QLOOKアクセス解析

誓約の地/漂流編・27<対決(1)>


焦燥と嫉妬を持て余た2人の男が、ふとしたキッカケで一触即発!

殴り合いの代わりに提案された恨みっこなしのゲーム対決。

その優勝賞品は――



1話






 青く澄んだ海と白い砂浜……

 時々カモメの舞っているのどかな南の島での娯楽は、当然アウトドアになる。

 ケイタとツヨシ対コウジとカズヤに別れ、ビーチバレーで対戦することにした。

 元々スキューバダイビングの資格を持っている4人は、ボンベが無くても南の海を満喫していた。

 しかし、毎日では飽きてしまうのだ。

 若い男性陣はストレス解消にと、船から調達してきた物で即席のネットを作る。

 長めのポールにロープを張っただけの簡単なものだったが、お遊びとしては充分だった。

 女性陣は観戦に回る。


 2戦観戦し終えた頃、暑くなってきたので海に入ることにした。

 優奈はヒョヌと入った時のことを思い出していた。

 南の島で海に入れないのはつまらない――

 良い機会だから練習しようと、恐る恐る入っていく。

 それでもまだ、足首ぐらいの浅瀬で何となく遊んでいた。


 杏子とエリはだいぶ先まで進んでいる。

 リョウコはカナヅチだったが足がつけば怖くない。

 優奈は1人、遅くれる格好になった。

 それに気付いたヒョヌは微笑んで、彼女に近づいていく――



「何? 優奈泳げないのか?」

 笑いながら声を掛けた修平にビクッと反応して、慌てて首を振った。

「そうじゃなくて」

「よっし! 教えてやる!」

「――――! い、いいの! やめてっ!」

 急に腕を引かれて、進んだ足元の砂が動いた事に動揺した優奈は、思わず叫んでしまった。

「ち、違うの……怖いの!」

「大丈夫だって! 俺が、ついてるから」

「ちょ、ちょっと! お願いだから放して!」

 優奈が動揺しているのがわかる。

 ゆっくり自分で慣れようとしていたところを強引に引っ張られ、驚いて激しく抵抗していた。

 様子が違う――いつもの修平なら、それに気付かないはずがなかった。

 3日前――修平は優奈とヒョヌが海で戯れているのを見ていた。

 韓国語での会話はわからなかったが、遠目から見ても楽しそうな優奈とヒョヌの姿に歯噛みする。

 寄り添うように海へ入る2人――

 抱えられて見つめ合いながら時が止まった2人を見た時、血が逆流するような錯覚を覚えた。


――なぜ俺じゃダメなのか。


 修平は少し意地になって優奈を誘う。

 杏子は急いで戻ろうとしていた。優奈が何を嫌がってるのかはわかっている。





――その時、優奈を引っ張る修平の腕をヒョヌが掴んだ。

「無理強いはよせ!」

「――――!」

 ヒョヌは思わず大声をあげた。


 驚いた修平と優奈は、ヒョヌを見ている。

 時が止まっている3人の所に、近くにいたソンホが駆け寄って急いで通訳する。

 大声を上げる緊迫した雰囲気に、周りで遊んでいたメンバーも唖然として振り返った。

「何すんだよ! 放せ!」

「彼女が嫌がってるだろ!」

「俺は泳ぎが得意だし、大丈夫だから心配しなくていい!」

「彼女は、水が怖いんじゃない!!」

「じゃあ、なんだよ!」

「とにかく手を放せ!」

「なんであんたに命令されなきゃなんないんだ?」

「彼女が怖がってるだろう!」

「――っは? 自分なら平気だって言いたいのか?」

「そうだ!」

「――――っんだと?」





「あら、いい男2人で睨めっこ?」

 緊迫した空気に割り込んできたのは杏子だった。

 それでも2人は黙ったまま視線を外さない。

 杏子は、艶やかな笑顔で2人を交互に見つめながら話しかけた。

「修平。優奈はね、波で動く砂が苦手なのよ。気持ち悪いんですって! プールは大丈夫なんだけどね、昔から」

