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誓約の地/漂流編・33<思惑(1)>



胸に去来する様々な想いに翻弄されて、


踏み出せないヒョヌと臆病な優奈のすれ違う想い。




野生動物並の「勘」を持つ、優奈の親友杏子が模索する「真相」とは?





==============================================




――様子がおかしい。

 杏子は、ヒョヌと優奈を見て思った。

 一見いつもと変わらないが、ヒョヌが何故かよそよそしい。

 修平が相変わらず優奈にちょっかいを出しているのに、それを見るヒョヌの視線がまたおかしい。


――デートまでしたのに?


 なれなれしい修平、それをただ見つめるだけのヒョヌ。









     ***









「ちょっといいですか?」

 杏子はそう言って、ソンホの隣に座った。

「どうぞ、どうぞ」

 人好きのする笑顔でソンホが応える。

「私、あんまりだと思うんですけど」

 唐突な言葉に、ソンホはビックリして杏子を見た。

「……何かあったんですか?」

「女として見てないって言ったんですって?」

「誰が?」

「ヒョヌさんが」

「…………誰を?」

「優奈のことを」

「は? ………いつ?」

「あなたが通訳したって聞きましたけど?」

「僕が?」

 杏子から話を聞いたソンホは驚いた。

 どこでどうそういう事になったのかわからなかった。


 随分前の話だったが、ヒョヌと修平の会話はよく覚えている。

 話の内容も2人の想いも印象に残っていたからだ。

 知り得たプライベートの情報を話すことが憚られたために黙っていたが、その時の会話がかなりの誤解を招いているらしいと知ると、ソンホは杏子に経緯を説明した。


 ソンホはプロの通訳である。

 能力もさることながら、温厚で茶目っ気のある性格のためか、有名人の通訳も多かったと聞いている。

 通訳をした内容が誤解を招いたとすれば、自身のプライドにも係わるだろう。


 どうしても知りたかったとはいえ――

 憤っても無理はないような、彼のプライドに係わる疑惑を投げつけた自分の発言を、杏子は素直に謝罪した。

 杏子は、ヒョヌが優奈を女として見てないとは思っていない。

 むしろ意識してると感じていた。

 ファンだという優奈の好意を、受け流しているようにも見えた彼の想いを、この間の対決で完全に確信した。

 だからヒョヌがどう出るのか、様子を見ていたのだ。

 思っていた以上に、ヒョヌは優奈に好意があるらしい――

 それならば、自分が出ていかなくても何とかなるだろうと踏んでいた杏子は、内心盛大に舌打ちした。


――まぁ、そんな事だろうとは思ったけど。








     ***







 口を割ろうとしない優奈の様子を黙って見ていたが、10日ほど経ってとうとうしびれを切らし、杏子は本格的に優奈を問い詰めた。

「私は、優奈を親友だと思っているのに、優奈は違うのね」

「何よ、突然」

「悩み事も話してくれないなんて、水臭いわ」

「別に、悩んでない」

「まぁ! 世間話もしてくれないんじゃ、友達以下じゃない!」

「…………」

 日がたって落ち着いた優奈は、杏子に修平との会話を、なるべく平静を装って淡々と語る。

 黙って聞いていた杏子だったが、内心猛烈に腹を立てていた。


 裏がある――杏子はそう確信しソンホに確認しにきたのだ。










     ***










「伝え方に悪意を感じます!」

 ソンホは憤っていた。

 修平はあえて切り取って説明している。

 話の当事者であるから、誤解のしようがないはずなのに。


 それで、最近の優奈の様子の変化に納得がいった。

 実はソンホ、優奈のファンである。

 自分より若いのに、素晴らしい語学力と性格の良さ、見た目以上に内面を評価していた。

 だからこそ、彼女と同じく尊敬するヒョヌと優奈を、密かに応援していたのだ。



「あら? 珍しい組み合わせね」

 優奈が通りかかって2人に声をかけた。

「優奈さん!」

「――はい?」

 杏子は優奈の腕を引っ張って無理やり座らせると、ソンホはさっき杏子に説明した経緯を話した。

「…………」

「わかった?」

 ちょっと放心状態の優奈の顔を、覗き込みながら確認した。

「うん、ありがとう」

「説明にちょっと悪意がありますよ!」

 優奈の様子に、きっと随分傷ついたに違いないとソンホは本気で憤慨していた。

「でも、嘘はついてない」

「――――!」

「――――!」

「現実を見ろっていう忠告だし」

 どうやら思った以上に傷ついていたらしいと、杏子はため息をついた。

 そして杏子が思っていた以上に、本気になっていたらしい。

 憧れだけの時は良かったが、本気で好きになって突き付けられた現実にショックを受けたのだろう。

 杏子が思っていたように、優奈にとってもヒョヌは「非現実」だったのだ。

