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誓約の地/漂流編・35<告白(1)>


優奈への想いが、日に日に強くなっていくヒョヌ。


彼女の気持ちを掴めず、煮え切らない自分に耐えきれなくなった彼は……





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 白々と夜が明け始める頃、優奈はなんだか目が覚めてしまった。


 起き上がると、火の番をしながら物思いに耽っていたヒョヌと目があった。

 散歩するという彼につき合って、みんなから離れた東側の例の岩場まで歩く。

 彼はそこを登るわけでもなく、岩肌に寄りかかり海を見ていた。

 何をするわけでもなくそこにいるだけなのに……まるで一枚の美しい絵画を眺めているような気分。


――さすが芸能人!


 変なことに感動して、近くにいるのにやっぱり遠い人なんだなぁと改めて思う。

 今、私がそんなこと考えてるなんて想像もしないんだろうな。

 ヒョヌを見ているうちに泣いてしまいそうになり、優奈も黙って海を眺めた。


 入れ替わるように優奈の横顔を暫く見つめてたヒョヌは、手元に視線を移して自嘲したように笑いながら切り出した。



「彼は彼氏?」

「…………?」

 彼とは誰のことを言っているのかわからず、優奈は一瞬戸惑った。

「もしかして、修平くんですか?」

「そう」

「ち、違います!」

「…………」

「どうして?」

「なんとなく。優奈さんの好きな人?」

「いいえ!」

「ホント?」

「はい! 全く事実無根です!」

「事実無根、なんだ」

 突然どうしたんだろうか。

 静かに笑いながら海を眺めているヒョヌの瞳は、下ろしている前髪に隠れてしまってわからない。

 しかしひっそりと佇むその姿が何だか凄く淋しげで、優奈はなんだか不安になった。

「なんでそんな事?」

「彼は優奈さんが好きなんだよね。初めて会った時からすごい剣幕だったから。言葉はわからなかったけど、優奈さんをすごく心配しているの伝わってきて――」

「あれは、私が約束を守らなかったからです。彼とも前日に会ったばかりでしたし。ただ、同い年ってことで親近感があったみたいで」

「呼び捨てで」

「あれも! たぶん同級生の感覚なんだと思います」

「そうか、そうかもね」

 また急に黙ってしまったヒョヌを見つめながら、優奈は更に泣きたくなった。

 誤解されたくなくてあわてて否定したが、誤解だろうとそうでなかろうと何も関係ないのだ。

 急に一人であわててる自分が馬鹿みたいに思えてきた。

「……ヒョヌさん、今日は森の探索ですよ」

「そうだね」

「ちょっと、楽しみ」

「……何が?」

「なんか、インディジョーンズみたいでしょ?」

「…………」

「滝とかあるあもしれないですよね?」

「優奈さん」

「はい」

「1つ約束してほしいんですけど」

「何ですか?」

「何かしようとする時、したいと思った時は1人で行動しないこと。必ず僕に言ってください」

「はい」

「危ないから、僕から離れないで」

「……はい」

「……ホントにわかってます?」

「はい」


――僕から離れないで。


 ただのパートナーとしての言葉だとわかっているのに、ヒョヌのそんな一言にドキッとする。

 背をかがめて笑いながら念を押す彼が、首を傾けた拍子に前髪がふわっと揺れ動いて綺麗な瞳にかかった。

 前髪の間から覗く瞳は、朝焼けに照らされてキラキラ輝いてみえる。

 心臓の鼓動が早鐘を打つように速くなっていく。

 それを気付かれたくなくて、優奈は慌てて話題を変えた。

「そうだ。私もヒョヌさんにお願いがあるんですけど」

「……何ですか?」

「私の方が年下ですし……そろそろ、私に丁寧語はやめてもらえませんか?」

「…………」

「ダメ、ですか?」

 黙ってしまったヒョヌに不安になったのか、優奈は少し首をかしげて答えを待っている。

 少し遠慮がちに聞いてくる優奈の笑顔を見て、少しだけ考えるふりをする。

 それからいたずらを思いついた子供のような笑顔で切り出した。

「優奈が僕をオッパって呼んでくれるなら、そうしよう」

「――――!」



『オッパ』

 日本語で、しいて言えば「お兄ちゃん」

 韓国では、血縁のない年下の女性でも、親しい年上の男性を呼ぶ時『オッパ』という。

 オッパと呼ぶことが恋人の証ではないが、親しくなければ、親しくなりたくなければ呼ばない――

 まして、本人から呼んでほしいとは言わないはずだった。

 本人からの申し出なので、もちろん優奈に異論などないのだが、どういう意味でヒョヌがそう言ったのか図りかねて一瞬言葉に詰まってしまった。

 彼はスターだし、呼ばれ慣れているのかもしれないと1人納得する。

 たいした意図はないのかも――――そう思っても心が弾んだ。




「……いい?」

 再度そう聞かれて優奈は決めた。

「はい!」

 そう言って笑った優奈の笑顔は、ふわっと花が咲くような美しい笑顔だった。

『見ている方まで幸せになれる』そんな笑顔。

 ヒョヌは笑いながら左手で優奈の右頬をつまんだ。

「そろそろ、戻ろうか」

 そう言って、ヒョヌは寄りかかっていた岩肌から身体を起こす。

 優奈は軽く頷くと、ヒョヌに並んで歩きだした。




 そばにいて話をすることができる、今はそれだけで幸せ。



 そう思っていたはずだった。















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Comment

韓国語だからしかたないとはいえ、優奈の口からあんな言葉聞いたら、修平くん精神の均衡を失ってしまうような(笑)

精神の均衡を失っているのはわたしか(^^;)
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • 2011/10/25 12:54
ポール・ブリッツ さん、こんばんは^^
ポール・ブリッツ さん、こんばんは^^
修平、可哀そうに……って、私が書いてるんでした~~(笑)

Σ( ̄д ̄;
ポール・ブリッツさんのコメントで気付いた事がっ!
ちっちゃなエピを1つ飛ばしてしまった。。。大失態^^;;;
あ~~
本当にepiでUPするしかないかな。。。
  • 2011/10/25 18:18
  • YUKA
  • URL
ポール・ブリッツさん、こんばんは^^
ポール・ブリッツさん、こんばんは^^
私、基本的に非公開コメにはコメントしないのですが
今回は特別に(笑)
ポール・ブリッツさんの予想、楽しく拝見しました^^
それもありかな~~とか、思わず思ってしまいました(笑)
――が、失いません(笑)
一応、プロット作って書いているので、結末はありますが
受け入れられるか微妙~~~(自分で言ってしまった^^;;;)
今からドキドキです。。。
今日計算したら、考えている回だけで……
最終話まで、まだ1/4にも満たない(爆)
(おかしい――ふ、増えてます^^;;;)
「はぁ~~~?」と言われないように、
今更ながら、資料を見返してみたり^^;;
最終幕までお付合い頂けると、嬉しいです^^
  • 2011/10/26 00:07
  • YUKA
  • URL
勝ち目ね===。
・・・というツッコミはよしましょうか。
まあ、今にはじまったことではありませんが。
100円カップと高級カップの違いぐらいはあるかもしれませんねえ。
  • 2013/06/19 17:38
  • LandM
  • URL
LandM さん

LandM さん、こんばんは~^^
コメントありがとうございます!^^

>勝ち目ね―――

爆笑(≧∇≦)
気づいちゃいましたか。そして突っ込んじゃいましたか(笑)
もうね。この二人はぐだぐだぐだぐだしていただけですからね~~

すれ違いの両想い(笑)
バカップルの誕生~~~~

  • 2013/06/22 20:13
  • YUKA
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