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誓約の地/漂流編・26<秘恋(6)>



胸に去来する様々な想いに翻弄されて、


踏み出せない男(ヒョヌ)と臆病になる女(優奈)のすれ違う想い。






img_1374445_51163653_0.jpg      





  優奈は思わず動揺してヒョヌにしがみ付きながら、辺りを見渡す。

 動揺して動く足もとの砂が動いて、更にパニックになる。


 突然抱きつかれたヒョヌも驚いた。

 悲鳴を上げて動揺する優奈を片手で優しく受け止めて、反対の手で優奈の後ろの海水を探る。

 すると、ヒョヌの手に海藻が絡んだ。

「…………これ?」

「やっぱり! ――――!」

 その時初めて、優奈は自分がヒョヌに抱きついているのを認識して紅くなった。

 思わず手を放したが、ヒョヌはそれに気付かない振りをして、腰にまわした手をどけなかった。

 優奈を優しく抱えながら、さらに奥まで進んでいく。

「ヒョヌさん!」

「大丈夫、僕がいるから」

「…………」

「絶対離さないから、大丈夫」

「ホントに?」

「ホントに」

 優奈の胸辺りまで浸かるほど海に入った。ヒョヌの腕にしがみつくようにして随分進んできた。

「怖い?」

「日本よりいいです。でもやっぱり、なんか心もとない」

 苦笑いする優奈に微笑んだヒョヌは、そろそろ戻ろうかと考えていた。


 その時。

 今までより大きい波のうねりが2人にゆったりと押し寄せてきた。

 浮力を使ってやり過ごしたが、引き波の砂ごと引っ張られるような感覚に優奈はビックリする。

 ヒョヌは身長差があるので何ともないが、胸まで海水に浸かった優奈は息苦しくなった。

 そんな優奈を見てヒョヌが囁く。

「ごめんね。ちょっと来過ぎたかな? ……戻る?」

「はい」

「優奈さん、僕の首に掴まって」

 そう言うと、とっさに理解できずにキョトンとしている優奈の脚を抱えるように持ちあげた。

 バランスを崩しそうになった優奈は、慌ててヒョヌの首に両手をかける。

「ヒョヌさん! じ、自分で歩けますから!」

「砂が動くと怖いんでしょ?」

「で、でも――」

「大丈夫、大丈夫」

 そのままゆっくり浜辺へと進んでいく。

 優しく微笑んでいるヒョヌの顔が近くて、更に胸が苦しくなった。

 緊張で顔を上げられない。



 海水がヒョヌの腰辺りまでになった頃、ふと2人の視線が絡みあった。

 ヒョヌの瞳が切なく揺れて、そっと優奈を見つめている。

 時が止まったように見つめあったまま動けなくなってしまった――


 優奈は動揺したまま視線を外し、ヒョヌは黙って浜辺へ移動する。

 海水が膝ほどの位置までになってから、優奈をそっと降ろした。

「大丈夫?」

「はい」

「ごめん。ビショビショになった」

「ホント――! でも楽しかったです!」

「ホント?」

「はい。初めてあんなに入ったんですよ」

 頑張ったと小さくガッツポーズする優奈がおかしくて、ヒョヌは声をあげて笑った。

「じゃあ、また今度ね!」

「えぇ――?」

「あれ? 好き嫌いはいけません!」

「い、意味が違います!」

 慌てる優奈を見て、ヒョヌは小さく笑った。

 その笑顔とまなざしがとても優しくて、優奈は何だか泣きたくなった。
 

 苦楽を共にする遭難者の一人なだけ――

 勘違いしないようにと言い聞かせているのに、楽しそうに笑うヒョヌを見るとやはり心が弾む。

 あんなに気持悪くて苦手だった海の砂でさえ、ヒョヌの腕の中なら耐えられる気がして。

 上げていた髪を解いて風で乾かしながら、そんな風に考え始めた自分に気がついて、優奈は顔が赤くなった。

 ちらっと横目でヒョヌを盗み見ると、顔に手をかざし日差しを避けながら海を見つめている。

 思わず息をのみそうになるほど綺麗な横顔が、何故か少し寂しそうで声を掛けることをやめた。

 楽しいのに淋しい、嬉しいのに切ない。

 相変わらず心が揺れて苦しいけれど、それでもこうして隣にいることは出来る。

 それは充分幸せなことなはず。

 そろそろ戻ろうと微笑んだヒョヌに、優奈は素直に頷いた。

 大切にし過ぎてすれ違う想いを抱えたまま、とりとめのない会話を交わす。



