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誓約の地/漂流編・31<大樹(1)>



恨みっこなしのゲーム対決で

「優勝賞品」を手に入れた男と逃した男。


彼らが想いを寄せる、たった一人の女「優奈」へ

本当に近づけるのは――?




【図解】誓約の地の世界を地図で語る(Vol.1)

ここまでの島での生活を、島の地図でご紹介♪

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大樹4




「わぁ………」

 優奈の感嘆する声が辺りに響いた。

 綱の目の前にあるのは、圧倒的な存在感でそびえ立つ『大樹』



 この巨木を中心に広がる、辺りの岩や木々の表面は黄緑色の苔に覆われ、生い茂る木の枝葉の間から漏れる光に照らされ輝いていた。

 空気はしっとりと水気を含んで、時折流れる風が涼しく感じられる。

 点在する岩の間からは、チョロチョロと水の流れる音がしていた。



 幻想的なその風景を前に優奈は感動で言葉が続かない。大樹を見上げてため息をついた。

「凄いよな?」

「ホント」

 キラキラした瞳で辺りの景色を眺める優奈に、修平は得意そうだった。

 頬を上気させて微笑んでいる優奈は、まるでその景色に溶け込むように美しい。

 優奈はそっと樹に触れた。言葉にできない感情が込み上げてきて泣きたくなる。

「凄く、素敵な場所……」

「だろ?」

 そう言って自分を見上げる優奈を、修平は抱きしめたい………そう思った。

 ビーチフラッグでヒョヌに負けて居た堪れなくなった修平は、彼らと反対方向に向かって歩き、ここを見つけた。

 風が吹き荒れるような激しい嫉妬でささくれだっていた心が、ここにきて癒された。

 俯いていた心が回復する。


 優奈に見せてやりたい――


 そう思って、翌日ここに連れてきたのだ。

「ほら、来てよかっただろ?」

「ホント。ありがとう」

 嬉しそうに微笑む優奈の笑顔を見て、修平の心も弾む。

 ここに辿り着くのは少々大変だった。

 キャンプ地から西側の森は、少しわけ入ると斜面が続く。

 大きな岩がその斜面に多く点在し、それを乗り越えるようにして森深く入らなければならない。

 女性の脚力では少々きつく、連れて入るのも危険に思えた。

 誘われた優奈もかなり躊躇ったが、修平がどうしてもと半ば強引に誘ったのだ。



 大樹を前に2人で並び立って見上げていると、心が洗われるような気がした。

 1本の巨木が、まるでこの森の全てを支えているかのような錯覚。

 「御神木」というのは、こういうものを言うのではないかと思えるほど、清らかで圧倒的な存在感だった。

「何年ぐらいだろうね、樹齢」

「さぁ。かなりだよな?」

「もののけ姫に出てきそうじゃない?」

「まぁな。コダマを探すか?」

「あはは………でも、いそうだよね」

「だな」

 そう言って、顔を見合せながら笑った。

 何度も何度もため息をつきながら見上げている優奈の瞳の奥に、この巨木とそれを包む周りの自然に対する、素直な賞讃と感嘆が浮かんでいて、修平は自分の事のように誇らしかった。



 穏やかな感情に酔っている修平に優奈が話しかけ、身体を向けた瞬間に時ふと何かが目にとまった。

 修平から見ると反対側になる優奈の胸から肩へ向かって小さな蜘蛛が這っている。

「………優奈、動くなよ?」

「え?」

「いいから」

 遭難した当初、提案された自己紹介で確か、蜘蛛が苦手だと言ってたな? と思いだし、あえて何も伝えずに取ってやろうと手を伸ばした。

 ゴミかと思って見過ごしたかもしれないほど、小さな蜘蛛だった。

 修平が手を伸ばした瞬間、優奈がびくっと仰け反った。

「あ、バカ! 動くな!」

 そう言って優奈を引き寄せようともう一度手を伸ばすと、以前の記憶がよみがえった優奈は、反射的に後ずさろうとする。

「ちょっ! 違うって! 蜘蛛!」

「え、くも? 蜘蛛――?!」

 案の定、騒ぎ始めた優奈に苦笑する。

「だから黙って取ってやろうと思っ……え?」

 いきなり修平のTシャツを掴んで、胸に飛び込むように近づいた優奈に、修平の方が動揺した。

 潤んだ瞳で彼を見上げ、助けてほしいと懇願するように硬直している。

 修平は、所在なく宙に浮いたままで固まった自分の腕をのろのろと動かし、片手でそっと彼女を抱きとめた。

 修平の首筋に、優奈の艶やかな髪がかかる。

 彼女の仄かな香りに心臓がどくんと反応して、この予想外の展開は反則だと内心愚痴る。

「おい、優奈」

 名前を呼ぶだけで声が震えそうになって、慌てて口をつぐんだ。
















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Comment

大体連載が終わると暫く休憩すると思います。
私の場合は、次の作品も次の次の作品も書き上げ終わっているので、すぐにでも連載したいのですが、その辺は遠慮しております。
なにはともあれ、終了おめでとうございます。
私は読み終わってないので、読み続けます。

隧道の光の連載終わりました。
今まで読んで頂きありがとうございます!!
特にこの作品を参考に書き上げましたので、誠にありがとうございます。
  • 2013/05/30 20:25
  • LandM
  • URL
LandM さん
LandM さん、こんばんは^^
コメントありがとうございます^^

そうですよね^^
私は同時並行で色々考えても、実際なかなか筆の進まないタイプのようです^^;
けっこう集中しちゃいますね~。
ありがとうございます!そして読み続けて頂けるのは光栄です^^

隧道の光の連載終了お疲れさまでした!
読ませて頂きました♪
非日常とラストの日常、楽しく読ませていただきました^^
この作品がキッカケになったなんて、本当に光栄です^^
自作の連載も楽しみにしております♪
私も他の続きを読ませて頂きます^^
なぜか魔王様がお気に入りなので(笑)

  • 2013/05/30 23:56
  • YUKA
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