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誓約の地/漂流編・28<対決(2)>



焦燥と嫉妬を持て余た2人の男が、ふとしたキッカケで一触即発!


殴り合いの代わりに提案された恨みっこなしのゲーム対決。



その優勝賞品は――
===============================================


  
     
 この発言に、全員が目を丸くした。


 ヒョヌと修平の一触即発の雰囲気は、優奈をめぐるものだと全員が気づいていた。

 やっと緩和されはじめたこの緊張感を、また煽ってどうするのだろう。

 巻き込まれた男性陣でさえ、どうなの? と疑問符を浮かべている。

 当然――当事者達はこの発言に目を剥いた。

「――――!」

「はぁ?」

「ちょっと、杏子!」

「いいじゃない! ゲームなんだから」

 当事者である男2人の壮絶な怒気をあっさり受け流して、杏子はやる気満々だ。

 ノリのいいカズヤとコウジでさえ、修平とヒョヌの様子に尻込みする。

「……マジでやるの?」

「いいのかよ」

「いいのよ。デート中でもお触りは厳禁ね。破ったらタダじゃおかないわよ? 別に嫌な人は参加しなければいいんだし。あ、優奈は商品だから発言権なしね!」

「……………」

「お祭りだと思えばいいのよ! 恨みっこなしで真剣勝負! どうする?」

 有無をも言わさず、どんどん話を進める杏子に周りものせられていく。

「やる!」

「俺も!」

「そりゃあ、参加するよ!」

「楽しそうじゃん? 飽きてたからな――、最近」

「だからイライラするのよ。発散しないとね。あら? 2人は参加? それとも……逃げる?」

「逃げる?」

「なんだよ、逃げるって!」

「だって、ゲームなのに参加しないって自信がないからでしょ? 2人が一番参加すべきゲームなんじゃないの? 発端は2人の欲求不満なんだから。たかがゲームよ? 初めっから参加しないのは負けるのが怖いからでしょ? 相手の方が強いって認めちゃってる証拠。それだけ熱くなったのにやらないなんて…………戦場でいったら敵前逃亡だわ」

「……………」

「……………」

「2人とも参加ね。全部で何人? ――6人か。じゃあ、5本旗を作りましょ。そうだ! 観戦者は誰が勝つか予想する? 今日の夕食の果物をかけて。公平を期すために、優奈は商品だから賭けちゃダメね」

 半ば強引にゲームを仕切る杏子に圧倒され、場所を確保する。

 杏子はリョウコを連れて旗を作っていた。

 いつの間にか優勝賞品にされた優奈を心配して、エリがこっそり話しかける。

「優奈さん、いいんですか?」

「こうなった杏子は、もう止められないから」

「いつもこんな感じなんですか?」

「いつもこんな感じなの」

「杏子さん、さすがですね」

「……………」

 独特の雰囲気に包まれる中、ゲーム参加を決めた男性陣は各々準備運動に勤しんでいた。



 その中の1人、コウジだけは杏子の指示を受けてコースの準備を手伝う。

 一番年下のため、何かと雑用を頼まれることが多いのだ。

 しかしもともと人の良い彼は、嫌な顔をすることも無く黙々と作業をこなす。

 準備を終えた杏子が声を掛ける。


 すると、コウジがおどけたように話しかけてきた。

「優勝者によって、賞品逃げ出したりしない?」

「あら? 私がいいって言ってるでしょ! 絶対よね、優奈!」

「え? はいはい」

「……杏子さんて、なんかスゲーな」

「あら、今頃気づいたの?」

 当然だと言わんばかりに不敵に笑う杏子に、男たちは声をあげて笑っている。

「誰が勝ってもデートは絶対よ。頑張ってね!」

 そして話の流れを掴めずに呆然としている優奈の傍に来た杏子が、こっそり話しかける。

「優奈、祈ってなさいね?」

「杏子?」

「これに負ける様じゃ話にならないでしょ? 認めないわよ」

「……………」

 ソンホはヒョヌの通訳として、佐伯・ジャン・ミラ・マーク・キャシーも観戦しに集まってきた。

 緊迫した雰囲気を解消しようと、修平とヒョヌ以外のメンバーは努めて明るく盛り上げる。

 女性陣も立って観戦し声援を送る中、優奈だけが、困ったように試合を見ていた。


 あのまま放っておいたら、殴り合いになっていたかもしれない――――

 このところ相手に対して抱いていた嫉妬と苛立ち、優奈への感情……

 フラストレーションが溜まっていることを杏子は見逃していなかった。

 このままでは危ない、そろそろ限界――

 そう思っていた杏子の作戦だった。

(それでなくてもあの2人は、優奈を巡ってバッチバチだからね――)

