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誓約の地/漂流編・54<悪態(2)>



たまには一緒に過ごしたい!2人っきりの時間が欲しい!


みんなのためにと奔走する優奈を応援しながらも、


恋人同士の時間が欲しいヒョヌは……




ヒョヌ、念願の2人っきりになることが出来るのか?





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「勘よ。私の」
 
 それが全てだと得意気に微笑む杏子を見て、ヒョヌは肩を落とす。

 確かに、杏子の勘は侮れない。

 短い付き合いだが、それはヒョヌにもよくわかっていた。

 しかも、これを言いだした杏子は決して引かないし、優奈は杏子の勘を全面的に信じている。


――ダメってこと、だよな。


 付き合っている自分の彼女とその友人に、こんなに苦労するのは初めてだ。

 彼女と2人で時間を過ごすと言うのは、こんなに大変なことだっただろうか?

 杏子の勘は外れないの――

 そう言って、嬉しそうに笑った優奈を思い出して項垂れた。


「それとも、経験って言った方が納得する?」

 だからもう少し待ってくれという杏子に、ヒョヌは脱力する。


――もう、いい。


 話は相変わらず、堂々巡りだ。

 杏子の意見を無視することも出来なくはないが、彼女の意見にどこかで同意している自分もいる。

 それが何故なのかわからなくて、よけいイライラする。

 しかし2人になりたいという自分の動機が少々不純だと自覚もしているので、あまり強くも言えない。

 ため息をついて、もうしばらく様子を見ようとその場を去ることにした。

「気持は、わかるけどね」

 杏子は苦笑しながら、ヒョヌの後姿を見送った。

「でもまぁ、休息も必要よねぇ」
 
 内心不貞腐れているヒョヌに笑ってはいたけれど、優奈のあまりの忙しさにも呆れてしまう。

 まして、彼氏の必死の誘いを断るとは、何事かとも思う。
 

 杏子は、思わず笑ってしまった。

 ヒョヌと優奈は似てる。

 内心愚痴りながらも、もともと真面目だったり、世話好きだったりするのだろう。

 なんだかんだと文句を言いながら、それでも杏子との約束を反故にしようとしないのは、彼がフェミニストなうえに、一度交わした約束は守るという意志表示。

――だからこそ、ワザワザ確認に来る。

「とことん、女性に甘いのかしら」

 そんな事を考えて笑みを深めた。

 もともとの性格もあるのだろうが、彼女になった優奈やエリとリョウコはともかく、傍若無人な受け答えをする杏子に対しても、一歩譲っている。

 彼の国は、日本以上に上下関係にはうるさいはずなのに、だ。

 その言動と同じように、彼は行動でも他の人に気付かれるようなへまはしなかった。

 日本語を習得してからは、男女問わず面倒を見ているし、エリとリョウコへの対応を見ても、非常に紳士的で扱いも上手い。

 そこはさすがに女性ファンの多い有名俳優、といったところか。

 ヒョヌが優奈を気遣い、心配して努力していることは見ていればわかる。

 でも、たまにはちょっと2人で話したい、ゆっくり時間を共有したい。

 こんな生活だからこそ、息が抜ける時間が欲しいと思うのも、別におかしなことではない。

 例え、少しばかり動機が不純だとしても。


「優奈が相手だと、ヒョヌさんも苦労するわね」

 手がかかるカップルだと苦笑しながら、ヒョヌのささやかな願いを聞き届けてやるのは悪くないとも思う。

 我慢ばかりは体に毒だ。




 杏子は、さりげなく2人にしてやろうと画策する。

 杏子と優奈が親友であることは、周知の事実。

 杏子が女同士でと言えば、ヒョヌよりは上手く連れ出せる。当然、優奈に有無は言わせない。

「自分の彼氏の面倒ぐらい、自分でみなさい」

 そう言って自分が連れ出し、別の場所でヒョヌと合流させる。


 1日の作業が落ち着いた午後、時間を見つけては――

 作って貰ってはとも言うが、2人で探策という名のデートを重ね始めた。

 







