何が?」

「オッパが」

「…………」

「え? そうなの?」

 何を勘違いしたのか、1人でとぼけた方向に話が進んでいく優奈に杏子は脱力した。

「何で私が、ヒョヌさんの性癖まで知ってるのよ!」

「あ、それもそうね」

 思わず口走った自分の発言に苦笑した優奈を見て、杏子は意地悪く笑った。

「調べてこいって言うなら、調べるけど?」

「え?」

「そのためには一度してみないとかもだけど、いい?」

「いい!」

「あら、してもいいってこと?」

「しなくて、調べなくていいってこと!」

「そう?」

「もう! 止めて」

 何を言うんだと呆れる優奈に、杏子は誰のせいだと言い返す。

「だったらちゃんと時間を作ってあげなさいよ。優奈が悪いことしているわけじゃないから、無理言いづらいでしょ?」

「わかってる」

「普通の付き合い始めと違うからね。これだけ近くで過ごしていたら、まぁそんな気分にもなるんじゃない?
 そんなに変なことじゃないわよ?」

「でも、場所が……ね」

「どこでもいいじゃない」

「えぇ? だからそれは――」

「そんなこと、優奈が考えなくても彼が考えるわよ」

「そう、かな」

「きっと、今はそればっかり考えてるわよ?」

 中高校生じゃあるまいし、ちょっと情けないと呆れる杏子に優奈も苦笑する。

 どうしようかなぁと呟いた優奈を見て杏子は肩をすくめた。

「盛り上がっちゃうかもね」

「――何が?」

「水着姿見たらね」

「――――」

「御機嫌取るために、頑張って選んだら?」

「水着?」

「そう。言ったでしょう? 喜ぶわよ」

「喜ぶかなぁ」

「喜びそうなのを選びなさいよ」

 苦笑する優奈を横目で見ながら、杏子は揶揄するようにくすりと笑った。

「次は、確実に続行するかもね」

「ん?」

「たとえ場所を変えてでも、優奈を放さないでしょうねぇ」

「そう、かな?」

「あの様子じゃあね。――着けてもらってね?」

「…………」



















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Comment

こんばんは!なによしです。
き、杏子さん・・・・!!
いや、それは当然だが!スッパリ言い放ってしまわれた!!きゃあああああ!大胆です姉さん!
これからそういう方向に向かっていくことをニヤニヤしながら見守っていますとも!
しかし修平さん、やはりエスパーか・・・
いや、本能で察知しているのだろう・・・!
ヒョヌさんのご機嫌ナナメも気になるし、目が離せません!!毎回楽しませてくれてありがとうございます(#^.^#)
応援しておきました!
なによしさん、こんばんは^^
なによしさん、こんばんは^^
そう言う意味です!(キッパリ)
修平だけでなく、ヒョヌも見ちゃってますからね~~^^
こやつら、遭難を忘れて優奈ばっかりです(笑)
まぁ――そうしてくれないと、恋愛小説が進みませんけど^^;
いつも応援ありがとうございます^^
私もまた、遊びに行きますね♪
  • 2011/10/25 02:07
  • YUKA
  • URL
こんにちは、チョコです。
先日はお騒がせ、ご迷惑おかけしました。
本当にごめんなさい><

本日はお休みなので心置きなくゆっくりと本編を堪能出来ました〜。
「水着」のシーンなんかが出て来てちょっとドキドキです。
水着もドキドキなんですが、
ヒョヌ...最近ちょっと狼化して来てますね^^
それはそれでカッコいいな〜と思う私ですが、
優奈を困らせたり、傷つけたりするのは避けて欲しい..。
気分は何だか杏子姐さんです。

杏子姐さん...もう登場する度に素敵度が上がってます☆
チョコさん、こんばんは^^
チョコさん、こんばんは^^
いえいえ、こちらこそです。
お休みだったんですね。お疲れ様です♪
水着^^
これがキッカケでね~~ヒョヌがね~~……(自主規制
大丈夫ですよん^^
ヒョヌは優奈をかまうのが楽しくて仕方ないんですね~~
杏子姐さんと、実は同じ。。。はず!
実はああ見えて「S」、杏子姐さんも「S」――優奈は「M」(笑)

本当はツンデレが好みなんですが、もう、ヒョヌには望むべくもなく^^;;;
仕方ないので、彼には甘甘、メロメロ、エロエロになって貰おう(願望)
――って、私が書いているんですけど。
本編と係わらないメロメロは、そのうちepiで上げようかとも思ってます^^
チョコさんは杏子姐さんファンですね^^嬉しいです*^^*
優奈を見守ってやってください♪
  • 2011/10/25 18:32
  • YUKA
  • URL
なんとか時間ができたので読みに来ました。

杏子さん……。

あなた完全に「事態を楽しんでる」だろう!(笑)

ある意味悪魔や、ほんまもんの悪魔やっ!(爆笑)
ポール・ブリッツ さん
ポール・ブリッツ さん、こんばんは^^
忙しいのに、本当にありがとうございます。
あはは。
楽しんでますよね~~
天使(優奈)と悪魔(杏子)の物語(←色々間違い)
杏子の優奈弄り……一番楽しんでいるのは私かも~~(笑)
  • 2011/11/05 17:41
  • YUKA
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