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誓約の地/漂流編・10<哀悼(5)>




<哀悼>は、episode.0<黙祷>の(1)~(7)に掲載させて頂いた内容です。


改稿にあたり、本編に組み込みました。





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 優奈は早速、リョウコと約束したお菓子作りの材料を用意する。

 食材の管理は料理人のジャンに任せていたので、彼に頼んで材料を少し分けて貰うことにした。

「優奈さん、何作るんですか?」

「そうね。オーブンがないから、あまり凝ったものは作れないけど。初めてだから、とりあえずパンケーキにしようか」

「はい。――卵なしで?」

「そう。これでね」

 そう言って並べたのはricepauderと書かれた袋とベビー用の粉ミルク、ベーキングパウダー、砂糖と塩。

「これは?」

「米粉。タイ料理なんかでも使うんだけど、最近はお菓子にも使われてるの」

「これに?」

「そう。これにベーキングパウダーと少し粉ミルクを混ぜて焼くと、外がパリパリで中がモチモチのパンケーキが出来るの。小麦粉のレシピもあるけど、小麦粉は食事の方に取っておきたいから。ベリーのジャムがあったから、少し水で溶いてソースを作ろうと思って」

「なるほどぉ。米粉のお菓子は聞いた事がありましたけど、作った事なかったんです。だから楽しみ」

「こういうの、杏子の方が詳しいんだけどね」

「え?」

「杏子さんって、お菓子作りとかするんですか?」

 優奈のその言葉に、エリとリョウコが目を丸くして驚いた。

「失礼ね! って言いたいところだけど、私がすると思う?」

 苦笑する杏子を見て、2人は顔を見合わせる。

「え? だって――」

「詳しいだけ。こういうの除去食って言ってね、卵や牛乳、小麦粉が使えないアレルギーのある子に作るレシピに多いのよ」

「あ、なるほど。お医者様ですもんね」

「作るのは優奈よ。私は食べるの専門」

「食べるのに『専門』って使うんですか?」

 そうよと得意気に笑う杏子につられて、3人も笑ってしまった。

「優奈さんは料理とか得意なんですね」

 エリが声を掛けると、優奈は楽しそうに微笑んだ。

「料理とかお菓子作りは凄く好き。このレシピは留学中にボランティアをした時に教わったの」

「予想外のところで役に立ったわね」

「本当。無駄なことってないよね」

 杏子と優奈が顔を見合わせてくすくすと笑う。

「ホント、仲いいですよね。留学も一緒ですか?」

「高校まで。長期休暇中だけの短期留学だけどね。大学は学部が違うから」

「そっか」

「みんな食べますかね?」

「食べるんじゃない?――あ、ヒョヌさんは甘いもの大丈夫なんですか?」

「うん、好きだって言ってたかな」

「へぇ、意外。なんか食べなさそう」

「ね。私もそう言ったら、――拗ねちゃった」

「あはは。拗ねちゃったんですか?」

「そう。男でも甘いものは食べるって」

 楽しそうに語る優奈を見て、杏子はくすりと笑った。

「もしかして、ヒョヌさんのため?」

 揶揄するような杏子の視線に、優奈は慌てて否定する。

「え? 違うわよ! リョウコちゃん、お菓子作りとか好きだって言ってたから、こういうの楽しいかな? って思って。それに疲れてる時は甘いものが欲しくなるでしょう?」

 まぁねと言って笑っている杏子の言葉に、なぜか心臓がどくりと動く。

「ファンですもんね! 作ったらあげるんですよね?」

「え? それはもちろん――。あ、でもみんなにもあげるよ?」

「一番うまくいったのが、ヒョヌさんのよね?」

「もう、杏子はどうしてそういういい方をするの!」

 頬を膨らませて拗ねる優奈を見て、他の3人はくすくす笑った。

「別に可笑しくないですよぉ。好きな人に一番いいのを渡したいのは当然ですから」

「好きな人って――」

「ファンってことは、好きなんですよね?」

「それは、そうだけど。ヘンな意味じゃないよ? ヒョヌさん、彼女さんだっているんだから」

 この優奈の発言に、エリとリョウコは驚いた。

「え? ヒョヌさんって彼女いるんだ」

「考えてみればそうだよね。あれだけカッコいいんだし」

「……でしょう? 噂、だけどね」

「相手は女優さんですか?」

「ん? たぶん――」

「確認してないんですか?」

「確認? 確認してどうするの?」

「どうって――そっか、どうしようもないですね」
 
「別にいいじゃない、彼女がいても」

「杏子? 何言ってるの!」

「だって、ここにいるわけじゃないし、結婚しているわけじゃないんだから、別れることもあるわよ?」

「そういう問題じゃないでしょう?」

「私、優奈さんとヒョヌさんって、いい雰囲気だと思ってたんだけどなぁ」

「え?」

「私も。――優奈さん、修平さんはフリ―なんですか?」

「ん? なんで、急に修平くんが出てくるの?」

「え?」

「なんでって、それは――」

 キョトンとしている優奈を見ると、エリとリョウコは杏子の顔を伺った。杏子はただ苦笑している。

 気付いてないのか――。

 修平が優奈に好意を持っているのは、見ていればわかる。

 本人だけが気付いていないみたいだが、あえて何も言わない杏子の様子を見て、2人もその事への言及は避けた。

 好きな人。

 また、優奈の心臓がどくんと動いて、どんどん動悸が早くなっていく。

 別に、彼にだけ作ろうとしたわけじゃない。

 リョウコを励まそうと考えていたお菓子作り。

 先日、思わぬ形でヒョヌの甘いもの好きを知って、確かに食べて貰おうと思ったけど。

 だからってそれは、そういう意味じゃない。
 こんな風に一緒にいて、ただ傍にいるのが嬉しくて楽しい、それだけ。


 そう言い聞かせても息苦しさは消えない。

 一度早くなった鼓動を抑えるのは難しかった。



「優奈さん、心配かけてごめんなさい」

「え?」

 リョウコの一言で我に返った。

「凄く落ち込んじゃって、自分のことしか考えてなくて。私も、もっとしっかりしますね!」

 優奈はリョウコの方へ向き直って微笑みかける。

「そんな事ないよ! いいの、いいの。私もこういうこと好きだし、美味しく食べられればみんなも喜ぶでしょう? 客船からお菓子なんかも運んで来たけど、やっぱり手作りっていいよね」

「この島で、お菓子作りするなんて思わなかったけど」

「本当だよね」

 楽しそうに笑うエリとリョウコを見て、優奈の何だか嬉しかった。

 材料をまぜながらワイワイと楽しんだ後、大量に作ったパンケーキを用意して全員で食べる。


 手作りお菓子は予想以上の好評を博し、それから時々息抜きも兼ねて作ることになっていった。















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Comment

こんばんは!
このシーンは、初々しいガールズトークがたまらない!!
好きな人に、一番いいものをあげたい・・・
って、恋する乙女ですね~~(*´∀`*)
お菓子作りで、女子たちの心も大分ほぐれて、落ち着いてきた感じですね♪
こういう優奈さんの行動力と、相手を思う優しさに、何度見ても励まされますっ!!

応援してます(*´∀`*)
なによしさん
なによしさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます♪
初々しいですよね^^
この4人、これからますます仲良くはなるのですが
どうしても優奈がいじられキャラになっていくのです(笑)
お菓子作り^^遭難中ですけど楽しそうですよね^^
いつもありがとうございます♪
頑張ります!!^^b
  • 2011/12/08 19:29
  • YUKA
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