     ***










 森の奥に少し開けた丘があった。

 いくつかの岩が点在し、森の木々が木陰を作る涼しい場所。

 小さな花がところどころに咲いていて、日差しを除けば南の島というより高原のようだ。

 優奈が大きく息を吸って、その景色に感嘆する。

「可愛い場所ね」

 ヒョヌを見上げる優奈は、子供のように楽しそうだ。

 ヒョヌはちょっと得意気に笑うと、優奈の頭にポンと手を乗せる。

「この間、散歩して見つけた」

「結構、散歩しているんだね」

「ん――、色んなこと考えるのにいいんだよ。探検がてら」

 優奈は、苦笑するヒョヌを不思議そうに見上げる。

「何? 考える事って?」

 首を傾げる仕草が可愛らしく、そんな事を思う時間に幸せを感じながら、ヒョヌは少し考えてから口を開く。

「……優奈は誰が好きなんだろう」

「え?」

「僕はどうしたいんだろう――ってね」

 ヒョヌは空を見上げた。

 強い日差しは囲まれた木々のおかげで少し柔らかくなり、時々吹く風に揺れる葉の間から射しこんでいる。

「修平と2人でいるのを見たくなくて、よく逃げてた」

 手をかざすことで眩しく感じる光を調節しながら、ヒョヌは空を見上げたまま笑う。

「そうなの?」

「修平が優奈を好きなのは知ってたから。急に近づいた2人に動揺したりして、ね」

「何でもなかったのに」

 そう言ってはにかむ優奈を、ヒョヌ横目で見ながら口の端で笑った。

 優奈の心臓がどくんと動く。

 その視線が冷たいのは、気のせいではないようだ。

 何だか嫌な予感がして、ヒョヌの顔を心配そうにのぞき込んだ。

「――オッパ?」

「見ちゃったからね」

 そう言って、意味あり気な視線のまま小さく笑ったヒョヌに、なぜかどきりとした。

「ん? 何を?」

「僕を振り払った後、修平に抱き締められてた」

「――――!」

「森の中で」

「あ、あれは!」

「抵抗もしないで、そのままだったな」

「――――!」

「キス、してた時もあったかな?」

「あ、それは――」

「そのあと、優奈は僕を避けてたでしょ? 修平と付き合ったのかって、そう思ったりした」

 意地悪く笑って答える彼に、優奈は一瞬、なんて言えばいいのかわからなかった。

――奇妙な沈黙が続く。



 
「――――どう、思ってた?」

「え?」

「本当は」

「本当は?」

「僕と修平――」

「えぇ?」

「ちょっと、迷ったりした?」

「迷う? そんな――」

 考えもしなかったと続けようとして、ヒョヌの視線に気付いた。

 拗ねてるような、呆れているような、そんな視線に疑われてるのかと動揺した優奈は、益々慌ててしまった。


――そんなこと、出来るわけがない。


 心で叫びながら、しかし事実をどう説明すればいいのか。

「実は、修平と付き合おうとしてた?」
 
 優奈は慌てて声をあげる。

「ち、違うの!」


















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Comment

今晩は
う~ん 続きを拝見しないと

コメントができない感じですかねw

今コメントを入れると

間抜けなことを言ってしまいそうでw
  • 2011/10/20 00:13
  • いちごはニガテ
  • URL
いちごはニガテさん、 おはようございます^^

大丈夫ですよ^^

いつでもお待ちしてます
  • 2011/10/20 10:24
  • YUKA
  • URL
こんにちは、なによしです。
温かいコメント、嬉しかったです(´;ω;`)

これはまた続きが気になりますね!
やっぱり修平さんとのキスがヒョヌさんの心に残っているのですね・・・

優奈さんが好きなのはヒョヌさんなのに・・・

続きが気になります!
応援していますね(#^.^#)
こんにちは、チョコです^^

ついに本編追いつきましたよ〜〜。
1日1話目標があまりの面白さに我慢出来ず
ここまで読んでしまいました〜〜><
し...しかも凄く良い所で続いてる!!
さらに何だかヒョヌのメンタル面が不安定になってる!!
お願いだから優奈を傷つけないで!!
ヒョヌに泣かされた優奈は見たく無い。:゜(;´∩`;)゜:。
せっかく通じ合った2人がこんな事で喧嘩とか嫌だ〜〜><
しかも修平絡んでるし!!
(でも恋愛ってそんな風になってしまうものですよね。
相手を想い過ぎるあまりに間違ってしまったりとか...)

優奈を泣かせると
杏子姐さんが黙ってはいないと思う....;´Д`);´Д`);´Д`);´Д`)

チョコさん、こんばんは^^

早いですね!!
ありがとうございます^^
お忙しい時間を縫って来て頂けて、泣きそうです^^

今回のヒョヌはね~~
ただ、優奈が欲s(殴  (←自主規制)

このクール。。。じれじれヒョヌをお楽しみください^^


結局、杏子姐さん頼みのこの2人。
ヒョヌはいつまでヘタレなのだろう。。。
  • 2011/10/20 17:40
  • YUKA
  • URL
なによしさん、こんばんは^^

順番を間違えてコメントしてしまいました^^;;
申し訳ありません(汗)

いつもありがとうございます^^
ヤキモチですね、完全に(笑)

頑張ります!
これからもよろしくお願いします^^
  • 2011/10/20 17:44
  • YUKA
  • URL
うーむ。
ヒョヌさん、とうとう不満がたまって優奈ちゃんにうっぷんをぶつけだしちゃいましたね ^^;

まあ、気持ちはわかりますが…。
男のひとってどうしてこう、性急なのでしょう(笑)

相変わらずのまっとうで正統派の描写力。YUKAさんの小説って、だから安心して読めるんですよね。

ところで、「お詫び」の記事を読んだのですが…トラブル?どうしたのかな?
ちょっと事情がわかりませんが、少しでも早く復旧(?)できるといいですね ^^
西幻響子さん
西幻響子さん、こんばんは^^
読んでくださってありがとうございます^^
もう、ここまで来ましたか(笑)
追いついちゃいますね~~^^b
そうですね。男ってやつぁ~~~(笑)
あ! また褒められた(笑)もう、優しい~~^^そして嬉しい♪
システム上のトラブル。。。って感じです。
ブログのせいではないんですが、
PCが風邪をひきそうで勝手にシャットアウトしやがりました^^;
そのおかげで、感染することなく(笑)
全く、賢いんだかダメなんだか^^;;
ご心配ありがとうございました♪
  • 2011/10/29 17:22
  • YUKA
  • URL
ヒョヌさん、その話題を蒸し返すのはちょっとこの場ではなんだと思うぞ(^^;)

優奈の心がずたずたになっちゃうぞ(^^;)

いいのかなあ。でも面白いからまた続きを読むか。
ポール・ブリッツ さん
ポール・ブリッツ さん、こんにちは^^
あはは。
我慢できなかったんでしょうね~
ヤキモチ焼きヒョヌの本領発揮~~
いつも読んでくださってありがとうございます^^
  • 2011/11/01 14:49
  • YUKA
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