 そんな時間に夢中になっていた2人は、その姿を見つめている人の影に気付くことはなかった――

















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Comment

うわ~。ライバルか味方か敵か。

どきどきしますな。

誰にしてもろくな結果にならんような(^^;)

ラブストーリーも波乱万丈ですなあ。
ポール・ブリッツ さん、こんばんは^^

コメントありがとうございます^^

そうですね~~
波乱が無いと、小説は日記になってしまいますから(笑)
恋愛も、当事者にとっては一大事です^^
  • 2011/10/21 16:22
  • YUKA
  • URL
YUKAさん、こんばんは。

人間の感情の多彩さを見る思いです。
私はこういう繊細な感情を抱いたことはないのですが、
なんだか自分の脳みそをきちんと使いきれていない
のだなあと微妙な気分になってしまいました。
普段、恋愛もののドラマとか見ないので、
なかなかに新鮮です。
山本文緒さんは好きで結構読んだのですが、上記の
ような不思議な気持ちにはならなかったです。
ファンタジックでもありますね。

本日はこの辺で失礼いたします。
執筆頑張って下さい。
  • 2011/11/12 23:16
  • gimonia
  • URL
gimonia さん
gimoniaさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます^^
そうですね、ちょっとあり得ないようなシュチュエ―ションなので。
感情の多彩さ……素敵な表現ですね^^
拙い小説ではありますが、
お時間のある時に遊びに来てくださったら嬉しいです^^
私もまたお邪魔しますね^^
  • 2011/11/13 05:40
  • YUKA
  • URL
お互いの気持ちがすれ違ったと思ったら、
また少し近づいて、そんな気持ちの交錯が行ったり来たりで
なかなか読者をヤキモキさせる描写ですね。
でも、この2人、前回の時もそうでしたが、
だんだん、目が離せなくなってきてます。
読者がいつの間にか傍観者じゃなく、参加者になってる、
「えーい、何やってる!こうなったら説得してくっ付けてやるわ!」
とかとか(笑)
今回のシチュ、2人の距離が大接近、次の展開がすごく
楽しみになってきました!
ペレさん
ペレさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます^^
いつの間にか参加者~~嬉しいです*^^*
くっつきそうでくっつかず。。。ザ・恋愛って感じです^^
この辺は、どちらかというと少女漫画的ですが^^
じれじれしますからね~~まだまだ(笑)
お時間のある時に読んでくださると嬉しいです*^^*
  • 2011/11/15 01:49
  • YUKA
  • URL
まあ、この辺は恋愛要素とはまた違うところだか面倒くさいところだと思いますけどね。大人の男っていうのは、好きでもない女のために身体を張らなきゃいけないときっていうのが多々ありますからね。人間関係が豊富な人ほどそうなります。ヒョヌさんっていうのはそういう人でしょうしね。
  • 2013/05/18 11:49
  • LandM
  • URL
LandM さん
LandM さん、こんばんは^^
コメントありがとうございます!!
こちらを除くのが遅くなって、お返事が遅れまして申し訳ありません^^;

そうですね~~
ヒョヌは誰にでも優しいですね。ただそれは礼儀としてってことなのですが、優奈にはちょっと違う感情がありますね。しかし遭難中ですからね~~。恋人もいますし。

人間関係が豊富。ヒョヌはそうでしょうね。本人の性格もありますが、処世術でもあったり。
そこが優奈とヒョヌの「誰にでも優しい」の差でしょう。
お、大人の男って大変ですね^^;;
でもきっとそこに好意があるとないとでは、言葉の端々や態度が少し違ってくるでしょうか^^
  • 2013/05/20 21:07
  • YUKA
  • URL
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