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誓約の地/漂流編・52<黙祷(3)



episode.0<黙祷(8)>を改稿にあたり本編に組み込みました。





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 早速夕食後、全員に塩田の話をする。

 全員の賛同を得て、優奈とチソンで捜索と内訳を考えていた。

 塩の確保が急務なので、塩田作業は交替で朝から夕方まで先に行ことに決まった。

 この時、海水を運ぶのが大変なので、優奈は客船の在庫から長いチューブホースを持ってくる。

チューブの中に完全に海水を入れ、反対側を海の中に浸けたままにすると高低差があっても、反対から水が出てくる。

 昔、小学校でやった理科の実験を思い出したのだ。

 勢いよく出ないが、海と塩田を往復する手間は省ける。

 バケツに汲みいれ、勢いよく均等にまく。

 これがなかなか難しい。

 乾いては撒き、乾いては撒き、1時間ごと交替で行った。



 暫くすると、白く粉をふいたような塩田ができた。

 なるべく白い部分のみをそっと掬い、海水で溶かして砂と分離し、また火にかけ塩を生成する。

 ケイタ、ツヨシ、コウジ、カズヤの4人に、貝類や魚をとれるかも相談した。

 乗船していたのは観光客ばかりだったので、捜索した際に一通りの娯楽用品が手に入っている。

 その中にはマリンスポーツを楽しむものが多く、道具などにも困らなかった。


 備品は揃っているので挑戦してもらう事に決まり、その初日に優奈がメンバーに声をかけた。

「できそう?」

「優奈ちゃんに頼まれたら、挑戦するしかないよ」

「だよな。結構面白そうじゃない? 岩場の方ならそこそこの深さだな」

「無理しないでね」

「了解!」

「頑張ってみるよ」

「ありがと。怪我だけは気をつけて。キャシーさんに待機して貰うね」

「OK!」

 週に何回か彼らはゲームのように競い合い、貝や魚、タコをとってきた。









     ***









 それらが落ち着いた頃、島の捜索を本格的に行う計画を立てた。

 この捜索の間に、優奈とヒョヌが泉と教会を発見して全員でそこに移る。

 なぜか調味料と粉類、工具や生活雑貨が大量に保管されていて、今まで以上に暮らしやすくなっていった。

 それでも、使えばいつか底をつく。

 むやみに使うわけにはいかないから、相変わらず島での調達も続行しなければならない。

 さすがに体力差が出るので、捜索は主に男性陣を中心に2班に分かれ、1斑ごとに行って貰う。

 その間、女性陣と残りの男性陣は食料確保と薪の確保、飲み水の確保を行う。

 疲労する男性陣が入浴後戻った時、冷やした水と果実を用意して迎えた。



 3ヶ月後、大方捜索も終了した。

 反対側に民家はなかったが、新たな果実と薬草、イモ類も見つけた。

 だからその中で一番の収穫は岩塩である。

 精製されているわけではないので黒塩だったが、1番危惧していた塩の確保に全員が喜んだ。

 塩田作業の大変さは身をもって体験済みだからである。


 そうやって日々が過ぎていく。やることは毎日山ほどあった。

 特に水と食料調達は欠かせない。

 毎日16名分の食料確保である。なかなか大変な量だったが、全員が協力して暮らしていた。




 遭難して半年が過ぎようとしていたある日の夕暮れ時――

 既に遺体の搬送は終了すると決めた。

 すでに遺体は見つからなくなっていたということもあるが、これからの捜索では生存者の救助のみ気を配り、後はこまごまと必要なものを運び出すことに専念する。


 客船の捜索で物を持ち出した後、浜辺で荷物整理をする皆の前でそれは起こった。

 遠浅の海と深い海溝の間に、引っかかるようにして残っていた船が突然揺れ始める。

 大きな音を立て、渦を作りながら沈んでいく。

 全員が呆然と見つめる中、あっという間にその姿は見えなくなった。



「危なかったな」

 その光景を眺めていた修平が呟いた。その隣で同じように船を見つめていた杏子が賛同する。

「ホント。もうちょっと中にいたら、巻き込まれてた」

「とうとう沈んだな」

「今まで、あそこに引っかかっていたのが不思議なのよ」

 2人のやり取りを聞きながら、全員が海を見ていた。

「……目印が、無くなった」

 コウジがぽつりと呟いた。

 これからどうなるんだろう、そう言って悄然と項垂れる彼に誰も声を掛けられない。

 そんなコウジを見ていた修平がスッと隣に立ち、無言でコウジの肩にポンと手を乗せた。

 ビクッと振り返った彼に、修平は視線を海に向けたまま声を掛けた。

「俺らはまだ、生きてる」

 自分をじっと見ているコウジに視線を移し、いつものように笑いながら掴んだ肩に力を込める。

「生きてりゃ、助かる可能性はゼロじゃない。今まで通りでいいんだよ」

 修平の励ましに、コウジが小さく頷く。

 その時、じっと海を見つめていた優奈が、静かに口を開いた。


「黙祷しよう」


 全員が一斉に優奈を見る。

「私たちが使わせて貰っている物の多くは、誰かが大切にしていたものかもしれない。 私たちは助かったけど、そうじゃない人もいる。  感謝と哀悼をこめて黙祷しよう。――――そしていつか、必ず全員で助かろう」

 全員が優奈の言葉に頷き、共感した。

 日が傾き始めた浜辺で、そう告げる優奈の横顔は清らかに輝いていた。

 全員がその場で一列に並び、優奈の掛け声を待つ。





「黙祷」



 消えた客船に向かい、全員が感謝をこめて黙祷する。



『いつか必ず全員で助かろう』

 優奈のその言葉が、全員の胸にこだました。
















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Comment

チョコです^^
episode.最終話!

何かね、最後の最後で改めて舞台の設定と言うか...
遭難って怖いって思いました。
私が生存者なら毎日泣いて迷惑かけてると思う。
そして優奈が優しく近寄ってきて
厳しくそして優しい言葉を私にかける...
うへへ(←妄想中)

『いつか必ず全員で助かろう』

彼女の言葉を忘れずに
皆で力を合わせて脱出して欲しい。
クリスマスのお話みたいに
「YUKAさん良かった!」ってもう1度感動を与えてね+゜。*゜+

私絶対ラスト泣いちゃうよ。
チョコさん
チョコさん、こんにちは^^
コメントありがとうございます♪

最終話まで読んでくれて、本当にありがとう♪
優奈が遭難中に冷静でいられるのは、やはりみんながいるからですね^^
うん、優奈は絶対チョコさんを大切にすると思う(笑)

『いつか必ず全員で助かろう』
優奈は一番この想いを感じているはず。。。
これからまだまだ試練が続きますが
そんな中、優奈が、ヒョヌが、杏子が、修平が――
どんな風に想い、過ごしていくのか見届けてくださいね♪

はい!
みんなが幸せになる――ハッピーエンドの醍醐味ですね!
最後に幸せになれるよう頑張ります*^^*
  • 2011/12/29 11:30
  • YUKA
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