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誓約の地/漂流編・32<大樹(2)>



恨みっこなしのゲーム対決で

「優勝賞品」を手に入れた男と逃した男。


彼らが想いを寄せる、たった一人の女「優奈」へ

本当に近づけるのは――?





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 酷く華奢に感じる身体を抱えたまま、蜘蛛はそんなに苦手だったのかとぼんやりと考えて、そう言えば女は昆虫が苦手な奴が多いよな、と自分の記憶を反芻する。

――俺は蜘蛛が好きになりそうだ、とも。



「ま、まだ?」

「………わかってる。動くなよ? 逃げてわかんなくなるぞ?」

「早く――」

「そのまま、動くなよ?」

「うん」

 修平はあえてそのまま、優奈を抱えるようにして彼女の肩から背中を見る。

 小さい蜘蛛が、優奈の肩甲骨辺りをゆっくり歩いているのが見えた。

 右手で頭を抱えるように自分に引き寄せた後、蜘蛛をそっと左手に移して、大樹へ逃がしてやった。


「もう逃がした」

「あ、ありがとう」

「……………」

 そのまま動かない修平に、優奈は再び緊張する。

「あの、修平くん?」

「今のは、優奈からしがみ付いてきたんだぞ?」

「うん。ごめん」

「……………」

「あの――、もう大丈夫だから」

「どうしようかな? 折角優奈から抱きついてくれたのに」

「そ、それは………」

「――ん?」

「抱きつきたかったんじゃなくて」

「わかってるよ。……あれ、知らなかったんだ」

「……………?」

「海の砂が動くのが、苦手だったんだろ?」

「あ、うん」

「昨日は、ごめん」

「そんな……私も動揺しちゃって説明しなかったから」

「だから、お詫び」

「え?」

「この場所。昨日のお詫び」

「……………」

「これで許してくれる?」

「うん。あの、だから………」

「放してほしい?」

「うん」

「お詫びは?」

「……え?」

「俺が優奈の事、本気で好きなの知ってて、抱きついてきて……浮かれた俺に、その気はないから用が済んだなら放してくれって……無駄に傷つけたお詫びは?」

「……………」

「嫌いだっ言ってたから、脅かさないように黙って取ってやろうとしたのに。……ったく。あれから人が紳士的に振舞おうと努力してんのに、問答無用で疑われて避けられたんじゃ、俺の立つ瀬はね――よなぁ」

 自分を抱きしめながら愚痴る修平の笑いを含んだ声が淋しそうで、優奈はなんて言えばいいのかかわからくなった。

「まぁ、しかたないか」

「ごめん、なさい」

 修平はそっと身体を離して、優奈の顔を覗き込んだ。

 申し訳なさそうな顔をして困っている優奈がなんだか可愛くて、そのまま素早くキスをした。

「――――!」

「これで、許す」

「ちょっと!」

「お詫び」

「ち、違う!」

「じゃあ、ちゃんとやり直す」

「……………」

「していい?」

「ダメ」

「じゃあ、今のはお詫びってことにして」

「……………」

 勝手な言い分を繰り広げた修平があんまり嬉しそうで、優奈は脱力した。

「蜘蛛って良いヤツだな――」

 なぜか蜘蛛を褒め称える修平が子供みたいに笑っていて、思わずつられて笑ってしまった。

 それでももう勝手にキスはしないという新たな約束を取り付けて、キャンプ地へ引き返すことにした。






「なぜ……」

 呟くように放たれたヒョヌの声は、2人の消えた森の中に吸い込まれていく。

 いつものように散策をして偶然見つけたこの場所があまりに綺麗で、優奈に見せたいと引き返すところだった。


 突然、修平が優奈を連れて現れて得意気な顔で笑った。

 嬉しそうに微笑んでいた優奈が驚いて……



 なぜ抱き合ったのか?

 なぜキスをしたのか?

 なぜ――――?



 答えを出したくない疑問ばかりが心に浮ぶ。

 2人の会話はわからない。

 抱きしめられたまま動かない優奈を見て心が沈み、激しい焦燥と嫉妬で息が詰まる。


 昨日のデートで2人の距離が縮まったと感じたのは、自分の思い過ごしだったのか。

 浮かれていた昨日の自分が、酷く滑稽に思えた。

 近づいたと思うと離れていき、捉まえようとすればひらりと逃げていく――

 そんな思いを何度も繰り返して、その度に踏み出すのを躊躇ってしまう。


「困らせているのは………僕の方か」


 俯くようにして佇んだまま、ヒョヌは暫くそこから動けなかった。















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Comment

どうもです。
着々と読ませていただいています。
と言うことでまず一つ誤字を。

>あれから人が紳士的に振舞おうと努力してんのに、問答無用で疑われて避けられた【んん】じゃ(略)
◆消し忘れでしょうか。

すれ違い発生ですね。
これぞ恋愛ものの醍醐味! ロミオとジュリエットらへんからも続く恋愛もののセオリー!
続き、たのしみに読みに行きます。

ではではっ
Re: Re: タイトルなし
> grho 様、こんにちは^^
>
> 読んで頂いて嬉しいです♪
>
>
> はい『ん』一つ消し忘れです^^;修正しました^^
  • 2011/10/09 15:09
  • YUKA
  • URL
修平くん……。

「自分の立場」を理解したほうがいいと思うぞ(^^;)
ポール・ブリッツ さん、こんばんは^^
ポール・ブリッツ さん、こんばんは^^
そ、そうですね(笑)
彼も彼なりに必死なんですよ^^
  • 2011/10/24 18:04
  • YUKA
  • URL
あぁ~~~っ、見られてしまいましか、ヒョヌさんに!

うーむ。恋愛ドラマの王道ですが…しかし、このサスペンスがないと、おもしろくありません(笑)
これでまたヒョヌさん、引いてしまうのかな?
修平くん、一歩リード?

優奈ちゃん、可愛いですね~。ここにきて、それがひしひしと感じられてきました。
モテるのもうなずけます。
西幻響子 さん、こんばんは^^
西幻響子さん、こんばんは^^
コメントありがとうございます。
はい、見てました。
前回、修平も見てましたからね^^
共同で暮らしているので、絶対内緒は無理ですね(笑)
優奈を褒めて頂いて、ありがとうございます^^
27歳とは思えないほど、色々幼稚ですが^^;;;
きっと本人も喜んでます(笑)
  • 2011/10/24 18:20
  • YUKA
  • URL
う~~ん、この男は。
まあ、本人なりの愛情表現なんでしょうけど。
だからもてないのだ。
・・・ということになりそうな。
  • 2013/06/05 06:50
  • LandM
  • URL
LandM さん
LandM さん、こんばんは~^^
コメントありがとうございます^^

あはははははは~~
この辺での彼は……最悪ですね^^;;
実は読んでくださった方からの彼の評価は、この辺が最低でした。
いえ、まだまだ続くかも(笑)
実はもっと最低な奴がいたり、いなかったり(笑)


  • 2013/06/06 23:05
  • YUKA
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