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誓約の地/漂流編・2<遭遇>

――スターとの恋――
遭難生活で落ちていく、憧れのスターとの恋は【運命の出会い】と呼べるのか?

お読みになる前に必ず 誓約の地/はじめに をご一読ください。

登場人物・設定は当然フィクションで、実在しません。






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 夜のキャンプファイヤーが功を奏し、比較的落ち着いた状態で全員が夜を明かした。

 早朝、優奈は必要と思われるものを昨日見つけたリュックに詰め、杏子を探す準備をする。



「俺も行くよ」

 修平が起きてきて声をかける。

「じゃあ、二手に別れましょう。私は東側へ行くから西側へ。崖から見える範囲より向こう側をお願いしてもいいかな?」

「でも、一人じゃ危ないだろ? 一緒に行った方が……」

「大丈夫。森には入らないし、海岸沿いを行くから。その方が効率がいいし。日が暮れるまでには戻るね」

「いや、しかしな……」

「あの崖、結構登るのしんどいから男の人の方が早いと思うの。申し訳ないんだけど、できればあっちをお願い。だめかな?」

 可愛くお願いされて、さすがの修平も苦笑して降参した。

「わかったよ。気を付けろよ?」

「うん。そっちもね」

 それから、起きだしてきた男性陣に声を掛けた。

 昨日運べなかったペットボトルと散乱した荷物を集めておいてほしいと頼み、女性陣には今日の夜に備えて薪集めを頼んだ。

 ただじっと助けを待つより、何かをしている方が気がまぎれる。

 疲れた分だけ、不安な夜でも眠れるだろう――

 そういう判断だった。











   * * *









 気づけば、太陽の位置も随分傾いている。

 ここに来るまでに、2人に遭遇した。一人はイギリス人らしき老夫人、そして小さい子供……

 2人とも亡くなっていた。

 そのままにはできず、少し穴を堀り、砂をかけて埋葬する。

「杏子。お願い、無事でいて!」

 諦めそうになったその時、波間に人影を見つけ急いで駆け寄る。

「――――!」

 杏子ではない。男性だ。

 優奈は背を向けるようにして倒れている男性にゆっくり近づいた。

 身体半分がまだ海水につかった状態の彼の右肩に手をかけ仰向けにする。

「えっ?」

 見覚えのある顔だった。目を閉じて青ざめてはいるが間違いない。

「……ヒョヌ、さん?」

 気を失い、血の気の失せた顔で倒れていたのは、カン・ヒョヌ――

 優奈が一番好きな俳優だった。

 優しい笑顔と澄んだ瞳を持ち、韓国でも人気実力ともに兼ね備えた俳優。

 憂いを含んだ瞳の演技と優しい笑顔が、日本でも人気を博している。

「どうしてこんなところに?」

 恐る恐る手首をとり脈を測る。

「生きてる!」

 口元に耳を当てると、微かに呼吸をしているのがわかる。

「ヒョヌさん! ヒョヌさん!」

 揺すってみても眼を開ける気配はなかった。

 彼の体に置いた手からは、人の体の熱が伝わらない。

 温かいこの島でも海水が体温を奪うには十分すぎる。

 半身が海水につかったまま、いったいどれくらいこのままいたのだろうか。

「とりあえず、引き上げなきゃ」

 そうはいっても、180cmを越える男性を女性が引き揚げるのは至難の技だった。

 まして相手は意識を失っている。


 暫く悩んだ優奈は、持ってきたロープを彼の両肩にタスキ掛けした。

 ロープの端を森の一番手前の木に引っかけながら滑車の要領で浜へ引き上げる。

 流石に男性一人をかついで戻るには無理があるからだ。

 とにかく、目を覚ましてもらうしかない。

 そのためには、冷え切った体を温める必要がある。

 濡れた服はそれだけで体温を奪っていくので、まずそれをどうにかしなければならなかった。

 靴と靴下を脱がせTシャツをハサミで切っていく。

「ホントにホントに、ごめんなさい」

 応急処置とはいえ勝手に半裸にしてしまい、思わず口に出して何度も謝った。

 引き締まった上半身に、顔が赤くなるのが自分でもわかる。

「目覚めてほしいけど……さすがに今、目を覚ましたら変態扱いされるかな?」

 近くにあった流木とビニールシートで風邪よけを作る。

 杏子のためにと持ってきたシーツと薄手の毛布でくるんだ。


 いくらなんでもズボンは……でもこれが一番問題か……。

 一番濡れているのは、海水につかっていた彼のGパンだった。

 躊躇っている時間はない。

 命にかかわるかもしれないのだ。

『人命救助、人命救助』と自分に言い聞かせながら、結局それを脱がせていく。


 それから急いで薪を拾い集め火を起こした。

 その両脇に燃えないように木の柱を組んで、小さな鍋を吊るしてミネラルウォーターを注ぐ。

 カップにカモミールとジンジャーのハーブティTバックを準備し、ベットボトルにお湯を入れ直して「簡易湯たんぽ」を作る。

 彼の首にタオルを巻き、両脇とひざ裏にあてて温めた。




 どのくらい時間が経っただろうか。

 日が傾き、夕暮れを過ぎて夜の帳が下りようとしていた。
















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Comment

すごいなあ。
軽快なテンポでも、状況説目がうまいから、するりするりと頭の中で映像が流れていく。そんな感じで読んでいきました。
それにしても、韓国の有名俳優ですか。何かあるなという期待のある演出ですね。
  • 2011/10/17 21:25
  • オム
  • URL
オムさん、こんばんは^^

なんと!
そんな風に褒めて頂いて嬉しいやら、恐縮するやら。。。
韓国の有名俳優(笑)
なぜ韓国?……って言っちゃダメです(笑)

無名なら無名で、話が出来そうですけどね^^
  • 2011/10/17 22:22
  • YUKA
  • URL
意外に。
意識を失っていると丸々その体重がかかるため、
男性が女性を引っ張るのも難しいですからね。
普通から考えて。
40キロ丸まる引っ張れというのは男性でも難しいのであって。
意識が少しでもあると、それは無意識に動かしてくれるので楽なんですけどね。
寝たきりでも意識がありますから、背負ったりするのも案外楽ですからね。自分が介護の仕事をやっているから良く分かります。
  • 2013/02/08 20:41
  • LandM
  • URL
LandM さん
LandM さん、こんばんは^^
コメントありがとうございます!^^

そうですよね。
気を失った人、意識のない人は物凄く重いのですよね^^;;
まして男性を女性が担ぐなんて至難の業です。
優奈とヒョヌの体格差はかなりあります。
私も意識してその辺を書きました。

LandM さんは介護の仕事をされているのですね。
とても大変で、凄く重要なお仕事ですね。
これからの日本を支えていく、大きな課題を抱えたお仕事です。

この辺の描写に気付いてくださってありがとうございました。
コメント嬉しかったです^^
私もまた遊びに参りますね^^


  • 2013/02/10 21:08
  • YUKA
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