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誓約の地/漂流編・71<濫觴(1)>

動きだした想いと抱える心。
それぞれの決意が、新たな時間を紡ぎ出す。

濫觴(らんしょう) 物事の始まり。起源。

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「修平は?」

 浜辺でくつろいでいたケイタ達に杏子が声を掛けた。

「あ? さっきまでいたんだけど、どこかな? その辺で休んでんじゃない?」

「そう」

「あれ? 杏子ちゃん海水浴しないの?」

「するわよ。あとでね」

「水着は――?」

 ツヨシの一言に苦笑して、杏子は呆れたように着てるわよと笑った。
 杏子は大きなTシャツを羽織っている。ワンピースのように身につけたそれは、杏子の膝上までをすっぽり隠してしまっているのだ。

「あんまりガッついてると、モテないわよ?」

 引き留める声を軽く無視して、そのまま浜辺を歩いていく。




 
     ***





 修平は海を眺めていた。
 皆から死角に入り、隠れるようにして岩陰に腰を下ろす。
 照りつける日差しを、森から突き出すように伸びた枝と岩の陰で少し弱められたその場所で、切なげに熱っぽく向ける視線は悲しみに沈んでいる。

「いつまでもそんな目をしてると、いつか自分がやけどしちゃうわよ」

 不意に声をかけられて振り向くと、杏子が静かに微笑んでいた。一瞬睨みつけるように見つめた後、そんな自分に気がついて自嘲気味に笑った。
 杏子は修平の隣に静かに腰かけ、同じように海に視線を向ける。

 この島は天候の崩れが少ない。今日も燦《さんさん》々と降り注ぐ太陽が、ゆったりと揺れる鮮やかなコバルトグリーンに輝かく海を照らしている。気まぐれに吹き抜ける潮風は、杏子の無造作にねじり上げて留めた髪を揺らしていく。
 頬にかかる髪を指先で払いながら、杏子は静かに語りかけた。

「ああいうやり方は気に入らない」

 そう呟いた杏子を、修平は視線だけで伺う。

「気持ちは分からなくはないけど」

「…………」

「あの2人を割くのは、もう無理ね」

「…………」

「私が言うんだから、間違いないわ」

 自信ありげに宣言する杏子を見て、視線を落とす。
 そんなことは、最初からわかっていた。

「――そうだな」

 杏子の言葉から、自分がした事はばれたんだろう。だとすれば優奈にも。
 それなら急速に近づいた2人に納得がいく。

――結局自分は、お膳立てをしただけだったんだろうか。

 それでも、優奈を諦めきれない心が軋む。
 あの大きく澄んだ瞳に映るのは、花が咲くような鮮やかな笑顔を向けられるのは、自分でありたかった――そう、思っていた。

「この島は狭くて人も限られてるから、あの子を忘れるのは容易じゃないわね」

「…………」

 優奈に焦がれて苦しむ男を、杏子は見てきた。
 なぜダメなのかと杏子でも困惑するほど、中にはいい男もいた。そして馬鹿な男だと呆れるほど、無茶をしようとする男も。
 修平の発言程度ならよくあることだと思っていた。あの程度のことで動揺して進展しないなら、結局はそれまでだとも。駆け引きや打算を使いこなせない男では、きっと優奈を守れない。
 ただ優奈をその手段で追い込んだことが、傷つけたことが無性に腹立たしかった。
 それはまるで、昔の自分を見ているみたいで――

 本来なら、違う相手を見つけていけばそのうち傷も癒えるはずだ。しかしここではそれもできない。

 喘ぐ心を抱えて、それでも気丈に振舞う修平に杏子はそっと微笑んだ。修平の両足を挟むようにまたぎ、彼の首に両腕をかけて瞳を覗き込む。

「……何?」

 訝《イブが》しげに眉を寄せる修平に柔らかく微笑むと、そのままゆっくりキスをする。

「――――!」

 杏子の柔らかい唇が重なり、修平は驚きで目を見張った。杏子の身体が徐々に修平の身体に重なっていく。


 驚きでマヒした頭では突然の事に対応できず、修平はされるがままになっていた。
 受け止めた体は柔らかく、心地いい重みと体温を感じて、いつしか杏子の細い腰に手をかけて促《うなが》されるまま舌を絡める。
 ハッと我に返った修平の瞳に、艶《つや》やかに微笑んだ杏子が映った。

「自分を好きでもない男を相手にするほどモテなくもないし、他の女に焦がれている男を相手にするほど暇でもないけど――」

「…………」

「人恋しくて眠れない夜は、私が相手をしてあげる」

「……どう、して?」

「私もそろそろ人肌が恋しいから」

 そう言い残して何事もなかったように去っていく杏子の後姿を、修平は半ば呆然と見送った。








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Comment

こんばんは!
なによしです!

おおお!修平さんと杏子さんが!くっつくのでしょうか!この組み合わせはとてもいいですね!どっちも優奈さん思いで、ちょっと我が強いけど、それも個性的で・・・・!アリですよ!このカップルは!コウジさんやリョウコさんの出現ですっかり杏子さんの恋のお相手を忘れるところだったのですが!このタイミングで不意打ちラブキタ━(゚∀゚)━!この二人は是非くっついてもらいたい!なんて思ってしまいました♪
いやあ、とっても楽しませてもらいましたよ!
次回が待ち遠しいのはいつものことですが、更に色んな思惑が進んでいくのが楽しくて読みふけってしまいますー!
応援しています(*´∀`*)!
(ノ∇〃)イヤン!!
このまま杏子に

ほれてまうやろ~!(ちっと古いですね^^;)
ってなるのかしらん?
なによしさん
なによしさん、こんばんは^^
コメントありがとうございます^^
凄く嬉しいコメントをありがとうございます*^^*
杏子と修平。。。ふふふ。
優奈とは真逆の杏子姐さんと修平はどうですかね^^
似合ってます?^^
どんな風に進んでいくのか、見守って頂けると嬉しいです♪
  • 2011/11/08 02:07
  • YUKA
  • URL
♡ネコ♡ さん
♡ネコ♡ さん、こんばんは^^
コメントありがとうございます^^
ネコさんに喜んでいただけたなら、嬉しい*^^*
ふふふ。
こんなことされたらね~~傷心だしね~~~(笑)
これからを楽しんで頂けると嬉しいです^^
  • 2011/11/08 02:09
  • YUKA
  • URL
杏子姐さん、いよいよ恋愛バトル(!?)にのりだしたか!(笑)
修平くん、これはあらがえないでしょうねぇ。

しかし、杏子姐さんの考えてることはやはり謎ですね。もし優奈ちゃんのためにやってることなら…あとあと、ちょっと面倒なことになりそうかな?
西幻響子 さん
西幻響子さん、こんばんは^^
コメントありがとうございます^^
そうですね。やっと杏子にも動きが(笑)やっと出せた~~^^
優奈のためか、自分のためか……^^
謎多き女「会田杏子」^^
秘密は女をより輝かせるのです(笑)
  • 2011/11/08 18:23
  • YUKA
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