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誓約の地/漂流編・20<錯綜(5)>


胸に去来する様々な想いに翻弄されて、

踏み出せない男(ヒョヌ)と臆病になる女(優奈)のすれ違う想い。


*錯綜(さくそう)――物事が複雑に入り組んでいること。
入りまじっていること。




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 相変わらず優奈は荷物の確認をしていた。

 散乱したトランクの荷物を整理して、トランクの上にメモを貼り付けていく。

 だいぶ片付いたと一人で満足しながら、今度はそれを移動させようと持ち上げた。

「うっ……」

 思ったより重い。旅行用のトランクはキャスター付きだが、砂浜の上では役に立たない。

 引きずるように移動させていると、それを見つけた修平が声を掛ける。

「おいおい、誰かに頼めよ!」

「ん?」

「ん? ――じゃなくて。あーそんなの抱えて、重いだろ?」

そう言うと、修平は優奈の抱えていたケースをひょいと持ち上げた。

「これ、何?」

「衣類。女子用、男子用、共用に分け終わったんだけど。やっぱり男の人は腕力がちがうなぁ」

「当り前だ! そんな細い腕に負ける男はそういないよ」

 呆れたように肩をすくめる修平の言葉に、それもそうかと苦笑する。

 どこに置くのか確認する修平に場所を伝え、自分もあらためて1つ持ちあげて移動する。

「きっちり認識したら、次から俺に言えよ?」

「ありがと」

「……他の奴に頼むなよ? 優奈の頼みは俺が全部聞いてやるから」

 修平の呟きに一瞬どきりとして、どう答えたものかと逡巡《しゅんじゅん》した。

「あと幾つあんの?」

「15個」

「マジ? それ、一人でやろうとしてたの?」

「みんな遊んでるし。木陰に運ぶだけだもの」

「言えよ!」

「わ、わかったから! ありがと」

 お礼を言いながら慌てて見上げると、優奈を見下ろしながら照れくさそうに笑っていた。








     ***








 そんな様子を、杏子は目の端に映して観察していた。

 優奈と修平が仲良く荷物運びをしている姿を目の端に映し、ヒョヌは木陰で本を読んでいる。

 でもその本が、さっきから1ページも進んでないのを知っている。

「なぁんか、おかしい。いいえ、絶対おかしい」

 あんなにヒョヌの周りを楽しそうにうろついていた優奈が、傍に寄るのを躊躇っている。

 問い詰めても、相変わらず何も言わないところが更に怪しい――

 杏子の瞳がきらりと光った。



 ヒョヌの視線と修平の行動。


――優奈、本当にそれでいいの?















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Comment

確かに錯綜というかなんというか。
まあ、本人同士がいいのであれば、良いと思いますけどね。
あまり引っ掻き回すと逆に悪くなりますからね。
  • 2013/05/08 06:22
  • LandM
  • URL
LandM さん
LandM さん、こんばんは^^
コメントありがとうございます。
私の都合で、お返事が遅くなってしまったことをお許しください。

あはは^^
そうなんですよね~~錯綜。というよりこんがらがっちゃってる感じですが^^;;
この時点ではそれぞれがそれぞれの想いと思惑で動いていますから。
全く、いい加減に~~って私が思います(爆)

  • 2013/05/12 18:00
  • YUKA
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