「海の、砂?」

「そう。こんなことなら、自己紹介の時に言っておけばよかったわ。ま、泳げないわけじゃないからね」

「…………」

「女の子をそんなに強引に引っ張ったらダメじゃない! 女性は優しく扱うものよ。ね! 放してあげて?」


 杏子の言葉で我に返った修平は、優奈の手を放すと同時にヒョヌの手を振り払った。

 手を放された優奈の腕をヒョヌがそっと掴んで、修平から引き離すように自分の後ろへ移動させる。

 2人は静かに睨み合ったまま動かない。

「あらま。男の人って大変ね――! 闘争本能が出ちゃうから」

「……杏子」

 さっきまでの歓声が嘘のように静まり返っていた。

 キッカケさえあれば、今すぐにでも手が出そうな剣呑な雰囲気の2人に、全員が息を飲む。



 いや――

 杏子だけは別だった。

 しょうがないわねと肩をすくめる杏子は、2人の顔を見比べてくすりと笑った。


「2人とも………欲求不満なの?」



 2人は睨みつけるような視線のまま、杏子に振り向いた。

「やぁね――違うわよ。暇を持て余してるって事! 遊び足りないのねぇ」

「…………」

「…………」

「そうねぇ。じゃあ、ゲームでもしましょうか?」

 殴り合いも辞さないと言わんばかりに熱くなった2人と、それに全く動じない杏子に全員が唖然としている。

 当事者の1人であるはずの優奈も、そんな様子を見守っていた。


「杏子さん。ゲームって何のですか?」

 ゲームと聞いて首をかしげていたリョウコが、杏子に質問した。

「ビーチフラッグはどう?」

「ビーチフラッグって?」

「砂浜に立てた旗を走って取るの。1本ずつ減らしていって、最後の1本を取ったら勝ち」

「あ! テレビで見たことある!」

「でしょ! ケイタ達も参加しない?」

 事態を静観していた男性陣は、突然話題を振られてお互いの顔を見合わせる。

「………いや、でも。………どうなの?」

 何となく空気に飲まれたみんなの動揺をよそに、まるで歌うかのように楽しげな杏子の声が響く。

「人数が多くないとつまらないもの! ゲームよ――! ゲ・エ・ム!」

 不敵に笑いながら、有無をも言わさない杏子の存在感に圧倒される。

「そう、だね」

「ね! そうね――ゲームだから、優勝商品ないとつまらないわよねぇ」

「あ! 商品あり?」

「そうじゃないと男の人は燃えないでしょ? 何にしようかしら?」

「商品によるかなぁ」

「わかってるわよ」

 少しずつギクシャクした空気を解消されて、修平とヒョヌを除く男性陣がのってきた。

 杏子はその綺麗な目をきらりと光らせ、またトンデモナイことを口にする。



「そうね――優勝商品は『優奈とデート』……で、どう?」















関連記事

Comment

まあ、暇をもてあましているから恋をするんであって、その辺は違わないですね。つりばし効果で結婚した夫婦の離婚率は高いと聞きますが・・・。なんの統計なのだろうか。。。
  • 2013/05/22 20:28
  • LandM
  • URL
LandM さん
LandM さん、こんばんは^^
コメントありがとうございます♪

そうそう。危機が去った……というか、あまり危機感を感じていないからです(笑)
胃の地の機器を感じていたらそれどころではない。
でも、危機感を感じてばかりでは人の心は壊れますからね~
当初はアドレナリンが出るからいいのですが、長時間はもたない。
ただこの環境もストレスですね。
彼らは違う方向にアドレナリンが出ていますね~(笑)

  • 2013/05/25 19:14
  • YUKA
  • URL
  • Edit
Comment Form
公開設定


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。