 発散させる必要があると考えていたのが、たまたま今日になっただけの事。

 島に閉じ込められているという閉塞感で、通常以上にストレスが溜まるのは当然なのだ。

 逃げ場のないこの島でもし大怪我でもしたら最悪だ。

 佐伯と杏子、医師が2人居ても設備がない。

 ゲームで勝敗をつければフェアに決着する。

 負けても『たかがゲーム』だと言い訳もできる。

 敗者の対処はなんとでもなる。

 上手く乗せられてくれた2人に、杏子は感謝した。


 別にこれで優奈をどうこう出来るわけではない。

 それは2人ともわかっていた。

 全員が陽気に意気込みを表し声援に反応する中、冷静に準備するヒョヌと黙ったまま闘志をむき出しにする修平。

 お互いがお互いへの意地。

 タイプの違う負けず嫌い、似た者同士の意地のぶつかり合いだ。

 お互いに、相手には絶対負けたくないと、全身で言っている。








     ***








 全5回戦。初戦からケイタ・ツヨシ・カズヤ・コウジの順で敗退。

 そして決勝戦は大方の期待通り、修平とヒョヌの一騎打ちとなる。

 他の4人とは、運動能力も意気込みも違う。

 杏子は初めから、この2人が残ると確信していた。

「とうとう決勝戦ね。恨みっこなしでいきましょ! 2人ともいいわね?」

「いいよ」

「OK」

 大盛り上がりの周囲をよそに、修平とヒョヌにはピリピリしたムードが漂っていた。


 このゲーム、2人からすると終わってからが始まりになるのだ。

 このあと優奈と過ごすか、優奈が何をしてるか気に病むか……

 まさに、天国と地獄。


 たかがゲーム。

 しかし、この相手だけには負けたくない――その雰囲気が観客にも伝わってくる。

 優奈をめぐる男同士の一騎打ち。映画の1シーンのように、絵になる男同士が美しい女をかけて勝負する。

 全員が人ごとながら、密かにこの決着に興奮してドキドキした。


 この程度のゲーム、勝利できないような男に優奈は預けられない。

 杏子は独自の哲学に基づき品定めをしている。

 好きな女のために熱くなれない様じゃ、他の男にみすみすくれてやる様じゃあ話にならない。

 合図のために用意した小さな笛をクルクルと振り回しながら、杏子は冷静に観察する。


――勝ち取って証明して。自分の本気がどの程度なのか。



 ロープを使ってフラッグまでの距離を公平に決める。

 2人が反対方向に伏せて合図を待った。





 そして緊迫の決勝戦――――


「位置について、用――意………」















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Comment

お久しぶりです
お久しぶりです~
一気に読ませていただこうと……なんだこの速さと長さとクオリティー!
圧倒されます。
前回へんなことを書いた罪滅ぼしに、誤字の指摘だけでも置いていきます。

>それに、女の子をそんなに強引に【引っぱたら】ダメじゃない!
◆引っ張ったらですね。

>いいのよ。デート中でも【お障り】は厳禁ね。
◆この場合はこの漢字であっているのでしょうか? すみません。確認までに。

ではではっ
引き続き読ませていただきます。
Re: お久しぶりです
grho 様、 お久しぶりです^^

誤字報告、ありがとうございました。

お障り×→お触り でした^^;;(何故この変換になったんだろう???)
引っ張ったら……そのとうりです(苦笑)

杏子がバカな子になってしまってました。賢い子なのに……。

修正しました。いつもありがとうございます^^


長いですよね、私の1回分(苦笑)
クオリティ―?!
感じますか――――???
もう、本当にありがとうございます(泣)

  • 2011/10/09 14:17
  • YUKA
  • URL
「二人とも私のために争うのはやめて!」

というのは、やっぱり憧れますか?(^^)

実際に賞品となってその場にいたら居心地悪いだけだろうけど。(爆)
ポール・ブリッツ さん、こんばんは^^
ポール・ブリッツ さん、こんばんは^^
コメントありがとうございます^^
どうですかね~~^^
「何?お前、俺のこと好きなの?」
――っていうツンデレの方が、好みですけども(爆)

景品なんて居心地悪過ぎですね(笑)
  • 2011/10/21 19:31
  • YUKA
  • URL
ヒロインを賭けた勝負・・・
思い出したのは紅の豚の
最後の勝負のシーンですねー

その勝負に参戦したい!!
  • 2011/10/28 10:50
  • 小心者
  • URL
小心者さん、こんにちは^^
小心者さん、こんにちは^^
読んでくださってありがとうございます^^
そうそう。「紅の豚」ありましたね~~
私、宮崎作品大好きです^^
だからって、真似っこじゃないですけど^^
是非!エントリーしてください(笑)
  • 2011/10/28 14:06
  • YUKA
  • URL
本人的にはどういう心情なんでしょうかね。
・・ということを考えてしまいますけどね。
私の為に戦わないで!!・・・というのかもしれないですが、恋は戦争なのです。
  • 2013/05/25 06:53
  • LandM
  • URL
LandM さん
LandM さん、こんばんは^^
コメントありがとうございます♪

ただただビックリしているでしょうね^^;
自分のせいで怪我をされることを心配していますね~~

この状況下で?
片思いしている男性に困った状況を庇って貰って、喜ばない女性がいたら会ってみたいです(笑)
ましてこの状況~~~~優奈も女ですからね(笑)

  • 2013/05/25 19:21
  • YUKA
  • URL
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