 会ってみたい、話してみたいと思っても、所詮ファンの域をでないと自覚していた。


 だが、島で出会ってしまった。

 この島での出来事自体が非現実的でも、ここでの生活は現実である。

 でもそれはいつか終わる現実。

 ある日突然、終わるかもしれない現実なのだ。

 それを思って怖くなったのだろう。

 いつか夢のように覚めてしまった後に、残される自分の想いに。



――ある意味、修平の作戦は成功ね。

 杏子は修平を認めていた。

 修平の選んだ言葉が功を奏したのは、短期間に優奈の性格を読んだためだ。

 無意識とはいえ、彼もそれくらい本気だという事。

 優奈は初めからヒョヌのファンで好意があったのだから、先手を打った気持ちはわかる。

 ヒョヌにとってもかなり的を得ていたのだろう。

 内心ヘタレ過ぎると呆れていたが、彼は予想以上に動揺して悩んでいたようだ。

 そこまではいい。

 やり口は少々姑息だが常套手段だから。

 しかし修平は、自分の想いを通すために優奈を傷つけた。

 意図せず、最悪の言葉で。



「夢はいつか終わる、か」

 杏子は無意識に震える手を握り締めた。

 その言葉に衝撃を受けて、動揺した優奈の心が見える気がした。

 どちらでも構わないかもと杏子が思えるぐらい、第一印象は2人ともいい男だと思った。

 ヒョヌが有利だとは思っていたけれど、それが絶対ではないとも思っていた。

 でも修平は、自分の想いに夢中になり過ぎて間違えたのだ。

 間違いは正さなければいけない、早急に。



「らしくないって言ったじゃない」


 それをわからせてあげる――



 杏子はそう決意した。


















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Comment

こんにちは、チョコです^^

まだまだ続きを読むつもりですが
この回でどーしてもコメント残したかったです!

ただ一言....


杏子姐さんかっこ良すぎる!!!


では、続きを楽しみます^^
チョコさん、こんばんは^^

ですね。

杏子姐さんは相変わらずです!!

読んでくださって本当に嬉しいです♪
  • 2011/10/19 00:34
  • YUKA
  • URL
杏子お姐さんかっこいいですなあ。

なんか結婚すると絶対亭主を尻に敷くタイプのような(笑)。

まさか独身なのは(^^;;;)
ポール・ブリッツ さん、こんばんは^^
ポール・ブリッツ さん、こんばんは^^
そうですね^^
尻に敷くどころか、ブンブン振り回していきそうです(笑)
まさか、独身?
杏子姐さん、まだ独身ですよ^^
  • 2011/10/24 20:08
  • YUKA
  • URL
ほんと、杏子姐さんかっこいい!
こういうかっこいい女性めっちゃ好きです。
優奈ちゃんみたいなものすごく可愛らしい~子も好きですけど。

ここ数話で思ったんですけど、どんどん心理描写が丁寧になってきてますね。
皆の考えていること、感じたことがすっと心に入ってきて、わかりやすいです。
西幻響子さん、こんばんは^^
西幻響子さん、こんばんは^^
読んでくださってありがとうございます^^
杏子姐さん、女性に人気ですね~~
心理描写――!本当ですか?嬉しいです*^^*
三人称と一人称の使い分け、難しいですね^^;;
気がつくとセリフ過多になって、シナリオになっちゃいそうだし^^;
西幻響子さんに褒められて、今日はいい日です(笑)
  • 2011/10/26 20:09
  • YUKA
  • URL
杏子姐さんかっちょよすぎですよ!

優奈ちゃんは守ってあげたいタイプだけど
杏子姐さんには守られたい!!(爆)

この擬似姉妹(?)が大好きです!
  • 2011/10/29 09:54
  • 小心者
  • URL
小心者さん
小心者さん、こんばんは^^
ありがとうございます♪私もこの2人が好きで(笑)
そう、まさにそんな感じですね^^
  • 2011/10/29 17:25
  • YUKA
  • URL
スイッチの加減の問題だと思うのですけどね。
女のスイッチをどの相手で入れて、どの相手に入れないのか。
そういう匙加減もあると思うから、結構化けると言うのはあると思います。その辺が男が分かるのか分からないのかも子どもか大人化というが分かれると思いますけどね。
  • 2013/06/09 06:50
  • LandM
  • URL
LandM さん
LandM さん、こんばんは~^^
コメントありがとうございます!!
すみません。大変遅くなりました――!!^^;

ここは杏子姐さんにかかっているって感じですね^^
優奈もヒョヌも袋小路に嵌まってしまっている感じで。

そうそう。
匙加減♪杏子姐さんの腕にかかってます^^


  • 2013/06/18 18:44
  • YUKA
  • URL
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